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NVIDIA、Red Bull Racing、ドイツ銀行などの顧客企業をまじえた基調講演

Oracle CloudWorld、CEOキャッツ氏が顧客に聞く「勝利の背景」

2022年10月20日 10時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 米オラクルの年次カンファレンス「Oracle CloudWorld 2022(OCW 2022)」が、10月17日~19日(現地時間)に開催された。2019年以来3年ぶりの対面開催(ハイブリッド形式)となり、120カ国以上から会場を訪れた1万3000人超の参加者、さらに多くのオンライン参加者でにぎわった。

会場は「The Venetian Las Vegas」。イベント名が「Oracle OpenWorld」から変わり、会場装飾も赤色ではなく青色が基調なのが印象的だ

 18日の午前には、オラクルCEOのサフラ・キャッツ氏による基調講演が、NVIDIA、Oracle Red Bull Racing、ドイツ銀行といったOracle Cloudのパートナー/顧客企業を招き、対談形式で行われた。本記事ではこの基調講演の概要をお伝えする。

米オラクルCEOのサフラ・キャッツ(Safra Catz)氏。NVIDIAの創業者でCEOのジェンスン・ファン(Jensen Huang)氏ら多数のゲストを招いた

逆境下でも成果を生み出す顧客企業に、その背景を聞く

 「Driving Impactful Business Results(インパクトのあるビジネス成果を生み出す)」と題されたキャッツ氏の基調講演は、世界的なパンデミックの発生という厳しい状況が続いたこの3年間、Oracle Cloudの顧客企業がどのようにしてITとビジネスのトランスフォーメーションを進め、強い成果を生み出してきたのかを対談形式で聞くものだった。

 ゲストはNVIDIA 創業者兼CEOのジェンスン・ファン氏、F1チーム「Oracle Red Bull Racing」代表でCEOのクリスチャン・ホーナー(Christian Horner)氏、ドイツ銀行CTOのゴードン・マッケンジー(Gordon Mackechnie)氏、ほかにも玩具メーカーのメリッサ&ダグ、スナック菓子メーカーのグルッポ・ビンボ、ビルオートメーション機器メーカーのジョンソン・コントロールズといった、多彩な企業の幹部が次々と登壇した。

NVIDIA:フルスタックのGPUテクノロジーをOCI上で提供へ

 まず登壇したのはNVIDIAの創業者兼CEO、ジャンセン・ファン氏だ。同日、オラクルとNVIDIAではコンピューティングのさらなる加速とAIによる顧客ビジネス課題の解決支援を目的とした、複数年のパートナーシップ締結を発表している。

 具体的なパートナーシップの内容は、今後NVIDIAが提供するGPU、システム、ソフトウェアといったテクノロジースタックをすべて「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」上で利用可能にするというものだ。たとえばNVIDIAのGPU「A100」や今後発売予定の「H100」、AIプラットフォームの「NVIDIA AI Enterprise」といった製品が、OCI上のサービスとして迅速に利用できるようになるという。

 ファン氏は、コンピューター業界の大きなトレンドとして、AI/機械学習などより大規模な/大量のワークロードを、コンピューティングコストやエネルギー消費量を低減させながら処理することが求められていると説明。NVIDIA、オラクルの2社がそれを実現しうる理由として、両社に共通する特徴が4つあると説明した。

 「ひとつは『データ』を中心としたソフト開発を行っており、データストレージやデータプロビジョニング、データプロセッシングなどに専門性を持つこと。2つめはデータプロセッシング、機械学習によるAI開発のノウハウを多く持つこと。3つめは巨大かつエネルギー効率の高いコンピューティングインフラを持つこと。そしてデベロッパーも含めたリッチなエコシステムだ」

 ファン氏は特に、オラクルが大規模な投資で構築したOCIのインフラを使って、ユーザーはNVIDIAのテクノロジーを容易に活用できるようになることを強調した。

 2社のパートナーシップによる恩恵を被る業界の1つとして、ファン氏はライフサイエンス/ヘルスケア業界を挙げた。今回の発表では、NVIDIAが提供するライフサイエンス/ヘルスケア向けのAIアプリケーションフレームワーク「NVIDIA Clara」もOCI上で近日提供予定としている。

 「(AI技術の進化による)ブレイクスルーが巨大な可能性をもたらしている。わたしは今後『デジタルバイオロジー(デジタル生物学)革命』が起きると予想している。ライフサイエンス、バイオロジー、コンピューターサイエンスが連携することによって、これまでサイエンスが牽引してきたこの業界が、“サイエンス+エンジニアリング”が主導する業界へと変貌を遂げるだろう」(ファン氏)

Red Bull Racing:クラウドテクノロジーが好成績と新たな挑戦をサポート

 オラクルがスポンサードするF1チーム、Oracle Red Bull Racing代表のクリスチャン・ホーナー氏も登壇した。同チームは2021年、2022年のドライバーズ・チャンピオンである、マックス・フェルスタッペン氏を擁する強豪だ。

 ホーナー氏は、ファンエンゲージメントからレース中の分析/戦略決定まで、オラクルのテクノロジーがRed Bull Racingの飛躍を大きく支えていると語る。「われわれのようなエナジードリンクメーカーの子会社が、レースにおいては大手自動車メーカー傘下のチームと戦わなければならない。しかしテクノロジーさえしっかりしていれば、どんなことでも可能になると考えている」(ホーナー氏)

 そうした例のひとつとしてホーナー氏は、2026年のレギュレーション変更にあたって、自動車会社ではなくチーム自らでエンジンを設計開発するという新たな挑戦を紹介した。

 「新しいエンジンの設計を行うという最新のチャレンジにおいても、Oracle Cloudのテクノロジーを活用している。白紙の状態からエンジンを設計して実際に製造するまで、わずか12カ月で行うことができた」(ホーナー氏)

 また、レースに備えて膨大な回数を繰り返す走行シミュレーションにおいても、OCIを活用しているという。AIを使って何十億回ものシミュレーションを高速に行うことで、レースの戦略決定を支援する。この処理においては、柔軟にスケールでき、なおかつコスト効率の良いクラウドリソースが必要であり「追加のリソースを迅速に入手できるクラウド技術がなければ、そうしたことは絶対に実行できない」とホーナー氏は説明した。

Oracle Red Bull Racingの最新マシン(2022年、鈴鹿サーキット)

ドイツ銀行:「Exadata Cloud@Customer」でモダナイズ、イノベーションへの道を開く

 ドイツ銀行では昨年(2021年)から数年間の計画で、ミッションクリティカルな金融システムのモダナイズを進めている。具体的にはおよそ1万の基幹データベース群を、オンプレミス配置型のクラウドDBサービス「Oracle Exadata Cloud@Customer」に統合していくというプロジェクトだ。

 同社CTOのマッケンジー氏は、実際にモダナイズを進めるうえでは「3つの大きなチャレンジがあった」と語る。付加価値サービスを提供するために高まり続けるテクノロジーデマンドに対応すること、ゼロベースではなく既存のシステムをモダナイズしなければならないこと、業界の厳しい法規制も順守しなければならないこと、の3つだ。

 キャッツ氏が「われわれ一人ひとりが大量のデータを生むようになったにもかかわらず、そのデータをうまく使い切る、あらゆるデータを価値に転換するまでには至っていない。銀行業においても、まだまだやり残していることも多いのでは?」と問うと、マッケンジー氏は「たしかにそのとおりだ」と答えた。「銀行として、顧客データをしっかりと守りつつ、同時に活用してイノベーションを加えていくことを考えなければならない」(マッケンジー氏)。

 また、規制の多い金融業界においてはリスクを回避する傾向が強く、それがイノベーションのスピードを阻害することもあるのではないかというキャッツ氏の質問には、「異業種参入も含めて競争は激しくなっており、イノベーションを進めることは『必須』だ。また正しい方向性のイノベーションであれば、セキュリティもより強化されることになる」と述べた。

 「Cloud@Customerの採用によって、多大なコストメリットとメンテナンス性の向上、そして高い柔軟性が得られた。さまざまな側面でわれわれを前進させてくれている」(マッケンジー氏)

* * *

 さまざまな顧客における成功事例とその背後にあるビジョンや戦略を紹介しながら、キャッツ氏が繰り返したのは「bold(大胆な)」という形容詞だった。変化の激しい時代において成果を生むためには、大胆さこそが重要であるという

 「パンデミックの中でわれわれが学んだのは、大胆に行動することが勝利につながる道ということ、臆病であっては全滅しかねないということだ」(キャッツ氏)

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