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「OCI Dedicated Region」の最小構成規模引き下げ、「Compute Cloud@Customer」プレビューリリース

オラクルがOCIの分散クラウドサービスを拡充、より小規模な導入が可能に

2022年06月24日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 オラクルは2022年6月23日、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)が提供する顧客専有リージョン「OCI Dedicated Region」において、エントリーポイントを引き下げ、より小規模な導入を可能にしたと発表した。顧客データセンターに設置する最小構成を「最小50ラック/年額600万ドル」から「最小12ラック/年額100万ドル」へと大幅に引き下げ、より幅広い顧客での採用を狙う。

 加えて、1ラック単位で顧客拠点に導入できる「OCI Compute Cloud@Customer」のプレビューリリースも発表している。こちらはOCIが提供するコンピュート、ストレージ、ネットワーキングサービスを、マネージド型のソフトウェア/ハードウェアで提供するもの。

 記者説明会には米オラクル VPのレオ・リョン氏が出席し、それぞれの発表の狙いについて説明した。

「OCI Dedicated Region」のエントリーポイントを引き下げ、より導入しやすくした

米オラクル OCI プロダクト・マネジメント担当VPのレオ・リョン(Leo Leung)氏

顧客ニーズに応じて分散クラウドポートフォリオを拡充

 オラクルが2020年から提供するOCI Dedicated Region(旧称:Oracle Dedicated Region Cloud@Customer)は、顧客データセンター内に設置されたハードウェア/ソフトウェアをオラクルが運用管理して提供する、フルマネージドの顧客専有リージョンのサービス。すべてのデータをオンプレミスに保持しつつ、顧客の必要に応じてOCIのあらゆるサービス、およびOracle CloudのSaaS(Oracle Cloud Applications)を、使用量ベースの従量課金型で利用できる。

 「OCI Dedicated Regionはクラウド市場で唯一、パブリッククラウドに縛られることなく、顧客が選択した場所で、制限なしのフルクラウドサービスを提供できるものだと考えている。たとえばAWSのOutpostsは(コントロールプレーンがパブリッククラウドにあるため)パブリッククラウドとの接続が必要であり、提供するサービスもパブリッククラウドのサブセット、一部分にすぎない。こうしたいくつもの制限がある点で、OCIのDedicated Regionとは大きく違うと言える」(リョン氏)

 今回の発表は、このDedicated Regionのエントリーポイントを大幅に引き下げるもの。従来の最小構成は50ラック、最小利用価格は年額600万ドルだったが、これをそれぞれ12ラック、年額100万ドルとしたことで、設置に必要なデータセンタースペースと電力量が平均で60~75%削減できるという。「エントリーポイントを引き下げることで、より多くの企業に活用してもらいたいというのが、オラクルとしての意図だ」(リョン氏)。

 もうひとつのOCI Compute Cloud@Customerは、OCIのコンピュート、ストレージ、ネットワーキングリソースを提供するマネージドサービス。既存サービスである「Oracle Exadata Cloud@Customer」と同様に、顧客拠点内に設置して、使用量ベースの従量課金型で提供する。こちらもデータレジデンシーの要件に対応する。Dedicated Regionとは異なり、Compute Cloud@Customerは外部クラウド上のコントロールプレーン経由で管理される。

 なおCompute Cloud@Customerは現在プレビューリリースであり、具体的な利用料金についてはあらためて発表すると述べた。

 リョン氏は、これらも含めたOCIの分散クラウドポートフォリオについても説明した。展開規模の大きいものからパブリッククラウドのOCI、Dedicated Region、Compute/Exadata Cloud@Customer、Roving Edgeとなる。

 「パブリッククラウドは現在38リージョンを展開しており、さらに6リージョンの追加も計画している。Dedicated Regionは、パブリックックラウドで提供するすべてのサービスをオンプレミスで提供できるのが特徴だ。Compute Cloud@Customerは、ワークロードが数個~数十個レベルの環境に適する。Roving Edgeは1台~数台のサーバーを展開するもので、インターネットに接続されていない環境でも動作するのが特徴だ」(リョン氏)

オラクルの分散クラウドポートフォリオ。導入規模に応じて幅広くラインアップしている

 Dedicated Region、Compute Cloud@Customerの導入顧客事例も紹介した。野村総合研究所(NRI)では、低レイテンシと高いパフォーマンス、そしてアプリケーションのデータレジデンシーを目的に、東京/大阪の2拠点でDedicated Regionを導入している。同様に、オマーン政府もデータレジデンシーとセキュリティを目的にDedicated Regionを採用した。スペインの通信事業者であるTelefonicaでは、テレコムエッジなど多数の拠点においてデータ処理を行うために、Compute Cloud@Customerを導入したという。

 「Dedicated Regionは非常に幅広いユースケースに対応できる。中でもわたしが特に注目しているのが、大規模アプリケーションのモダナイズだ。NRIやVodafoneの事例では、既存アプリケーションのスケールやパフォーマンスを落とすことなく、コンテナ化などを進めて段階的にモダナイズを進めたいという要件がある。一方で、少数のコアサイトと数十のエッジ/ニアエッジサイト、数百のPOPサイトを持つ通信事業者では、規模の異なる多数のサイトにサービスを分散させたいという要件がある。課金などの大規模システムはコアサイトで、位置情報サービスなど低遅延性が求められるものはエッジサイトで、といった具合だ。そうした要件に対しても、オラクルは幅広いポートフォリオで対応できる」(リョン氏)

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