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OCW 2022で発表、各国/業界規制に準拠してローカルパートナーがクラウドサービスを独自展開可能に

ソブリンクラウドの課題を解消する「Oracle Alloy」とは? 3氏が語る

2022年10月28日 14時30分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 オラクルの年次イベント「Oracle CloudWorld 2022(OCW 2022)」が2022年10月17日~19日、米国ラスベガスで開催された。

 今回もOracle CloudInfrastructure(OCI)、Oracle Cloud Fusion Applicationに関する多数の新発表が行われたが、中でも注目すべき発表は「Oracle Alloy(アロイ)」だろう。日本を含む世界各国でソブリンクラウド(各国/地域ごとの法規制、データ主権に対応したクラウド)へのニーズが高まっているが、その課題に対するオラクルならではのユニークなソリューションだからだ。

 本記事ではこのAlloyについて、OCW会場で聞いた3氏の話からその特徴やオラクルの狙い、日本市場における展開などをまとめてみたい。

OCIプラットフォームを顧客自身で運用する「Oracle Alloy」とは

 Oracle Alloyを導入したパートナー企業には、OCIのプラットフォーム(ハードウェア、ソフトウェア)が提供される。パートナー企業はこのプラットフォームを自ら運用し、自社ブランドのクラウドサービスをエンドユーザーに提供できる。このプラットフォームはパブリッククラウドのOCIとは物理的に隔離されており、パートナー自身のデータセンターに配置することも可能だ。

「Oracle Alloy」の概念図(Webサイトより)。各国/地域のパートナーが“ローカルのクラウドオペレーター”としてOCIプラットフォームや独自サービスを運用することで、ソブリンティをめぐる法規制などに対応できる

Alloyを使い、パートナー自身のブランドでクラウドサービスを展開できる(OCWキーノートより、エンドユーザー側の管理コンソール画面例)

 オラクルではすでにOCIの“顧客専有リージョン”である「OCI Dedicated Region」を提供しており、Alloyで提供されるプラットフォームも基本は同じものだという。このプラットフォームを用いて、OCIがパブリッククラウドで提供している100以上のクラウドサービス(IaaS/PaaS/SaaS)や、パートナー自身が開発したソフトウェア/サービスがエンドユーザーに提供できる。

 加えてAlloyには、多数のエンドユーザーに販売を行うためのアカウント管理や課金請求、ユーザーライフサイクル管理(CRM)、サービスカタログ、ビジネスダッシュボードといった機能も盛り込まれている。パートナーがビジネスを展開する市場の状況に合わせて、サービス内容や価格/ディスカウント率、さらにはプラットフォーム(ハードウェア、ソフトウェア)そのものまでカスタマイズ可能だ。

パートナー側ではサービス売上などのビジネスダッシュボードが用意されているほか、たとえばシェイプ(インスタンスサイズ)の調整など、市場ニーズに合わせた多様なカスタマイズが可能だ(パートナー側の管理コンソール画面例)

「クラウド法規制への対応を一気に最終解決する」クレイ・マグワーク氏

 OCI担当EVPのクレイ・マグワーク氏は、オラクルがAlloyを提供する背景のひとつには、EUを筆頭にクラウドやデータ主権をめぐる各国/地域の法規制が急速に強まっていることがあると説明した。

 「オラクルが(単独で)すべての国の法規制をカバーできるわけではない」「現在のクラウドプロバイダーは、EUなどの法規制に対してインクリメンタルに(その都度)対応を続けているが、そうではなく、一気に最終解決できるかたちに持って行こうと考えた」(マグワーク氏)

米オラクル Oracle Cloud Infrastructure担当EVPのクレイ・マグワーク(Clay Magouyrk)氏

 Alloyでは、オラクルではなく各国/地域のパートナーが“ローカルのクラウドオペレーター(運用者)”として運用することで、データの保管場所や運用する企業の国籍、あるいはオペレーターの国籍といった厳しい要件まで順守できるようになる。

 さらに、国/地域ごとの法規制だけでなく「業界ごと」の法規制にも柔軟に対応できる提供形態であり、特定業界に特化したクラウドオペレーターが登場することも考えられる。マグワーク氏は「たとえばテレコム事業者、金融機関、ヘルスケアといった(厳しい法規制のある業界の)顧客も、Alloyに興味を示すだろう」と語る。

 「われわれの経験から言って、おそらく3種類のパートナーがAlloyを採用することになるだろう。1つめはソブリンティやデータコントロールに対する(法規制の)課題がある企業。テレコムやテクノロジー、ヘルスケアなどの大手企業が(規制を順守しつつ)自社ブランドのクラウドサービスを持てる。2つめがSIer。SIerは、15年前には自社のデータセンターを持って(アウトソーシングなどのサービスを提供)していたが、競争力低下で他社のパブリッククラウドを採用するようになった。だがAlloyであれば、再び自社でクラウドサービスを持つことができる。そして3つめが、自社開発のアプリケーションをサービスとして提供できるインフラを持ちたいISV(ソフトウェアベンダー)だ」(マグワーク氏)

 マグワーク氏は、「Alloyのコンセプトに対する理解が浸透するまでには時間がかかると思う」としながらも、上述した3種類の顧客からは「いずれもすでに良い反応が得られている」と付け加えた。

「Oracle Alloyはひとつのパラダイムシフト」カラン・バッタ氏

 OCIプロダクト担当VPのカラン・バッタ氏も、Alloy発表の背景には「エンドユーザーがクラウドに求める柔軟性」と「各国/地域で強まるクラウド規制」のギャップがあると説明した。

 「いま何が起きているのか。たとえばEUではクリティカルインフラに対して多数の規制が出来ている。『米国企業の保有するクラウドを使うべきではない』『クラウドを使う場合は自国民が運用するものにすべきである』、さらに一部の国では『子会社のオーナーシップは一定程度、自国民が持っていなければならない』など、地政学的な背景から企業のクラウド採用が強く阻害される状況になっている」(バッタ氏)

 こうした規制の動きは、単に企業のクラウド導入/移行を阻害するだけでなく、クラウドで提供される最新テクノロジーの導入をも阻害することになる。より良いクラウドサービスを選択したい企業と、他国クラウドの浸透を規制したい政府との間には、意識の上で「ギャップ」が生じている。

米オラクル Oracle Cloud Infrastructureプロダクト担当VPのカラン・バッタ(Karan Batta)氏

 ここにAlloyを投入し、ローカルのパートナーがクラウドオペレーターを務めることで、そうしたギャップを埋めるというのがオラクルの考えだ。「クラウドができてからこの十年以上、あまりイノベーションが起きていないと思う。Alloyはひとつのパラダイムシフトだと思う」(バッタ氏)。

 「大手クラウドプロバイダー4社が世界中のクラウドを仕切るのではなく、(各国の)何百というローカルオペレーターが、それぞれのフレーバー(付加価値の付与)で差別化を図りながらクラウドサービスを提供していく形になる」(バッタ氏)

 さらにバッタ氏は、将来的にはクラウドマイグレーションのビジネスが減少していくことが予想される中で、SIerにとってAlloyは新たなビジネスモデルになるだろうとも話した。

 なお、Alloyの最小構成規模や価格については現時点で公表されていないが、OCI Dedicated Regionの最小構成は12ラック、年額100万ドルであり、Alloyも同程度のスタートポイントになると推測される。バッタ氏は、こうした小規模なスタートポイントからパブリッククラウドと同等のサービスが自社に導入できる点もAlloyの特徴であり、他のクラウドプロバイダーとは一線を画するポイントだと強調している。

「ソブリンクラウドをめぐる議論を解消する唯一のソリューション」三澤智光氏

 日本オラクル 社長の三澤智光氏は、「今回のOCWで、特に日本の顧客に響くだろうと思ったテクノロジー発表のひとつはAlloyだった」「いま日本の国で討議されてる話(ソブリンクラウドをめぐる議論)を解決できる、現状で唯一のソリューションなのではないかと思っている」と語った。

日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏

 日本でもガバメントクラウド周辺を中心にソブリンクラウドに関する議論が起きており、海外ベンダーのクラウド採用に対する抵抗感は根強い。だがその一方で、国産クラウドと海外メガクラウドの間の技術/ソリューション格差が非常に大きいのも事実だ。前述したように、国産にこだわれば最新テクノロジーの採用に乗り遅れる。

 「いくら(海外の)クラウドベンダーが『データソブリンは保証されます』と言っても、クラウドシステムはブラックボックスであり、『そこにデータを預けるのはいやだ』という感情は起こる。これは日本だけでなく世界中でそうだ。Alloyの面白い点は、そのブラックボックス状態を解消できるということ。最先端のクラウドテクノロジーを、顧客専用かつ顧客自身でマネージできるクラウドインフラで提供する」(三澤氏)

 Alloyの国内展開について三澤氏は、プラットフォームそのものはOCI Dedicated Regionとして野村総合研究所(NRI)での導入実績もあり、日本向けにカスタマイズすることは基本的にないとした一方で、「どこまでを顧客側でマネージするのかという部分については、それぞれの対象(導入案件)ごとに考えていかなければならない」と述べた。

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