このページの本文へ

ソフトバンクとJR西日本、専用テストコースでバスの自動運転と隊列走行の実証実験

2022年10月19日 12時00分更新

文● 中山 智 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 10月17日、JR西日本とソフトバンクは滋賀県野洲市にあるBRT(Bus Rapid Transit/バス高速輸送システム)専用テストコースにて、自動運転・隊列走行BRTの実験を記者向けに公開した。

自動運転・隊列走行BRTの実験を野洲のテストコースで開催

サイズの違うバスで隊列を組んで
鉄道がない地域でも活躍できるBRT

 JR西日本とソフトバンクは、2020年3月に「自動運転・隊列走行 BRT」開発プロジェクトを立ち上げており、BRT専用テストコースもその一環として、滋賀県野洲市冨波乙のJR西日本網干総合車両所宮原支所野洲派出所内に昨年開設。テストコースの規模は、総面積22800㎡、コース総延長約1.1km、直線距離約600mで、コントロールセンターや一般道とのクロスポイント、駅・停留所、交互通行ポイントといった設備やコース設定も用意されている。

テストコースの概要

元は車両基地としてJR西日本が確保していた土地にテストコースを建設

 今回の実験では、サイズの違う自動運転バスを複数台使い、隊列走行をするというもの。バスはそれぞれ、2台がつながった「連節バス」と、一般的な路線に使われる「大型バス」、そしてコミュニティーバスなどに使われる「小型バス」の3種類。それぞれのバスには「LiDARセンサー」や「ステレオカメラ」「GNSSアンテナ」「RFIDリーダー」など、自動運転に必要なセンサー類を搭載している。

バスはそれぞれに各種センサーを搭載

先頭を走行する連節バス

2台目は大型バス

後方は小型バスが走行

 隊列走行時は、それぞれのバスが車車間通信をしつつ、10~20mの間隔で連なって走行。先頭車両の運転席には乗務員が乗り込み、運転は自動で行なわれるものの、乗降口や周辺の安全確認、さらに扉の開閉や空調操作などを行なう。

車車間通信を行ない、10~20mの間隔をあけて走行

 後続の2台も、先頭車両に乗車している乗務員が操作。そのため、今回は実証実験ということで、それぞれのバスに乗務員が乗車しているが、実際の運用は先頭車両だけに乗務員が乗り、後続のバスは無人という想定している。

実際の走行実験では担当者が乗車しているが、扉の開閉テストは無人で行なわれた

 先頭の連節バスを自動運転でスタートさせると、後続の大型バス、小型バスが順に連なって、一定間隔を保ちつつ走行。カーブも自動でまがり、後続車両が曲がりきったところで、直線を25km/h程度で走行した。

ハンドル操作などはせずに自動運転で追走

一定の間隔をたもちつつ、カーブをしっかりと走行

 隊列走行の利点として、JR西日本の担当者は「サイズの違うバスで隊列が組め、さらに走行区間が異なる車両を組み合わせ、解除することで、様々な需要に対応できる」と話している。また、JR西日本としては、BRTということで路線バスと鉄道の間に位置する役割の交通機関を想定。JR西日本の久保田修司イノベーション本部長は「鉄道が一番得意とするのは大量・高速輸送。ただ大量・高速輸送がどの地域にもニーズとして高いわけではなく、地域によって色々なニーズがある。こういった交通モードをそのニーズにあわせて提供することで、より良いものを築き上げていきたい」と語った。

バスと鉄道の中間に位置する交通モードとして想定

隊列走行によって、さまざまなニーズに対応できる

JR西日本 理事・鉄道本部副本部長・鉄道本部イノベーション本部長 久保田修司氏(左)とソフトバンク 執行役員 法人事業統括付(鉄道事業担当)永田稔雄氏(左)

 ちなみに実用化した場合、隊列走行は専用道路での運用としているため、実装は採算性の低い地方鉄道などの置き換えなどが考えられるが、久保田氏は「JR西日本のエリアに限定して考えているものではない。こういった交通モードを必要としている地域があれば、エリア外でも実装の可能性はある」と話しており、そもそも鉄道がない地方圏の交通不便地域への実装も視野に入れている。

今後のまちづくりとも連携し、持続可能なモビリティサービスを目指す

 JR西日本とソフトバンクでは、今後も実証実験を続け、202年代半ばには社会実装を目指すとのこと。また現時点では実験と言うこともあり、内燃機関のバスも使用しているが、EV車での導入も視野に入れているとのことだ。

■関連サイト

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

ASCII.jpメール アキバマガジン

クルマ情報byASCII

ピックアップ