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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第681回

スーパーコンピューターの系譜 HPEが独自のインターコネクト「Slingshot-11」を発表 

2022年08月22日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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優秀な検索エンジンを搭載
ハードウェアアクセラレーターも複数実装

 Cassiniに新たに搭載された機能としては、Hardware List Matchingがある。要するにリストの中から、渡されたデータに当たるものを検索する処理である。HPCではこの処理が結構多いのだが、Cassiniでは最大64億Match/秒という猛烈な検索エンジンが搭載されており、この処理をCPUから完全に分離できるとしている。

Cassiniに搭載された新機能のHardware List Matching。矢印線の左側がCPU、右側がネットワークカードの処理になる。ちなみにRDNAはConnectX-5にも搭載されている

 実際の性能が下の画像だ。左は検索対象数と処理メッセージの数の比較で、おおむね50~60個くらいまでで言えば16プロセッサーで3千万メッセージ/秒程度、48プロセッサーでは8千万メッセージ弱の処理が可能である。右はMPIを使ってのメッセージサイズとメッセージレートの関係で、64Bytesあたりまでほぼ一定(1億メッセージ/秒弱)の処理性能を維持できているのがわかる。

左のPPNはProcessor Per Nodeの意味。検索対象が増えるとどうしても性能が落ちるが、60個くらいまでのマッチングであれば一定のレートを示す

 またMPIを使う際に共有メモリーを利用することも多いが、ここでもハードウェアアクセラレーターがいくつか搭載されている。

排他制御に利用できるFENCEやイベントカウンター、Remote flush(リモートノードの共有メモリーエリアの内容を強制書き換え)などをハードウェアでサポートしているのが特徴的

 特にFI_MOREオプション(libfabricというライブラリーで提供されているオプション。これが指定されると、ある書き込みリクエストに続く形で追加の書き込みがあることが明示的に示される)を指定した場合、書き込み速度が50%以上上がる(ただし64Bytesまで)といった結果が示されている。これだけの速度でネットワーク経由での読み書きは、通常のイーサネットではやや厳しいところである。

FI_MOREオプションが指定されると書き込み速度が50%以上上がる。左が書き込み(Put)、右が読み出し(Get)。単位は書き込み頻度(100万IO/秒)、構成は64プロセッサー環境だそうである

 ネットワークからの通信をトリガーにして処理する機能も提供されており、並列処理を行なう際の自由度の高さをハードウェア的に担保している(凝ったことをしてもハードウェア的に処理されるので遅くならない)ことが特徴である。

ネットワークからの通信をトリガーにして処理する機能。もちろん通常のイーサネットでもMagic Packetみたいなものはあるので、機能が皆無というわけでもないのだが、ここまでの自由度はもちろんない

 現在HPEはこれに続き、400Gイーサネット×2となるCassini 2を設計中である。プロセスもTSMCのN7に切り替わるそうで、これは将来のHPC向けに採用されるだろう。ただ、AMDのEl Capitanに間に合うかどうかは微妙なところ。その先を狙ったもの、と考えておいた方が無難だろう。

400Gイーサネット×2となるCassini 2を設計中。ただこのままだと現在のRosettaでは間に合わないので、スイッチ側の変更も必要になる

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