第24回 ユーザックシステムのRPAで実現した業務自動化の事例
ユーザック主催のRPA研究会で披露されたRPA定着までの道
山形県のITサービス企業がたどり着いた答え 二度のRPA導入挫折からの達成
提供: ユーザックシステム
実践的なマニュアル作成で開発の敷居を下げる
次に和田氏は、自社のRPA開発者育成において感じた課題を説明した。まず取り上げたのは、学習と開発時間の確保が難しいことだ。「当社もお客様も、通常業務とのRPAの開発を兼務することが多い。繁忙期になると開発の時間が取れなくなるため、定期的な学習と開発時間の確保が難しくなる」(和田氏)
この問題に対して、同社ではRPAプロジェクトを発足し、所属長、担当者にRPAの活用が会社方針であり、業務であるという理解を促した。同時に開発者の育成は、職場業務の改善につながることを所属長に説明し、組織として定期的に時間を確保できるようにしたという。
次に、開発者がテキストベースで学習した場合、いざ自分の部署の業務を改善しようとしたときに開発ができないという問題があった。「自分自身も感じたことだが、テキストベースの研修では書いていることに従って入力するのが精一杯で、本質の理解ができていなかった。また、難しい業務のRPA化にはプログラミングの考え方が必要だと感じた」(和田氏)
この問題に対応するため、同社では独自のカリキュラムを開発。メーカーによるテキストに加えて、独自資料と演習問題を作成し、研修に使用している。変数、分岐、繰り返しを利用し、フロー図の作成でロジックの組み立て方を学習し、難しい自動化にも取り組めるスキルの習得を可能にした。
また、そもそも育成のスキルがないという問題もあった。これについてはRPAのメーカーであるユーザックシステムとその販売店に相談し、知見を集めていった。「当初は周りに相談できる人がいなくてどうやって開発したらいいのかわからなかったが、ユーザックシステムに教えてもらうことで、今では開発のスキルが身についてきた」(和田氏)
時間をかけて、スキルと意識のギャップを埋める
和田氏は、現場が短期間で結果を求めすぎることに対して懸念を示す。「RPAは簡単なのですぐに結果が出るという誤解が一部にある。しかし開発者がある程度のスキルを身につけるのにはそれなりの時間が必要で、さらに成果が出るまであせってはいけない」
特に現場の開発では、開発者のスキルと現場が求める業務自動化の難易度が一致していないことが多い。そのため最初の自動化は、単純に手順を追うだけのものにすることで早く完成させ、社内で共有と評価をすることが大事だという。
「お客様の企業で実際にRPAをお見せすると、最初は『こんなに難しいのですか』と言われることもある。スキルの習得には時間がかかるということを、周りが理解する必要がある」(和田氏)
RPAの他部署での展開については、業務を開示することを拒む社員がいたり、他人の業務になるため、業務に洗い出しに時間がかかることが問題だと和田氏は指摘する。「トップダウンでの指示が効くと思っている。会社方針であり、業務であることを理解してもらい、自動化によるメリットも経営から伝えることで、他の現場も理解してもらうことが重要だ」
開発のモチベーションを高く保つことも課題だった。これに対しては事例の共有と、賞与に反映する評価制度の導入で対応した。また、研修が終了した後も、現場の開発の進捗状況を情報システム部門が管理して、開発が継続的に行なわれるようにした。
運用時の課題は情報システム部門で解決
RPAが浸透してきた段階で、運用面の課題がいくつか出てきた。まず、属人化の問題だ。シナリオは作成者ごとに書き方にばらつきがあり、他の人の修正が難しい問題があった。そこでシナリオ作成のルールを策定し、誰が作っても、ある程度作り方が揃うようにした。
またRPAの運用が長く続くと、業務がブラックボックス化してしまい、RPAが止まったとき業務がストップして対処できなくなる恐れがある。これを回避するためにRPAの管理台帳を作成して、トラブル時の対処方法や対応者の名前などを明確化している。台帳を確認することで、同種の業務についてすでに開発済みのシナリオがあればそれを転用できるようにして、業務効率化も進めている。
和田氏は、「社内のRPAプロジェクトへの期待は非常に高まっている。2020年のプロジェクト開始当初は、業務としての参加を呼びかけていたが、今年は直接参加したいという社員が多数手を挙げている状況。取締役2名を含む全職種から10名の参加が決まった。既存メンバー20名を加えて30名となり、全社員の4分の1がAutoジョブ名人のユーザーになっている」と語った。
山形では、RPAはまだ新しいジャンルの製品で、顧客には漠然とした警戒感もあるという。メコムは自社で導入している実績を見せることで、顧客に安心感を与えながら普及を進めようとしている。
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