このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第676回

かつては夢物語だった光コンピューターを実現したLightmatter AIプロセッサーの昨今

2022年07月18日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

Lightmatterは内部に
レーザーモジュールを実装する

 その内部構成が下の画像である。上位アプリケーションやネットワーク周りの制御のためにEPYCプロセッサー×2とDDR4メモリーが中央に搭載され、おそらくはシャーシ前面(図では右側)に200Gイーサネット×2とEnvise×2を搭載したカード×8が、後端(図では左側)にはレーザー発振器×2とそのための冷却ファンが搭載される。

おそらくはレーザーモジュールからそれぞれのEnvise搭載カードに接続する光ファイバーが、シャーシの中を這いまわっているものと思われる。受光素子の方は、Envise搭載カード上に実装され、これがPCIe経由か何かでEPYCにつながっているのだろう

左側が絶対性能、右が性能/消費電力比となっている。ところでなぜEnvise Serverは2台の構成なのだろう?

 なぜレーザーが? と思うれるかもしれないが、記事冒頭の画像に戻ると、ここのOIUはあくまでも「入射光の位相を変調したり信号のOn/Offをすることで演算する」仕組みであって、もともとの光源は搭載されていない。

 そこで外部に光源を用意し、それをPNPに送り込んで計算処理をして、最後にPNPから出てきた出力光をPhoto Detectorと呼ばれる受光素子を使って電気信号に変え、これを読み取って結果を得る形になる。そのために大きなレーザーモジュールがシャーシ後端に鎮座しているわけだ。

 さてこのEnvise Serverの性能として示されているのが下の画像だ。まだEnviseの方は推定値であるが、絶対性能および性能/消費電力比で最大10倍以上、NVIDIAのDGX-A100を上回るとしている。まだ推定性能だからこれをこのまま鵜呑みにするのは危険にしても、確かにファンドなどがLightmatterに投資するには十分な性能が出ているように見える。

これはPassageの紹介ビデオを合成したもの。ASIC(つまりCMOSチップ)、DRAM、LightmatterのようなOpt-Electronicsデバイスを混在させて、Passageの基板の上に載せる形を想定している

 ちなみに同社はこのPNP以外に、同じくNanophotonicを利用したインターコネクトとして、Passageも発表している。このPassageは、言ってみればNanophotonicを利用したFabricである。

こちらはPassageのテストチップ。ダイサイズは8×8インチinch(20cm角)だそうだ

 というよりTSMCのCoWoSに代表されるシリコンインターポーザーに、プログラマブルの機能を追加したものだ。ちなみに接続はネットワークインターフェースとSerDesインターフェースの2種類があるとされるが、このあたりの仔細はまだ公開されていない。

これはおそらくPacketベースのやり取りに向いた仕組み。NoC(Network on Chip)をインターコネクト層で実現するというものだろう

こちらは明確にピアツーピアの接続を行なうものだろう。変更の必要がない、入出力が決まったペアで行なわれる場合はこちらの方がオーバーヘッドが少ないということか?

 ただ察するに、MZIやフェーズシフターを挟み込むことで、動的にインターコネクトを変更できるようなインターポーザ―、というあたりではないかと思う。あるいは、このEnvise向けのソフトウェアスタックとして、IDIOMと呼ばれるものも提供されている。

 まだ顧客の評価などが始まっているかどうかも不明なので、現時点で製品の話をあれこれするのは時期尚早だろうが、AIプロセッサーの急速な盛り上がりのおかげで、かつては夢物語だったようなデバイスが出現しつつあるのは非常に「楽しい」と思う。この方向がさらに発展することを期待したい。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン