ここはゴールではない
ただし、アップルは画期的なアルミニウムの調達も、あくまで通過点、過渡期に過ぎないとしています。というのも、そもそもアップルは、新たな資源調達を行なわずに、リサイクル材料で製品を作る「クローズドサイクル」をゴールとしているからです。
カーボンフリーアルミニウムは、気候変動への対策としては大きな成果と言えますが、製品を作る際に地球の鉱物を採掘する資源調達は続きます。つまり、2億台のiPhoneを作るために、その分のアルミニウムを取り出すだけために必要なボーキサイトを掘るために、さらに巨大な穴を地球に空け続けているからです。
将来的にはカーボンフリーアルミニウムですら調達しなくなり、既存の製品の回収から資源を取り出して新しい製品を作るサイクルへと持ち込もうとしています。つまりアップルは、自社にとっては賞味期限が存在するアルミニウムの精錬方法の実現に対して投資をしたということになります。
ただアルミニウムが必要な企業はアップルだけではありません。産業全体がカーボンフリーへと転換を果たし、より持続的なビジネスが展開できるようになることに対して、競争ではなく共創を目指しているのです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。モバイルとソーシャルにテクノロジー、ライフスタイル、イノベーションについて取材活動を展開。2011年より8年間、米国カリフォルニア州バークレーに住み、シリコンバレー、サンフランシスコのテックシーンを直接取材。帰国後、情報経営イノベーション専門職大学(iU)専任教員として教鞭を執る。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
この連載の記事
-
第313回
自動車
「10年後にはみんなEVになるんだから」と人は言うけれど -
第312回
自動車
スマホから自動車を買う テスラのユーザー体験 -
第311回
自動車
Tesla Model 3をポチるまで 決め手は航続距離と乗り心地 -
第310回
自動車
テスラを買ったワケ 最大の動機は「リスク回避」 -
第309回
ビジネス
Twitterジャック・ドーシーCEO退任 理由は「創業期を脱するため」 -
第308回
トピックス
忙しすぎてカオスな予定を量子AIに調整してもらいたい -
第307回
Apple
なぜiPodは成功したのか 20年経った今あらためて考える -
第306回
トピックス
大学オンライン授業、教室との「ハイブリッド化」は複雑怪奇 -
第305回
トピックス
トランプ大統領が巨大ITに締め出された事態の重み -
第304回
自動車
アップルは本当に電気自動車を作るのか - この連載の一覧へ