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松村太郎の「"it"トレンド」 第314回

アップル「iPhone SE(第3世代)」隠れた最大のイノベーション

2022年03月28日 12時00分更新

文● 松村太郎 編集● ASCII

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ここはゴールではない

 ただし、アップルは画期的なアルミニウムの調達も、あくまで通過点、過渡期に過ぎないとしています。というのも、そもそもアップルは、新たな資源調達を行なわずに、リサイクル材料で製品を作る「クローズドサイクル」をゴールとしているからです。

 カーボンフリーアルミニウムは、気候変動への対策としては大きな成果と言えますが、製品を作る際に地球の鉱物を採掘する資源調達は続きます。つまり、2億台のiPhoneを作るために、その分のアルミニウムを取り出すだけために必要なボーキサイトを掘るために、さらに巨大な穴を地球に空け続けているからです。

 将来的にはカーボンフリーアルミニウムですら調達しなくなり、既存の製品の回収から資源を取り出して新しい製品を作るサイクルへと持ち込もうとしています。つまりアップルは、自社にとっては賞味期限が存在するアルミニウムの精錬方法の実現に対して投資をしたということになります。

 ただアルミニウムが必要な企業はアップルだけではありません。産業全体がカーボンフリーへと転換を果たし、より持続的なビジネスが展開できるようになることに対して、競争ではなく共創を目指しているのです。

 

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。モバイルとソーシャルにテクノロジー、ライフスタイル、イノベーションについて取材活動を展開。2011年より8年間、米国カリフォルニア州バークレーに住み、シリコンバレー、サンフランシスコのテックシーンを直接取材。帰国後、情報経営イノベーション専門職大学(iU)専任教員として教鞭を執る。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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