「減価償却、とっくに終わっとるで~」
用紙を拝見しましたが、非常によくできていると思います。帳簿管理に慣れていない人が未記入にしがちな「減価償却」の欄もしっかり書き込まれています。しかし、書き込みすぎです。
ジュンさんの問題は、減価償却の期間がとっくに終わっているものに対しても、減価償却をしていることです。ジュンさんの問題を解説する前に、減価償却についてざっと説明します。
減価償却とは、長期間使用する10万円以上のもの(PC、クルマ、撮影機材など)を購入した時に、その年に経費計上するのではなく、耐用年数に応じて経費計上することを指します。ちなみに、10万円以上の物品を「固定資産(有形固定資産)」と言います。
気になるモノの耐用年数表 | |
---|---|
種別 | 耐用年数 |
パソコン | 4年 |
サーバー | 5年 |
小型車(総排気量0.66l以下) | 4年 |
乗用車 | 6年 |
事務机・椅子(金属製) | 15年 |
応接セット | 8年 |
家具 | 8年 |
家具(主に金属製) | 15年 |
AV機器 | 5年 |
冷暖房機器 | 6年 |
冷蔵庫・洗濯機 | 6年 |
ファクス | 5年 |
プリンター | 5年 |
カメラ | 5年 |
電話 | 6年 |
固定資産を取得した時に、法律で決められた耐用年数(※別表参照)に応じて減価償却していきます。例えば、耐用年数10年の100万円の機械を購入したら、1年間に10万円ずつ、10年間にわたって経費計上するのです。この場合は「定額法」といいます。そのほかにも「定率法」がありますが、ここでは定額法で考えていきましょう。
しかし、ジュンさんの場合、撮影機材、エアコン、クルマ、冷蔵庫、パソコンなどあらゆるものが耐用年数を過ぎても経費として計上し続けていますし、すでに所有していないものも載っているようです。これは大きな問題です。これを私は「ネバーエンディング減価償却」と言っていますが、これは税務署に見られたらアウト。「不正」とみなされる可能性は非常に高いです。
それとは逆に、減価償却が未記入の人もいます。それを私は「もったいない謎の空白」と呼んでいます。減価償却という字面だけで「なんかめんどくさそう」と敬遠する気持ちはわかりますが、これは税金を「払いすぎ」ないためにも、必要なのです。
減価償却を制する者は、税金を制す。基本の考え方さえわかれば簡単です。ぜひ仕組みを理解し、正しく経費計上してくださいね。
監修者紹介――高橋創税理士(髙橋創税理士事務所)
1974年東京都生まれ。東京都立大学経済学部卒業。専門学校で所得税法の講師,会計事務所勤務を経て2007年に新宿で髙橋創税理士事務所を開設。税理士業の傍ら新宿ゴールデン街のバー「無銘喫茶」の経営なども行う。
著書に『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか? 日本の昔話で身につく税の基本』(ダイヤモンド社,2021年)、『「知りたい!」がすぐひける 小さな会社の経理・人事・総務』(西東社,2022年)などがある。
髙橋創税理士事務所 https://takahashi-hajime.jp/
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