スマートシティ関連のテクノロジーは生活者の課題を解決できるのか
第46回NEDOピッチ「スマートシティ ver.」レポート
日本はその人口の9割近くが都市部に居住していると言われている。これは警察や消防などの安全・安心機能や、商店や通信網など都市が共通して提供している利便性を享受するためだが、一方で人口減少に悩む地方小都市といまだに人口増が続く東京とでは住民がその都市に求めるニーズが異なる。
それぞれの都市がより良い機能を提供するため、スマートシティという概念が提唱されている。これはIoTなど新たな技術を使って住民が抱える課題をよりスマートに解決する機能を持つ都市、ということができる。2022年1月20日に開催した「第46回NEDOピッチ」は、このスマートシティをテーマに、新たなシーズを提供している5つのスタートアップが集まった。
人口減少やインフラの老朽化に悩む日本において都市問題は重要課題の1つとなっている。焦眉の急に挑む5つのスタートアップによるピッチイベントの様子をレポートする。
スマートシティ:都市のあるべき姿を課題から探索する
5社のスタートアップによるピッチに先立ち、ボストンコンサルティンググループ パートナー&アソシエイト・ディレクターの葉村 真樹氏(以下、葉村氏)から、スマートシティとは何か、その定義や今後の課題について紹介がなされた。
スマートシティとはどのようなものなのかを考える場合、ビジネス面を重視してしまうとどうしても技術シーズに目が行きがちになる。例えば必要な通信設備はとか、どんな技術を使って社会インフラを構築するかといった方向に議論が進んでいくことになる。
しかし、そもそも生き残りという課題のために人が集まってくるところから都市が始まっている以上、住民の課題をどのように解決するかという点に都市の本質がある。そしてその課題解決のソリューションに技術を適用してスマートに解決している都市がスマートシティであると葉村氏は説明する。
現代の都市には生存可能性の向上以外にも多様な価値(機能)が求められている。例えば、医療や教育などQOLを向上させる価値、災害対策等より高度な安全・安心の提供が基本価値として挙げられる。それらに加えて、都市運営およびそこで営まれるビジネスの高度化・効率化や、エネルギー問題やごみ問題など、都市そのものおよび住民の生活の持続化が現代において注目されている価値と言えるだろう。
葉村氏は、ここに今後の環境変化を考慮してスマートシティの進化について考察している。
「グローバルな環境変化や都市化のフェーズに応じた環境変化などにより、(都市の価値は)どんどん変化していく。それらの掛け合わせにより、こういった課題(下図)が時代の変化に応じて次から次へと出てきた。一方で進化したテクノロジーを駆使して課題をどう解決できるか、それ自体がどういったビジネスになりうるのか、こういった目線が重視される時代に入ってきている。」(葉村氏)
いまだスマートシティに期待されているすべての価値を実装した都市はない。都市に求められる価値は高度化・複雑化が進んでおり、それを実現するための手段(技術・インフラ)も多様であり、またソリューションの基盤となるデータの蓄積も発展途上だ。これからの社会を支える新しい都市機能の実現に向けて、新しい企業の力が期待されている。