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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第654回

謎の3Dアドレス機能付きVLIW/SIMDを出荷するRoviero AIプロセッサーの昨今

2022年02月14日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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 前回までの流れで言えば、今回はNVIDIAのロードマップになりそうなものだが、一切情報がない。GeForce RTX 3050のレビューは上がっているが、GeForce RTX 3090 Tiは「1月末にまた説明する」という話だったのが、すでに2月に突入している有様。

 そしてAmpere世代の後継となるHopper/Ada Lovelace世代については、断片的にいくつかの話はあるものの、記事にできるほどの内容がない。3月にはGTCがあるので、あるいはここでHopperに関してはなにか情報が出てくるかもしれないので、もう少々お待ちいただきたい。

インド色の強いスタートアップ企業Roviero
幹部が皆インテル・AMDと深い関係にある

 ということで久々にAIプロセッサーの話に戻る。今回取り上げるのは、2019年に創業したばかりのスタートアップ企業であるRovieroである。創業者はCEOのDeepak Mital氏、CBOのSumat Mehra氏、それとSr.VPのRavi Setty氏の3人となっている。

 まずMital氏は、インドのBITS Pilaniで修士号を取得してからTI indiaに就職し、ここでDSP周りの仕事に携わった後、LSI Logicに転職。ここに16年あまり勤務するが、そのLSI Logic(途中で社名がLSI Corporationに変更)のAxxiaというネットワークプロセッサービジネスが丸ごとインテルに売却された関係でインテルに移籍。2017年までAxxiaやネットワーク製品の営業などに携わっていたらしい。

 そしてSr.VPのSetty氏は、ネットワーク関連機器向けのASIC開発エンジニアとして複数の会社を渡り歩いていた(なぜかインテルには2回も勤務している)。2020年まではFacebookのSystem Architect Silicon Leadという立場におられ、2020年3月から現職である。

 そのSetty氏、2015~2017年はインテルでPCIe IPやSoC Power Architectureの職に携わっており、勤務場所はMital氏同様インテルのサンタクララであった。おそらくこの時期に2人は出会ったのであろう。

 残るCBO(Chief Business Officerの略だと思われる)のMehra氏であるが、氏はコニカミノルタの研究科学者からキャリアをスタートするものの、途中から事業開発に職種を鞍替え。2019年末まではXperiのSVP&GMというポジションにおられた。

 2020年1月に独立し、Sumat Mehra LLCというスタートアップ企業の起業直後向けにビジネスをサポートするコンサルタント企業を立ち上げており、2020年4月にはステルスモードのベンチャー企業に参画してるとあるあたり、おそらくはSumat Mehra LLCの最初の顧客の1つがRovieroなのだろう。CBOなる謎の役職も、Mital氏とSetty氏がテクノロジーや製品化に集中し、ビジネスの方をMehra氏が一手に引き受けているというのであれば納得できる肩書である。

 そのMehra氏は2021年2月からCBOとしてフルタイムで働いており、今はSumat Mehra LLCの方は一時お休みの模様だ(コンサルタント企業といっても、実質Mehra氏1人なのかもしれない)。この2021年2月に同社はステルスモードから脱却、複数のベンチャーキャピタルからシリーズファンディングを受けており、おまけに2021年5月には本拠地のサンノゼに加え、インドとルーマニアにも開発拠点を開設したそうだ。

インドはまだわかるのだが、なぜルーマニア?

 余談だが、同社はインド色の強い企業で、実際マネジメントチームを見るとアドバイザーのAllen Rush氏以外全員インド系で固まっているあたり、インド系のツテで立ち上がった会社という感じがする。

 それはともかく、アドバイザーが2人ともAMDに絡んでいるのがおもしろい。Allen Rush氏は2013年から2020年までAMDの上級研究員を務めていた。そしてもう1人のAtiq Raza氏と言えば、RMI Corporation(Raza Microelectronicsから改称)の創業者であり、連載126回で名前が出てくるが、AMDがかつて買収したAlchemy Semiconductorを買収した企業である。

 ただそのRaza氏、Raza Microelectronicsの前はAMDのCOOを務めていた時代がある。連載64回で触れたNexGenのCEOであり、AMDに買収されたことでそのままAMDに移籍。AMDのCTOなどを経て1999年4月にCOOに昇格している。

 ちなみにCOO昇格後3ヵ月で辞めているのだが、それはAMD創業者でありCEOを務めていたJerry Sanders氏と工場建設を巡って対立したためである。Raza氏はファブライト(外部委託)路線で当時建設中だったFab 30の売却を主張。一方Sanders氏は“Real man have a fabs”(真の男はFabを持つ)の発言で知られる投資推進派であり、ケンカにならないわけがない。そんなわけでAMDを辞めたRaza氏が立ち上げたのがRaza Microelectronicsで、ここがAlchemy SemiconductorのMIPSベースプロセッサーを引き取るという、なんか妙な縁でAMDとつながっている方である。

VLIW/SIMDベースのプロセッサーIPと
コンパイラが主力商品

 話を戻そう。Rovieroは2019年立ち上げであるし、まだ社員数もそう多くないと思われるので、同社が現時点で提供できるのはIPとコンパイラのみである(それだけでも大したものだと思うが)。要するにAIに向いたプロセッサーをIPで提供するとともに、その上でニューラルネットワークを動かすのに必要となるコンパイラを提供する形になっている。

 そのプロセッサーIP、ここにはVLIW/SIMDベースとあるが、そこに“Challanging”という言葉が躍っているあたりが不穏である。実際、謎の“3D data structure addresing”なる説明があるあたり、あまり普通のアーキテクチャーではないことがうかがい知れる。

VLIW/SIMDベースのプロセッサーIP。0.1TOPSから>100TOPSまで、というあたりはありきたりではあるのだが。ちなみにFPGA向けとは別に、22nm(TSMCの22ULPあたりだろうか?)向けに600MHz駆動が可能な配置配線までは完了しているとしており、必要ならそれほど時間をかけずにテープアウトできるだろう

“3D data structure addresing”なる説明がある。ほかにも重みの記憶用SRAMサイズを10分の1にできる、演算ユニットの効率を80%以上で使える、などいろいろ刺激的な話が並ぶ

 それはともかく、Rovieroのソリューションは画像をニューラルネットワークを使って処理することに特化した構成になっており、例えば4K超えの画像をダウンスケールなしで一発でフェッチできる(検索結果から抜き出せる)としているあたりは独特である。

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