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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第639回

日本発のエッジAI向けチップ「別府」「秩父」ことAiOnIc AIプロセッサーの昨今

2021年11月01日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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異様にアクセラレーターが充実している「chichibu」

 さてこれらの目標に向けて試作したbeppuチップ、まずは一般的な評価ボードと、AIカメラ向け評価ボードの2つの開発キットが用意された。

DRAMが外付けになっている時点で前の画像で言う“1 Chip Solution”ではない気がするが、これはおそらくE34コア用のものだろう。ライセンスの話は後述する

AIカメラ用にはDRAMが8GBに増えているのは、それだけバッファメモリーが必要ということだろうか?

 ただ今回はそのbeppuチップの中身ではなく、beppuチップを基にしたchichibuチップの内部構造が紹介されたのだが、少し変である。Processor GroupはRISC-VエンジンとGPGPUエンジン、GEMMエンジン、それとGEMM用のDMAからなるが、それとは別に異様に充実したアクセラレーターが搭載されている。

chichibuチップの内部構造。FFT専用アクセラレーターまで搭載されているのはさすがである。このあたりは画像のフィルタリング向けと思われる。mpeg/jpeg assistはイメージ展開用だろうか?

 AiOnIcでは暗部補正、逆光補正といった撮影映像の補正や、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping:自走ロボットの制御などで使われる自己位置推定と環境地図作成)、人物検出、パレット認識など、いくつかのアプリケーションシナリオが用意され、そのシナリオに応じてこの豊富なアクセラレーターとProcessor Groupで提供されるAIエンジンを適時組み合わせ、必要な処理を行なう。この際のデータの受け渡しは16バンク構成の8MBキャッシュ経由になる模様だ。

 ちなみにそのアクセラレーターの中で、nnlp(Neural Network Level Processor)なるものだけは複数存在しているように見えるが、これがなにをしているのかは説明がなかった。名前からすると、畳み込みニューラルネットワークの重みというかネットワークの係数のハンドリングを処理するプロセッサーだろうか?

 逆に詳細が説明されたのがFrame Composerで、これはOpenCVの処理をハンドリングできるものという話であった。これらの固定機能アクセラレーターを組み合わせることで、例えばAffine変換(画像の拡大縮小や回転、平行移動など)は1命令で処理可能としている。

 特徴的なのはこのアクセラレーターとAIプロセッサーは同じ扱いであり、全部スケジューラー(上の画像で“pss H/W Scheduler”と書かれている部分)から制御され、おそらくはサイクルレベルでこれらを順次切り替えることで、同時に多数のスレッドを動かすことだ。

ここで言うスレッドは、ある特定の処理の流れ(それこそ映像補正やSLAMなど)の1つ1つを指すことになる。CPU内部のスレッドとは異なる意味合いと思われるので注意

 つまり、1つのAiOnIcで、複数のアプリケーションを同時に動かすことが可能というわけだ。実際、下の画像のように12種類のアルゴリズムを同時に動かすというデモも示された。

ただ実際のアプリケーションで、これらを同時に行なうというニーズがどの程度あるのかは不明である。もちろんないわけではないとは思うのだが

 逆に言えば、1種類だけのアプリケーションを高速に動かすようなケースでは、特定のアクセラレーターあるいはAIプロセッサーの能力が先に飽和してしまいそうではある。このあたりはバーターなのであろう。

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