ある日のこと、担当編集のスピーディー末岡から「時代はスーパーカブですよ!」という連絡が。どうやら「スーパーカブ」というテレビアニメを観て感化された様子で、乗ってみたいということに。そこで今回、スーパーカブ50を試乗することになりました。
HONDAニュースーパーカブ しょにょ1 pic.twitter.com/DMjYoZauLk
— 江口寿史 (@Eguchinn) December 5, 2017
ロングセラーバイク「スーパーカブ」って?
当該アニメの元となったのは、角川コミック・エースのライトノベル「スーパーカブ」。その内容は「ひとりぼっちの女の子が、いわく付きのスーパーカブ50を破格値で入手した事からはじまる小さな日常を描いた物語」というもの。ネタバレはよくないので、ライトノベルやアニメのことは触れないことにして(読んだり見たりしてください)、スーパーカブ50について、カンタンにおさらいしましょう。
スーパーカブが誕生したのは1958年のこと。以来60年以上に渡り改良を続けながら生産され2017年に1億台を達成。乗り物の単独シリーズとして世界最多の生産台数および販売台数を記録し続けています。現在、スーパーカブは最高出力3.7馬力の50cc単気筒エンジンを搭載した原付1種の「スーパーカブ50」と、最高出力8馬力の排気量110cc単気筒エンジン搭載の原付2種「スーパーカブ110」の2車種をラインアップしています。スピーディー末岡は普通自動車免許しか取得していませんので、今のままでは原付1種のスーパーカブ50しか乗ることができません。
なお、原付1種とは排気量50ccまでのバイクのこと。普通乗用車や排気量51cc以上のバイクと異なり、運用面で4つの大きな壁があります。まず「最高速度は30km/hまで」しか出せないほか、「二段階右折(指定交差点)」という一回で右折することが禁じられているのです。さらに「二人乗り禁止」であるほか「積載量は30kg以下」と実用面でも異なります。中でも二段階右折は、普段クルマに乗っている人には「何それ?」と思われることでしょう。それについては後ほど。
なお、現在のお値段ですがスーパーカブ50が23万6500円、スーパーカブ110が28万500円(ともに税込)です。
スーパーカブ最大の特徴が自動遠心クラッチ。左足のシフトチェンジペダルを踏むごとに、自動的にクラッチ操作を行なうという、いわばセミオートマです。しかも発進時に半クラッチをする必要もなく、結果的にクラッチレバーを必要としません。変速パターンは……。
【走行中】
前ペダル:N→1→2→3→4
後ペダル:4→3→2→1→N
【停車時】
前ペダル:N→1→2→3→4→N→繰り返す
後ペダル:N→4→3→2→1→N→繰り返す
というもので、普段バイクに乗っている人ほど「なんじゃこれ?」になりがち。また、スーパーカブにはN以外のシフトインジケーターが用意されていないため、不慣れな人は「今何速が入っているのかわからない」ということにも。もっとも、それがいいのですが。
アニメのようにはいかず
慣れないギアチェンジに悪戦苦闘
「これがスーパーカブかぁ」と眺めるスピーディー末岡。劇中のようにキックスターターを使うことを覚悟していたようですが、イマドキのスーパーカブ50にはセルフスターターが装備され、スイッチ一つでカンタンにエンジンがかかります。ヘッドライトはLEDを採用しているのも劇中とは異なるところ。ノスタルジックに昔のテイストを守るのではなく、時代に合わせてアップデートしてきたからこそ、世界最多の生産台数および販売台数を記録し続けているのでしょう。
「スクーターには乗ったことがあるけれど、スーパーカブは初めて」というスピーディー末岡。まずは劇中のとおり、説明書を読むことにします。説明書はシート近くにあるサイドカバーの中にあります。まずはコインでネジを緩め、説明書をゲット。なんとなく走らせ方はわかった様子で、いざ公道へ。
とその前に、バイクに乗る時は安全なヘルメットはもちろん、グローブが必要。そこで用意したのが、彼が以前関わっていたグッドスマイルレーシングの優勝記念グローブ。「今まで手を通したことがなかったんだけどなぁ」などとボヤキながら装着。それではいってらっしゃい。
イチョウ並木の下をどう見ても30km/h未満で走るスピーディー末岡。実に遅いです。しかも、どこかガクガクして走っているような。どうやらギアの操作がよくわからない様子で、1速か2速に入った状態のまま走っている模様。「スクーターとは大違いですね。ギアがあるだけで、こんなにバイクって難しくなるんですか?」と混乱している様子。「せめて何速なのかわかればいいのだけれど」と愚痴ります。さらに「右横をクルマが通過するの、メッチャ怖いですね!」とも。一方で「これはコレでスローライフな感じがしてアリな気はします。なんかイイですね、スーパーカブ50」というのが率直な感想。少しはテレビアニメの主人公になれた気がしたのでは?
スピーディー末岡に「これ、燃費はリッター100kmらしいですよ」と伝えると「なんじゃそりゃ!」と驚いた様子。そういえば、スーパーカブのエンジンを使ったエコラン「ホンダ エコマイレッジチャレンジ」がありましたね、と変に盛り上がり。調べてみると、最高記録は2011年の第31回でチームファイアボールの3644.869km/Lなのだとか。改めて「Hondaは、こうしたカブからF1まで、さまざまなエンジンを作っている企業なんだよなぁ」と思った次第。
さて。スーパーカブを堪能したスピーディー末岡は、青山一丁目の交差点にある本田技研工業本社ビルの方へ。私は歩いて戻ったのですが、いつまで経っても彼の姿は見えず。「どこに行ったんだろう?」と探してみると、三宅坂の方からスーパーカブ50を手押しして帰ってきたではありませんか!? 「何をやっているんですか?」と尋ねると「あそこにいる人がずーッと俺を見ていたんですよ」と指さした先は青山一丁目交差点の角にある交番。
どうやら二段階右折に際してどこに停まっていいのかわかりづらかったようで、その挙動不審な行動を警察官が一部始終観察していたそうで、違反キップが切られるのが怖くなり、結果エンジンを停止し降車して手押ししたのだとか。ちなみに正しい十字路での二段階右折は「右ウィンカーを出したまま道路の左端を直進し、交差する道路の左端の安全な場所で方向転換をしたら、ウィンカーを消して待機。対面した信号が青に変わったら直進する」です。たしかにちょっとわかりづらい法規ではありますね。
【まとめ】趣味性と実用性を両立させたバイク
世界中で売れるワケが詰まっている
スーパーカブ50を堪能したスピーディー末岡。そのままカブ主になるか? と思いきや「もうちょっとパワーが欲しいですね」というのが正直な感想。パワーは出せるエンジンだけど排出ガス規制の対応があるからやむを得ないのですが……。「あとシフトがあるだけでこんなに難しく、逆に趣味性が高まるのかと思った」とも。シフトに関しては最後は慣れの問題。とにもかくにも独特の世界観に浸っていましたし、なにより似合っていました(笑)。
昨今、若年層でも普通二輪免許の取得人数が増化傾向だとか。これはバイクの免許を取りますか!? と期待したところ「いや、金がないっす」とあっさり。残念!
アニメからバイクに興味を抱くというのは、恥ずかしいことでも何でもなく、理由付けとして十分。Hondaでは、Honda GOバイクレンタル等のサービスを実施しているので、一度スーパーカブを体験されてはいかがでしょうか?
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