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あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ第146回

アルピナ「B5」に乗るとクルマ道楽の終着駅だとわかる

文●栗原祥光(@yosh_kurihara) 編集●ASCII

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元が良いのにさらに良くする意味とは

アルピナ/B5

 元々が良いクルマであるBMW 5シリーズ。それに1000万円をつぎ込んで手を加える必要はあるのか? というのが、B5に触れる前まで抱いていた疑問。とりあえずシートに座り「なるほど高いだけのことはあるナ」と確認し、イグニッションボタンを押すと……実に上品な排気音が聞こえてくるではありませんか。静かすぎず、それでいてうるさすぎず。綺麗な低音という形容がピッタリのエキゾーストノートは、いつまでも聴き続けていたくなるサウンド。外観と内観同様、派手さは微塵もなく、音からもイイモノ感が漂います。

コンフォートモードのスタンダード

コンフォートモードのプラス

走行モードセレクタはシフトレバー近傍のボタンで切り替える

コンフォートプラスのメーター表示

 走行モードセレクタでコンフォートモードを選択。するとBMWでは見かけなかったプラスの文字が。このプラスはアルピナが独自で開発した走行モードなのだそう。そこでコンフォートプラスで走り始めることにしました。

アルピナB5

 BMWの乗り味を一言で言えば重厚路線。地面に脚がしっかりとつき、すべての操作が重厚感を覚える印象なのですが、アルピナは「このクルマ、軽量化したのか?」と思えるほどの軽やかさとしなやかさ与えたかのような乗り味に驚きます。なによりBMWらしい剛の安定感と、適度な柔軟性が両立した見事な乗り心地で、BMWにアルピナという翼を与えられた、という形容がピッタリ。無限に沸く泉の如くトルクフルなパワーで、それでいてジェントル。普通に言うなら「サスペンションがよく働いている」「エンジンのトルクによって軽く感じさせる」でしょうし、実際にそうなのでしょう。ですが、そのような理屈や御託を並べるより、ただただ「最高!」という言葉で表現したいほど。他の表現をするなら、五感全てでシルキーな感触を覚え、真綿で頬を撫でる感覚に近いのです。とにかく気持ちがイイ!

アルピナB5のリア

 グルメ番組で芸能人が「美味しい!」としか言わない時「お前、それじゃワカランだろ! どんな味かレポートしろよ」と言いたくなることがありませんか? 今まで画面越しでそうツッコミを入れていたのですが、アルピナに触れた今、「美味しい」しか言わない芸能人の気持ちを理解しました。どう最高なんだといわれても、自分の中にある物差しを遥かに超えており、その素晴らしさを伝えることができないもどかしさ。強いて言えば、美味しい物を食べた時、思わず笑顔になるあの感じ。人間イイモノを知った時はほくそ笑むように、アルピナのステアリングを握ると、頬が緩み、笑うしかないのです。

 一般的に高性能車ほど美味しいと思える領域が限定されがちです。ですが、アルピナの素晴らしいところは、そのスウィートスポットが全領域に渡るところ。高速道路の巡航はもちろんのこと、渋滞気味の低速走行時でも甘美な味わいが得られるから恐れ入ります。Mシリーズとの違いはここで、あちらの楽しさはサーキットやワインディングなどステージが限定され、そのようなステージではドーパミンがドバドバ出て「最高!」なのですが、一般道では「足が硬い」「ウルサイ」とストレスを感じなくもなく。ですがアルピナは、サーキット走行などではMシリーズに対してドーパミンの量やタイムの面で劣るかもしれませんが、十分対応でき、それでいて、そのまま快適に家に帰れると、走行ステージを選ばないのです。さらに極上の排気音を聴きたいからBGMすらもイラナイ。いかなる走行ステージでも退屈さ皆無で、真の意味でストレスフリー。いつまでも乗っていたいと思わせるのです。たとえるなら、毎日呑んでいるのに、飲むたびに美味しいと思える軟水のよう。このようなクルマ、アルピナ以外に知りません。

アルピナB5で碓氷峠ダウンヒルを決行!

SPORTモードをオン

シートサポートの幅を狭めに調整

シフトタイミングをスポーツプラスへ変更

ステアリングを硬めのスポーツへ

ダンパーも硬めのスポーツに

エンジンは最高出力が得られるスポーツプラスに

 いや、走行ステージを選ばないハズがない! 絶対に苦手な道があるハズだと私が向かった先は碓氷峠。こんな峠道を大型セダンで走れば、ストレスで嫌になるハズと、おそらくアルピナ試乗レポート初、峠に挑むことに。まずはSPORT PLUSにセットしアクセルオン。最初のコーナーを曲がった瞬間、自分の間違いに気づきました。メチャクチャ楽しいではありませんか! 軽やかな動きと圧倒的なパワーは、並のスポーツカーを蹴散らすこと間違いナシの速さ。さらに、ギャップが怖くないから心の余裕度がとんでもなく「踏める」のです。

 もちろん、もう少しボディーサイズが小さければ言うことナシですが、通常の5シリーズで碓氷峠を走ったら、途中で心が折れていたことでしょう。アルピナB5が苦手とする道はナシと断言すると共に感服した次第。それどころか、あまりの楽しさに何度も碓氷峠を往復すると共に「世の中でこれほど面白いことはない!」と声を大にして申し上げさせていただきます。思いつく限り苦手な道は……と考えたのですが、未舗装のラフロードか世田谷区成城あたりの細い一方通行くらいしか思いつきません。とはいえ、私自身どちらも走りたくないのですが。

【まとめ】クルマ経験が長い人ほど
アルピナの良さがわかる

 BMW 3シリーズをベースとしたモデルであるBMW アルピナ B3は、昨年のカー・オブ・ザ・イヤーの中で感動的なドライブフィールを味わえるクルマに与えられる「パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。最初「アルピナB3って何?」と思ったのですが、今回はその上位モデルにあたるB5に触れ、B3の受賞に対して納得した次第。

 色々なクルマに乗ったことがある人ほど、アルピナの奥深さ、素晴らしさはご理解頂けるのではないでしょうか。逆に見た目の派手さやパフォーマンスに心奪われているうちは、アルピナへ行くにはまだ早いといえるかもしれません。あらゆるクルマを体験した「クルマグルメが行きつく先にあるクルマ」がアルピナの世界といえるでしょう。ちなみにアルピナはワインのブローカーとして欧州のホテルやレストランとワイン農園をつなぐビジネスなども展開しているのだとか。アルピナは、食もクルマも、グルメ志向の方に向けた会社なのかもしれません。

 ちなみに年間1700台近い生産台数のうち、約2割が日本向けなのだとか。それはすなわち、我が国にアルピナの良さを知るエンスーが、それだけ多くいるということで、なぜかうれしく思った次第。世にプレミアムブランドは多くありますが、アルピナは、その遥か上を行く雲上ブランドといえるでしょう。あまりに素晴らしい体験に、ただただ唖然とさせられました。BMW 5シリーズに1000万円を追加する価値は確かにあるどころか、これで2000万円はバーゲンプライスかもしれない! いつかはアルピナオーナーに……。試乗を終えてから、そのような世迷言を思う今日この頃です。

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