スマホの料金を抑えるために、今春にさまざまな新プランの登場したMVNOの格安SIMは有利。ただし通話機能については、通話定額や安くするためには専用アプリが必要だったり、音質の問題で不利な部分もある。しかし、専用アプリ無しに通話定額や高音質通話に対応した格安SIMがある。それが日本通信とHISの協力でサービスを提供している「HISモバイル」だ。
HISモバイルは日本通信との協力でサービスを提供
HISモバイルは旅行会社でおなじみのHISの子会社によるサービスだが、その子会社の共同出資者である日本通信のものがベースになっているようだ。
HISモバイルの特長としては、日本通信のサービスと比べて、通信量を抑えれば最低料金を安くすることができるなど、選択肢がより多く用意されていることがある。
今回契約したのは6月に開始された「格安ステッププラン」。通信量が1GBであれば月590円。そこから1GBあたり275円で追加が可能。また、あらかじめ月3GBに設定しておくと月790円、月5GBなら月1190円となる。さらに通話定額は1回5分までの通話がかけ放題の「5分通話かけ放題」のオプションがあり、月700円だ。
ちなみに、日本通信のサービスと比較すると「合理的みんなのプラン」が比較的近い。「合理的みんなのプラン」は月6GBと月70分の無料通話分が付いて月1390円。1回5分までの通話定額よりも、月70分までが合っているのなら日本通信も魅力的。両者ともに無料通話分を超えた場合でも30秒あたり11円と、通常の通話よりも安価だ。
そして、日本通信とHISモバイルには音声通話を重視する人に便利なポイントがある。MVNOの格安SIMながら、専用アプリを使わずとも、通話定額や安価な通話料、そして高音質な通話が実現されている点だ。
格安SIMから安く発信するには一般的に専用アプリが必要
また中継電話でどうしても音質的に見劣りする
現在携帯電話の一般的な通話料は、30秒あたり22円と3大キャリアと格安SIMで横並び状態。3大キャリアであればそこから通話定額が適用してかけ放題になったり、格安SIMでは別の電話会社を中継させることで通話定額や低料金が実現されている。
このとき別の電話会社を中継させるために、通常の電話番号の前に指定された番号を追加する(プレフィックス)必要がある。この作業を自動的にしているのが専用アプリで、その場合だけ通話定額が適用されたり、通話料は30秒11円と安価になる。
注意が必要なのが着信履歴から発信する場合。そのまま標準の通話アプリから発信してしまうと、本来の30秒あたり22円の料金になったり、通話定額の対象外となってしまう。
これではユーザーが不便なうえに、格安SIMにとっては競争上で不利ということで、総務省での議論などの結果、2021年になって3大キャリアがMVNOを対象に「プレフィックス番号自動付与」というサービスを提供開始した。これはキャリアの設備側で自動で番号を追加するというもの。OCN モバイル ONE、LIBMOなどが採用して、すでに専用アプリを使わなくても通話定額や低料金が可能になっているほか、年内での対応を予定している事業者も多い。
ただ、それでも中継電話の仕組みを利用するケースでは不利な点がある。それが音質面でHD通話にならないのだ。現在、携帯電話間の通話は同一事業者にとどまらずクリアで高音質な「VoLTE(HD+)」になることが多く、従来より会話がしやすい。しかし中継電話では経路が別になるため高音質通話にならず、昔ながらの携帯電話の音質となってしまう。
専用アプリで定額通話、高音質通話、それで料金が安価
説明が長くなってしまったが、HISモバイルは格安SIMなのに、専用アプリや電話番号の前に番号を追加しなくても、通話定額や通話料が安く、しかもクリアなVoLTE(HD+)の通話が実現されている。
なぜ、これが可能かというと、日本通信がドコモの音声通話の卸料金の値下げを見込んで、通常の通話機能のまま料金を安くしたためだ。今年に入り、実際の音声卸料金が決まったが、他のMVNOは追随せず(上記の「プレフィックス番号自動付与」と中継電話の組み合わせを選択)、日本通信とHISモバイルが専用アプリ無しでの安価な通話料と高音質通話を提供している形だ。

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