夢の技術! 自動運転の世界第33回

自動運転の基礎 その27

日本の自動運転技術を支えるプロジェクト 「SIP第2期 自動運転中間成果発表会」が開催

文●鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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内閣府による国家プロジェクト
「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」とは?

 2021年3月25~26日に「SIP第2期 自動運転 中間成果発表会」と「社会受容性シンポジウム/地域自動運転サミット」が東京・有明にて開催された。

SIP第2期 自動運転 中間成果発表会にて、展示された自動運転の認識技術の開発車両

 SIPとは「戦略的イノベーション創造プログラム(Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program)」の略で、内閣府がリードする国家プロジェクトだ。社会的課題や日本経済再生を科学的イノベーションの実現で達成することを目標とする。ポイントは、政府の旗振りにより産官学が協力すること。メーカーだけではできない、社会全体の変革を狙っている。

 その第1期は2014年度から11の課題でスタートし、2018年度より第2期に突入した。課題は、サイバー空間基盤技術に始まり、セキュリティから材料、光・量子技術、バイオ・農業、エネルギー・環境など、幅広いものとなる。その中には自動運転も含まれており、自動車メーカーをはじめ、大学、公的研究機関などが研究・開発に携わっている。

SIP第2期 自動運転 中間成果発表会にて、東京臨海部実証実験を報告する大モニター

SIP第2期 自動運転 中間成果発表会にて展示された、自動運転の社会実装の実証実験に使われた車両が展示されていた

自動運転の実証実験に使われたのはヤマハが自動運転用に開発した電動カート

 実際のところ、自動運転の実用化には技術の進化だけではなく、法制度の整備や社会の受容性も必須だ。つまり、自動車メーカー単体では難しい。SIPのような、産官学を含むオールジャパン体制ができて初めて実用化が見えてくるのが自動運転なのだ。

 2014年度にスタートした第1期SIPでは遠い目標として「2020年のレベル3の自動運転、2025年のレベル4の実現」を掲げ、現実的なステップとなる「ハイエンドなレベル2の実現」のための協調領域の研究開発が進められた。

 2018年度から始まり、2023年度まで続く第2期では「自動運転の実用化を高速道路から一般道へ拡張するとともに、自動運転技術を活用した物流・移動サービスの実用化」が目標とされている。具体的に以下の目標が掲げられている。

・オーナーカー 2025年めどに高速道路での完全自動運転(レベル4)、一般道における運転支援技術の高度化(レベル2)

・移動サービス 2020年までに限定地域で無人自動運転(レベル4)

・物流サービス 2025年以降に高速道路でトラック完全自動運転(レベル4)

 この目標を実現するための協調領域技術の確立と、実証実験での確認、社会実装への目途が計画されているのだ。

 ところがこの計画が降ってわいたコロナ禍で、急ブレーキをかけられることになった。研究・開発の物理的な支障だけでなく、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを大々的なお披露目の場として考えていたのが、すべて流れてしまったのも大きなダメージとなったのだ。

SIP第2期 自動運転 中間成果発表会にて展示された、視野障がい者を支援する高度運転支援システムの研究のブース。視野障がいを仮想体験できる機材が用意された

 そうした状況下で開催されたのが、今回の「SIP第2期 自動運転 中間成果発表会」である。

 用意されたパンフレットには、プロジェクトを牽引するSIP自動運転プログラムディレクターの葛巻清吾氏による「残念ながら、新型コロナウイルス感染症の拡大により、オリンピック、パラリンピックが延期になるとともに、東京臨海部実証実験も一時中断になるなど、さまざまな影響が出ています。このような困難な中においても、技術開発、制度整備、社会的受容性の醸成に取り組んでいます。そこで3年間の成果を皆さんにご覧いただき、様々なご意見を反映しつつ、残り2年間を進めていきたいという思いから、このようなイベント企画しました」という説明がある。こうしたイベントがあることで、プロジェクトのアピールだけでなく、研究開発を行なうメンバーへのモチベーションアップ効果も期待できるはずだ。

SIP自動運転プログラムディレクターの葛巻清吾氏

社会受容性シンポジウム/地域自動運転サミットは、TOC有明コンベンションホールWESTにて開催された

 今回の発表は「SIP第2期 自動運転」の名のもとに進められている研究・開発の内容を展示する「SIP第2期 自動運転 中間成果発表会」と、別会場で実施された「社会受容性シンポジウム/地域自動運転サミット」の2本立てとなっていた。副題に「未来を変える自動運転ショーケース」とあるように、自動運転実現のために必要とする研究・開発、実証実験、提言などが、幅広く用意されていることが特徴だ。

 中間成果発表会の展示は、会場を5エリアにわけ、入口の「Society5.0と自動運転」から順路が始まり、「自動運転社会の実現を目指す技術」「自動運転の社会実装」「人と親しむ自動運転」「社会を見据えたSIP自動運転」というテーマごとにSIPによる研究・開発の成果を紹介するものであった。

社会受容性シンポジウムでのQ&Aセッションの様子。モータ―ジャーナリストの清水和夫氏がモデレーターを務めた

社会受容性シンポジウムの中で、本格運用を開始する福井県永平寺自動運転出発式のテープカットセレモニーが実施された

 展示数は30以上。パネルやモニター表示だけでなく、研究開発に実際に使用した車両や器材も数多く持ち込まれ、さらには研究員自体による説明スタッフも用意されていた。また、1時間ほどの無料のガイドツアーも実施されていた。一通り目を通せば、自動運転の研究開発の最前線を知ることができる内容となっていたのだった。

 その後、別会場で開催された「社会受容性シンポジウム/地域自動運転サミット」では、この日から本格運用がスタートする福井県永平寺への自動運転出発式が現地と東京を結ぶオンライン形式で実施。全国各地の自動運転に関連する取り組みや、次世代公共交通システムの紹介など、盛りだくさんのディスカッションが行なわれたのであった。

東京の有明の会場と、福井県永平寺のイベント会場をオンラインで結び、試乗レポートなどが公開された

■関連サイト

筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 

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