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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第137回

アップルはなぜHomePodの製造を終了したのか

2021年03月30日 09時00分更新

文● 松村太郎 編集● ASCII

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●HomePod miniは(現状)HomePodを代替しない

 HomePodには6つのマイクと7つのツイーター、そして1つの大きなウーハーが搭載され、A8チップによって空間からの音のフィードバックを得ながら音場設計をすることができる、非常に意欲的な新しいオーディオデバイスでした。

 しかし状況は悪化を続けます。HomePodの登場でスマートスピーカー勢も高音質化が進み、アマゾンはEcho StudioとともにAmazon Music HDを開始。SONOSも音声アシスタントに対応するSONOS Oneを発売しました。テクノロジー的な優位性は維持しましたが、「高音質」というマーケティングは通用しなくなり、残ったのは349ドル、値引きされても299ドル(約3万2800円)という高価格のみ。

 そしてアップルは2020年のホリデーシーズン向けに、HomePod miniを99ドル(1万800円)で発売しました。ステイホーム需要を背景に好調さが伝わってきます。しかしHomePodはドライバー1つ、空間認識フィードバックなし、ウーハーなしなど、HomePodのオーディオへのこだわりぶりに比べると、だいぶ見劣りする仕様です。

 マーケティング上では「コンピュテーショナルオーディオ」というキーワードを使っていますが、HomePod miniではデジタルの音楽データを再生する部分での最適化程度の話で、空間認識やステレオの振り分けなどの処理はしていません。ドライバーは1つですから……。

 それだけにHomePodの製造終了は非常に残念なニュースでした。しかしこのままアップルのホームオーディオのチャレンジはしぼんでいくのでしょうか?(続く)

 

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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