顧客専有リージョンから強力なエッジノード、顧客コントロールの効くVMware環境まで「包括的」戦略を強調
オラクル、最新エッジノードも含むOCIハイブリッド戦略を説明
2021年03月22日 07時00分更新
日本オラクルは2021年3月16日、「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」のハイブリッドクラウド戦略に関する記者説明会を開催した。今年2月に発表したエッジ向けクラウドソリューション「Oracle Roving Edge Infrastructure」、顧客専有の仮想化環境を提供する「Oracle Cloud VMware Solution」なども含め、この数年間で大きく進化した包括的なハイブリッドクラウドポートフォリオをアピールした。
OCIの“顧客専有リージョン”、海外では政府/公共系での採用も進む
日本オラクル 常務執行役員 テクノロジー事業戦略統括の竹爪慎治氏は、OCIが持つ特徴の1つとして「顧客のハイブリッドクラウド戦略に対する完全なサポート」を挙げた。「Oracle Cloudの機能は、パブリッククラウドでも顧客データセンターでも場所を問わず提供できる」(竹爪氏)。
それを実現するのが、デプロイメント(展開)のサイズとネットワーク接続環境に応じて展開する、ハイブリッドクラウドのサービスラインアップである。
まずOCIのパブリックリージョンは、2021年1月現在で世界29リージョンまで拡大している。エンタープライズ顧客のDR要件に対応するため、日本の東京/大阪を含めて同一国/地域内での複数リージョン化を進めているほか、Oracle CloudとMicrosoft Azureのリージョン間相互接続も主要6リージョンで実現している。
このパブリックリージョンと同等の“顧客専有リージョン”を提供するのが、2020年7月に提供開始した「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」である。顧客データセンターのケージ区画内でオラクルが設置/運用するOCIリージョンであり、パブリックリージョンで提供されるOCIと同じサービス(およびOracle CloudのSaaS)が、同じSLAで利用できる。課金体系も従量課金型だ。
「Dedicated Regionでは現在、65以上のサービス(SaaSを含む)を利用可能だ。昨年の(Dedicated Regionの)リリース以降、OCIのパブリックリージョンでは12の新サービスを追加しているが、それらもすべてDedicated Regionで利用できる」(竹爪氏)
昨年のDedicated Region提供開始時には、野村総合研究所(NRI)が世界初の導入顧客として発表された。ビデオコメントを寄せた野村総合研究所(NRI)常務執行役員の竹本具城氏は、Dedicated Region採用により実現したアドバンテージとして、「オンプレミスの高可用性を維持しつつアジリティも実現すること」「パブリッククラウドサービスながらも高度な金融統制(ガバナンス)が維持できること」「オンプレミス環境の運用リソースが大幅に軽減されること」の3点を挙げた。
同社では2020年10月からDedicated Regionの利用を開始、各種ビジネスプラットフォームの移行に着手しており、今夏にはその第一弾がサービス開始予定だという。さらに、Dedicated Regionセカンダリサイトの導入も前倒しで進めており、2021年10月からの利用開始を計画していることを明かした。
なおNRI以外にも、オマーン政府が導入して120以上の政府/準政府機関のIT運用を標準化したり、オーストラリアのデータセンター事業者(ADC:Australian Data Centres)が同国政府向けのクラウドサービス提供のために導入したりと、グローバルでは特に公共分野での採用事例が続いているという。竹爪氏は「日本市場においても、金融だけでなく公共系など、従来のパブリッククラウドでは実現が難しいパフォーマンス、セキュリティ、データ主権の要件を持つ顧客に対して、積極的に展開したい」と語る。
続いては「OCI Exadata Cloud@Customer」サービスだ。顧客データセンター内に設置した「Oracle Exadata」をオラクルが運用管理するもので、Dedicated Regionほど大規模ではないが、こちらでも高いパフォーマンスやセキュリティ、データ主権といった要件に対応する。
「Exadata Cloud@Customerは数年前から提供しているが、継続的に進化を続けており、たとえばこのExadata上で『Autonomous Database』を動作させることで、完全に自律運用化されたデータ管理サービスを提供したり、最新のパーシステントメモリを活用して、格段に高性能なOLTPやデータウェアハウスのワークロード処理を実現できる」(竹爪氏)
GPUも搭載の強力なエッジノード「Roving Edge Infrastructure」が登場
これらに続いて今年2月に発表されたサービスが、Oracle Roving Edge Infrastructureである。これはOCIの基本サービス(コンピュート、ストレージ、データベース)をエッジ環境において提供するものだ。3Uサイズのショックマウントケースに格納されており、40コアOCPU(80 vCPU)、512GBメモリ、「NVIDIA T4」GPU、物理容量61TBのNVMeストレージを内蔵する。
データソースの近くに設置して低レイテンシでのデータ処理を実現するほか、ネットワーク接続ができない(または安定しない、低速な)環境においても動作する点が特徴だ。ネットワーク接続が回復した際に、蓄積したデータをクラウドのオブジェクトストレージと自動同期する仕組みも備える。想定される活用例としては、病院や工場、農場、船舶、防衛、災害現場などを挙げている。利用価格は1日あたり160ドル。
「このデバイスも拡張性を持っており、シングルノードだけでなく5~15ノードのクラスタ構成もとれる」「他社製品といちばん違うのは性能だ。(多コアの)OCPUや大容量ストレージ、さらに機械学習で必要とされるGPUも提供できる」(竹爪氏)
オンプレミスと同等の高い管理レベルを実現する「Oracle Cloud VMware Solution」
ハイブリッドクラウドの文脈で、もう1つ紹介されたのが「Oracle Cloud VMware Solution(OCVS)」だ。
オラクルがヴイエムウェアのVCPP(VMware Cloud Provider Program)パートナーとなり、OCIのベアメタルインフラ上に「VMware Cloud Foundation(VCF)」を配置して提供するこのソリューションは、2019年9月に発表され、日本では昨年8月から提供を開始している。
竹爪氏は、VMware環境の「管理レベル」という観点からその特徴を説明した。vSphere環境そのものの管理者権限を持ち、アップグレードやパッチ適用のタイミング、データの暗号化キー、メタデータなどをすべて顧客側で管理したいという「管理レベルの高い」要件に対応しつつ、パブリッククラウドが持つ拡張性や柔軟さ、コストメリットも享受できる、というものだ。
現在、OCVSはほとんどのリージョン(計24リージョン)で利用可能となっており、前出のDedicated Regionにも展開できる。また拡張性の点では、3~64ノードまで拡張可能だ。さらに、Oracle Cloudが提供する65以上のクラウドサービスとの連携ができると紹介した。
まとめとして竹爪氏は、オラクルのインストールベースを考えるとハイブリッドクラウド戦略が重要な顧客が多く、OCIはそうした顧客に対して「最も包括的な」ハイブリッドクラウドソリューションを提供できると強調した。