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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第113回

個人投資家がヘッジファンドに痛手負わせた「ゲームストップ騒動」

2021年02月08日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 最近はほとんど見かけなくなったが、少し前まで日本の商店街にもゲームソフト店があった。任天堂やソニーのゲーム機やソフトが、パッケージで売られている。

 アメリカにはいまも「ゲームストップ」という企業が各地のショッピングモールなどに店を出しているが、この企業の株をめぐる大きな騒動が起きている。

 新型コロナの拡大で、リアルの店舗は店を開けられず、ユーザーたちはオンラインでゲームソフトを買う。

 いまどきリアル店舗のゲームソフト店にどれだけの需要があるのかと首をかしげてしまうが、2021年1月26日、ゲームストップの株価が突然急上昇した。

 大量の買いを仕掛けたのは、大勢の個人投資家たち。SNS上でゲームストップ株を買うよう声をかけあった。

 一方で困ったのは、ゲームストップ株の下落を予測し、空売りを仕掛けるヘッジファンドたちだ。

 アメリカの株式市場で起きたこの出来事は「ウォール街vs個人投資家」の構図で盛り上がり、さまざまな議論を呼んでいる。

●空売りとショートスクイーズ

 このニュースを理解するうえで、押さえておきたいキーワードとして「空売り」と「ショート・スクイーズ」が挙げられる。

 アメリカの掲示板サイトReddit(レディット)に掲載された投稿が参考になる。

 この投稿は、バナナを売買するサルとヘビの駆け引きで今回の出来事を簡潔に説明する内容だ。以下、この投稿を参考に説明を試みる。

 現在、バナナには5房で10ドルの価格がついている。

 この話には、サルとヘビ、バナナとお店が登場する。

 今回、アメリカの株式市場で起きた出来事としては、このサルはRedditに集う個人投資家で、ヘビはヘッジファンドにあたる。

 バナナは株、お店は株式市場に置き換えられる。

 サルは、バナナを5房持っている。

 バナナが値上がりするといいなと、サルは思っている。お店に買い取ってもらえば、もうけを得られるからだ。

 ヘビは少しの間、バナナを貸してくれと頼む。実はヘビは、今後バナナの価格が下がると予測している。

 10ドルでバナナ5房を借りたヘビは、すぐにバナナを10ドルで売り、しばらく待つ。

 バナナの価格が下がって5房で5ドルになれば、ヘビは店から5ドルでバナナを買ってきて、サルにバナナを返す。

 するとヘビは、バナナの価格が下がった分もうけを得ることになる。

 いろいろと説明不足はあるが、これが空売りの基本的な仕組みだ。空売りは英語で「ショート」と呼ばれている。

 サルは、ヘビの目論見に気づいたが、莫大な資金力を持つヘビに、自分だけでは対抗できない。そこで、ほかのサルたちに呼びかけて、お店で売られているバナナを買い占めることにした。

 バナナを買い占めてしまえば、ヘビがバナナを返したいときには、サルたちから買うしかない。そうなれば、バナナの価格は上昇し、ヘビが損をする一方で、サルたちはもうけを得ることができる。

 これが、個人投資家たちが使った「ショート・スクイーズ」という手法だ。

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