●2021年の課題解決
M1搭載のMac各モデルは、シングルコア、マルチコアともにデスクトップの上位モデルに匹敵する処理性能を実現し、特にビデオ処理で大きなパフォーマンス向上が認められて、グラフィックス性能の伸び悩みからWindowsプラットホームに流れていたビデオグラファーを再び惹きつける魅力を発揮しました。
価格面でも、現状手に入るIntelチップ登載の上位モデルの性能をエントリーモデルで実現している点から、性能対価格比では値下がりしたと見ることもできます。バッテリー持続時間は実利用で大幅に伸びており、たとえば文書作成の業務なら2日に1度の充電十分、という、今まで手に入らなかった価値を実現できました。
しかし刷新された製品群を見ると、あくまでエントリーグレードをApple Siliconに置き換えたに過ぎません。そのため、特に性能を求める用途においては、M1搭載のMacではまだリプレイスができたとは言えません。具体的にはプロセッサの速度、グラフィックスのパフォーマンス、メモリの増設、現状2つしかないThunderbolt / USB 4ポートの数などがこれに当たります。
Apple Siliconのロードマップについて、アップルは明らかにしていませんが、恐らくApple Siliconとして、2021年はミドルレンジ、2022年の最終年度にハイエンドのチップをリリースしていくことになるのではないか、という予想は容易です。
特に2022年は、Mac Pro(2019年モデル)の最上位モデルに搭載されている2.8GHz(ターボブースト時4.4GHz)のIntel Xeon W、28コア、56スレッドのパフォーマンス、Geekbench 5のマルチコア20000前後を明確に上回る必要があります。ちなみにM1搭載のMacBook AirはMac Proのベースグレード(3.5GHz 8コアIntel Xeon W)と同等のGeekbench 5マルチコアスコアである7500前後を実現しています。
ただし2022年はハイエンドだけではなく、2020年にリリースしたM1の刷新も必要になっていくことから、これまでIntelまかせだったMacの心臓部の発展計画をいかに円滑に進められるのか、その舵取りも注目です。その原動力となるのが、スマートフォンの分野で協業関係を強化してきたTSMCです。7nmプロセス、5nmプロセスのAシリーズチップをいち早くスマートフォンに搭載しており、M1もTSMCの5nmプロセスで作られています。
今後、TSMCは5nm+に移行し、従来の5nmプロセスに比べて処理速度7%向上、消費電力15%を抑えられ、低コストで高性能化をはかれるとしています。2021年上半期に量産が開始されるとの見通しが出されていることから、ミドルレンジのMac、そして2021年モデルのiPhoneには、5nm+で製造されるプロセッサが採用されると予測しています。
さらに、TSMCは微細化を進めていく計画で、4nm、3nmそして、2023年の3nm+まで、アナウンスしています。
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