今年の一番良いクルマを自動車メディアが選出する「2020-2021 日本カー・オブ・ザイヤー」にて、プジョー「208」が「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれました。208は、プジョーの主力モデルとなるコンパクトハッチバックです。日本においては2020年7月2日から最新型の208が発売されました。プジョーとは、どんなブランドなのか。208の系譜はどのようなものなのか。そして、最新208はどんな内容なのかをレポートします。
ドイツ勢と肩を並べる欧州の重要ブランド「プジョー」
プジョーはフランスの自動車メーカーです。プジョーの価値は、まずそこにあります。現代の日本にいると、外車といえばドイツ車というイメージが強いはず。メルセデス・ベンツもBMWもフォルクスワーゲンもアウディもすべてドイツ車です。しかし、世界を見渡せば、ドイツ以外の国々にもたくさんの自動車メーカーがあり、それぞれの個性と魅力を備えているのです。
そんな数多くの自動車メーカーの中でもプジョーは、トップクラスの歴史を誇ります。プジョーの誕生は1810年。ガソリン・エンジンの自動車がダイムラーとベンツによって発明されたのは、1886年ですから、プジョー創立は、その70年以上も前のことだったのです。元は家族経営の製鉄業として生まれました。今も使われるプジョーのライオンのエンブレムは、高品質の鉄製品をイメージさせるものとして、この頃から使われています。
その後、プジョーはコーヒーミルや自転車などを手掛けますが、1890年にガソリン・エンジンを搭載した自動車を4台製作し、それを販売しました。そして、これが世界で初めての自動車の量産となりました。実は同年に同じフランスのパナール(1960年代にシトロエンに吸収されています)も自動車を量産しています。一方、自動車を発明したダイムラーとベンツは、まだ量産には及んでいませんでした。つまり、現存する自動車を量産する企業としては、プジョーが最古と言えるのです。ちなみに、プジョーとパナールが最初の量産車に使ったのは、ダイムラーのエンジンだったというのもポイントです。技術はドイツが先行しましたが、それをビジネスに昇華させたのがフランスだったのです。
その後、プジョーは、さまざまなクルマを世に送り出します。特徴的だったのは、大衆車を中心に作ったこと。また、積極的にモータースポーツに参戦したことも、プジョーの個性でしょう。
そもそも、プジョーを擁するフランスはモータースポーツが古くから盛んな国。F1やWRCをはじめとするモータースポーツの総元締めであるFIA(国際自動車連盟)があるのもフランス。世界三大レースと言えば、「モナコ・グランプリ」、「インディ500」、「ル・マン24時間レース」の3つですが、モナコ公国があるのはフランスですし、ル・マンはもちろんフランス。つまり、世界三大レースのうち2つがフランス関連のイベントです。さらに、ダカール・ラリーもフランスで生まれたイベントです。
プジョーは、そんな国のブランドですから、WRCやル・マン24時間レース、ダカール・ラリーで大活躍しています。そして、そうしたモータースポーツの活躍を知ったファンが納得するような、ワクワクするスポーティーな走りのモデルを数多く発売してきました。
そして、もうひとつのプジョーの特徴は、デザインを重視しているところです。1960年ごろからプジョーは、イタリアのカーデザインの巨匠である「ピニンファリーナ」にデザインを委任し、美しくエレガントなクルマを数多く作りだしています。現在は、社内デザイナーに変わりましたが、デザイン面に優れるという伝統は今も守られていると言っていいでしょう。
まとめると、プジョーは優れたデザインとスポーティーな走りが魅力な大衆車ブランドです。輸入車ではあるものの、プジョーのクルマはお金持ち限定ではなく、普通の人でも手の届く価格帯というのも大きな魅力です。
20×シリーズの伝統的な価値とは
プジョーの車名は3桁の数字を使います。最初の数字が車格(サイズ)、真ん中は0、最後は世代を意味しています。車名に3桁の数字を使うのは、1929年に登場した201から続く、プジョーの伝統です。208であれば、下から2番目の車格(Bセグメント同等)の第8世代モデルとなるのですが、実際のところ2010年代になってプジョーは車名ルールを変え、20×シリーズに関しては先代で3桁目が進むことがなくなり、208で足踏みをしている状況。つまり、2020年に登場した新しい208は、9世代モデルとなります。
プジョーのラインナップで、一番小さなモデルが108で、その上のBセグメントに208、そしてCセグメントに308、その上のDセグメントのセダンが508となります。108と208、そして308はハッチバックを基本としています。
そんなプジョー・ラインナップの中で、20×のシリーズは過去から現在までベストセラーモデルとして、プジョーを支えてきました。1983年に誕生した205は、WRCやパリ・ダカールラリーで大活躍し、フランスで史上最高に売れ、そして最も数多く輸出されたフランス車となったのです。このモデルは通称「砂漠のライオン」と呼ばれ、またしなやかな足回りは「猫足」とも称されたのです。
その次のモデルである206は、日本で1999年に発売されて大ヒットしました。このヒットにより、2000年から2006年にかけて日本におけるプジョーの販売は、毎年1万台を超えるほどでした。ただし、次世代の207と先代の208の人気はそれほど高まらず、プジョーの日本での年間販売台数は年間5000~7000台に甘んじることに。この20×シリーズの人気が、プジョーの販売を大きく左右していたのです。
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