Einstein Analyticsが「Tableau CRM」へ、アーキテクチャ統合を進めシームレスな環境を目指す
SalesforceとTableau、両社アナリティクス製品の統合を説明
2020年11月30日 07時00分更新
セールスフォース・ドットコム(Salesforce)とTableau Softwareは2020年11月24日、10月開催のTableau年次カンファレンスで発表された、両社データアナリティクス製品の統合計画に関する記者説明会を開催した。Salesforceの既存アナリティクス製品「Einstein Analytics」がTableauブランドに統合され、「Tableau CRM」という製品名になる。このTableau CRMも含めた両社製品の統合や戦略について説明がなされた。
CRMプラットフォームに両社の強みを統合して提供へ
説明会ではまずSalesforceの林淳二氏が、Salesforce製品全体におけるTableauブランド、およびTableau CRMの位置づけについて説明した。
Salesforceでは、顧客情報を中心に据えて、営業、サービス、マーケティング、コマース、ITといった各部門を連携させることで、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するCRMプラットフォーム「Salesforce Customer 360」を提供している。顧客に対する360°シームレスなサポートを実現することで、長期の信頼関係構築を目指すものだ。
このプラットフォームにはアナリティクスの機能も統合されており、これを強化する目的でSalesforceはTableauを買収した。2020年4月の両社正式統合後、SalesforceではCustomer 360を含むSalesforce製品、さらにiPaaSのMuleSoftやデジタルマーケティングツールのDatoramaといった製品との連携強化を進めている。
そして新たに発表されたのが、TableauとEinstein Analyticsを統合したTableau CRMである。Tableauが持つ視覚的な分析と検索の機能と、Einstein AnalyticsのSalesforceネイティブでAI/機械学習も活用できる機能を統合した、顧客情報の分析プラットフォームを提供するという。
Tableau CRMの詳細については、Salesforceで同製品のプロダクトマーケティングを担当する岩永宙氏が説明した。
岩永氏は、Tableau CRMはSalesforceのCRMとネイティブに統合されているため、CRM内からビジュアルな分析結果を参照できること、将来予測などのAI機能があらかじめ組み込まれていること、プラットフォームが備えるセキュリティ(ユーザー権限など)機能がそのまま使えるといった、シームレスな活用が可能だと説明する。また、Salesforceプラットフォーム上で稼働するさまざまな業種/業界向けソリューションとの連携も容易だ。
Tableau CRMの業種/業界向けソリューションとしては、セールスやコールセンター、また消費財や金融サービス、製造業、ヘルスケアといったものがラインアップされており、各領域に応じた予測/分析のテンプレートが利用できる。その一例として岩永氏は、金融サービス向けの「Tableau CRM for Financial Services」を紹介した。
これは、Salesforceが金融業向けに展開する「Financial Services Cloud」のデータを活用し、契約解除リスクが高い顧客を特定するなどして迅速なアクションにつなげるものだ。金融に特化したアナリティクス機能があらかじめ用意されており、複雑な作り込みをすることなくすぐに活用して成果を出せる。また年3回のアップデートで新機能が追加されていくため、イノベーションの促進にもつながるとする。
「Tableau CRM for Financial Servicesでは、金融サービス組織全体の主要ペルソナに対し、インテリジェンスを提供するもの。全世界の金融機関顧客からの要望の75%以上をカバーすることを目的として、50以上のダッシュボードと20以上のデータセット、100以上のKPIがあらかじめ用意されている。ローレベルのインテリジェンス導入に1年以上悩んでいた企業が、この製品を数週間で導入して、実用を開始した事例もある」(岩永氏)
なお、幅広いデータ/ユースケースをカバーする従来からのTableau製品(「Tableau Desktop」など)についても、Tableau CRMと並行して引き続き提供される。岩永氏は、ユースケースに応じて両製品を選択していただきたいと語った。
双方のユーザーがシームレスに使えるアーキテクチャへと進化
Tableau Software カントリーマネージャーの佐藤豊氏は、Salesforceによる買収以後も、Tableau創業以来の「誰もがデータを見て理解できるようにする」というミッションは変わっておらず、むしろ加速していることを「確信している」と語る。
「両社はデータでつながれた“オハナ(※ハワイ語で家族、仲間の意味)”だと考えている。Salesforceは顧客を中心に、そしてTableauは人を中心に考え、ビジネス展開をしており、そうした考えから作られた両社の文化には共通点が多く、親和性が高い。非常に良いコラボレーションが進んでいる。TableauとSalesforceは、業界で最も幅広く深いデータと分析のプラットフォームを開発、提供していきたい」(佐藤氏)
Tableauでは今後、4半期ごとのアップデートにおいてアーキテクチャの統合を進め、双方が持つ長所を組み合わせたアーキテクチャへと進化させ、同時に双方のユーザーがシームレスに利用できる製品にしていく方針だという。
「アーキテクチャの統合により、TableauからSalesforceデータへのネイティブアクセス、その逆にEinstein AnalyticsからTableauのデータ利用ができるようになり、適切な場所で管理されたデータが使える。また、どちらにあるデータに対してもPrep(準備処理)ができる。そして、一度作成したコンテンツはSalesforceでもTableauでも参照が可能になる。さらに、AIがデータからインサイトを導き出すSalesforceの『Einstein Discovery』についても、Tableauから利用できるようになる」(佐藤氏)