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あらゆるクラウドでアプリを動かす「Hyperforce」、ワクチン接種を支援する管理アプリなど披露

Slack買収は“Cloud 3.0”への戦略、SalesforceベニオフCEOが語る

2021年02月16日 07時00分更新

文● 末岡洋子 大塚/TECH.ASCII.jp

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 米Salesforce.comは2021年2月10日、オンラインイベント「Salesforce World Tour」を開催した。同社 会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏、プレジデント兼COOのブレット・テイラー氏らが登場し、“Cloud 3.0”と呼ぶ新たな戦略とSlack買収の関係や、新しいアーキテクチャなどを語った。また、各国における新型コロナウイルスワクチン接種を支援する管理アプリケーションについても、デモをまじえながら紹介した。

Salesforce.com 会長兼CEOのマーク・ベニオフ(Mark Benioff)氏。シンガポールからスピーチを行った

「5年後には世界第2位のソフトウェア企業へ」強い自信を見せる

 言うまでもなく、2020年は新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって世界中の人、企業/組織、政府が大きな変化を強いられた年だった。苦難の1年を終え、新たな会計年度(2022年度)のキックオフイベントを開催するにあたって、ベニオフ氏はシンガポールからスピーチを行った。シンガポールは、これから目指すべき「未来のモデルが機能している」と考えたからだという。

 「過去は過ぎ去った。われわれはこれから『機能する未来』を作らなければならない。そのためには初心に返る必要がある」(ベニオフ氏)

 新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるう中、Salesforceではこれまで特徴としてきた会社としての慈善活動モデルを変革し、3000万ドルの寄付だけでなく、ロックダウン解除後の迅速かつ安全な職場復帰をサポートする「Work.com」や、各国の大規模なワクチン接種プログラムの展開を支援する「Vaccine Cloud(ワクチンクラウド)」などの開発を進めてきた。「ビジネスが変化のためのプラットフォームになり得ることを示した」と、ベニオフ氏は語る。

 業績も好調だ。売上の予測としてベニオフ氏は、会計年度2021年度は210億ドル、キックオフしたばかりの2022年度は255億ドル、そして2026年度には500億ドルになるだろうと語り、「(500億ドルに到達すれば)世界で2番目のソフトウェア企業になる」と胸を張る。

 その成長において重要な役割を果たすのが、同社が「Trailblazer(トレイルブレイザー、先駆者)」と呼ぶユーザー/開発者コミュニティだという。現在90カ国、1200万人が参加し、1300以上のコミュニティグループが誕生している。IDCの試算によると、こうした“Salesforce経済圏”は2025年までに420万人分の雇用を創出し、世界のGDPに帯するインパクトは1兆2000億ドル規模に達するという。

“Cloud 3.0”――Slack買収、Hyperforceでアーキテクチャを再構築

 それでは、Salesforceは自らの未来をどのように見ているのか。ベニオフ氏は“Cloud 3.0”と銘打ったビジョンを披露した。

 この“3.0”はバージョン番号であり、つまり世代を表している。まずCloud 1.0は、SalesforceやAmazon.comなどの、WWW(World Wide Web)によって生まれたクラウドビジネスのこと。続くCloud 2.0は、AppleやFacebookのような、モバイルとソーシャルが生み出したクラウドビジネスを指す。

 それではCloud 3.0とは何か。ベニオフ氏は、新型コロナウイルスのインパクトを受け、どこからでも働くことを可能にするクラウドビジネスだと説明する。ここでの主要企業はZoom、Slackなどだ。昨年(2020年)12月に契約合意を発表したSlackの買収は、こうしたビジョンに基づくものだ。

 「Cloud 3.0は大きなチャンスだ。どこからでも働くことができるというビジョンを実現するために、Salesforceのすべてのクラウドをトランスフォームする段階になったと認識した」(ベニオフ氏)

“Cloud 3.0”ビジョン

 この来るべきCloud 3.0の世界に向けて、Salesforceではアーキテクチャを再構築しているという。そのポイントは2つ。1つは「Slack中心」、もう1つは「任意のパブリッククラウドを土台にすることができる『Hyperforce』」だという。

 「Slackを、どこからでもコラボレーションに参加可能にするためのフレームワークとして使う。また、開発者のアプリエコシステムは『Customer 360』プラットフォームに統合され、すべての主要クラウドベンダー上で動かすことができるようになる」(ベニオフ氏)

 テイラー氏によると、新しいSalesforceプラットフォームはこのHyperforceと、すべてのクラウドで同じデータソースを利用できる「Single Source of Truth」、AIプラットフォームの「Einstein」、さまざまなデバイスを通じて体験できる「Experience」の4層で構成されるという。

「“Cloud 3.0”時代のOS」として、多様なクラウド上で動くHyperforce、Customer 360、アプリエコシステム、そしてSlackを紹介した

 Einsteinについては、すでに1日あたり830億回もの予測を実行しているという。テイラー氏は「われわれのAI(Einstein)は、コードではなくクリックで実装できる」と述べ、製品に組み込まれたEinsteinの簡単さをアピールする。

 またExperienceについては、これまでのPCやモバイルデバイスに加えて、Slackの統合によって「チャネル」が加わることになると説明した。テイラー氏は「Slackは“どこからでも働く”新しいクラウド時代のHQ(本社)となる」と述べたうえで、「Customer 360とSlackの組み合わせが、ニューノーマルで成功する方法だ」とその優位性を強調した。

 なお、Hyperforceはすでにドイツとインドで本番稼働しており、今後1年間でさらに10リージョンが稼働開始する計画だ。

ワクチン管理の「Vaccine Cloud」を披露

 同イベントでは、Salesforceが1月に発表したVaccine Cloudのデモも披露された。これは、新型コロナウイルスワクチンの接種を効率化すべく、各国の政府や保健当局、医療機関、市民などが利用するアプリケーションだ。

 市民はまず、行政が用意する専用ポータルで登録を行う。ワクチン接種が可能になったら、接種場所(会場)や時間などを選択して予約する。予約が成立すると、SMSなどを通じて本人に通知が届く。接種当日はQRコードなどを使って会場に入り、安全かつ効率良く接種が受けられる仕組みだ。

 さらに、ワクチン接種者の情報はSalesforceの「Marketing Cloud」に登録され、その仕組みを使って2回目のワクチン接種を受けるべきタイミングで案内が届くなど、“ジャーニー”の管理も可能だ。

Vaccine Cloud、市民向けのポータル画面例。ワクチン接種が可能になると、自身で接種会場や時間を決めて予約することができる

 医療機関側では、Vaccine Cloudを使って患者の健康データを確認し、既往症やアレルギーなどをチェックできる。また、予約と来場の情報を見ながら接種するワクチンを高い精度で管理することができ、保存が利かないワクチンの無駄を予防できるという。

医療機関向け画面例。ユニークな機能としては、Einsteinを使って予約者の「来場確率」を予測し、貴重なワクチンを無駄にしないためのアドバイスを提示してくれるという

 行政側では、Vaccine Cloudで収集されたワクチン接種に関する統計データをTableauでダッシュボード化し、接種の進捗状況などを視覚的に把握できる。Vaccine Cloudに外部データを取り込む必要があれば、iPaaSのMulesoftを使うこともできる。特定の地域でワクチン接種が進んでいないことがわかれば、Trailheadを通じてトレーニングモジュールを送り、その地域のスタッフトレーニングも支援できるという。

 Vaccine Cloudを導入している米イリノイ州レイクカウンティ 健康情報/技術担当ディレクターのジェファーソン・マクミラン-ウィルホイト氏は、同アプリケーションを使うことで、1会場で600人へのワクチン接種を効率的に行うことができたと報告した。

行政側のダッシュボード画面例。各地域におけるワクチン接種の進捗状況を視覚的に把握できる

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