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顧客一人ひとりに合ったロイヤルティプログラムの実行から効果分析までをカバーするSaaS

ポイント還元だけでは不十分、セールスフォース「Loyalty Management」発表

2021年05月24日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 ポイント付与などの「ロイヤルティプログラム」は、重要顧客の維持や長期的な関係構築に重要な役割を果たす。しかしその一方で、ロイヤルティプログラムに加入していても、自分が「重要な顧客」として扱われていないと感じる顧客も多いのではないか――。セールスフォース・ドットコムは2021年5月20日、こうした問題の解決を支援する「Salesforce Loyalty Management」を発表した。

「Salesforce Loyalty Management」の概要。効率的なロイヤルティプログラムの実行管理と分析に必要な機能群を備える

セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 インダストリーズ トランスフォーメーション 事業本部の今井早苗氏、同社 インダストリーズ トランスフォーメーション 事業本部 小売消費財 シニアマネージャーの国本久成氏

業種別クラウドの導入が増えている理由

 Salesforce Loyalty Managementは、顧客ロイヤリティの管理のためのクラウドサービスとなる。

 Salesforceは「Salesforce Customer 360」プラットフォーム上に、セールス、サービス、マーケティングなどさまざまなアプリケーションを構築している。Loyalty Managementは、Customer 360上の業種別ソリューションである「Salesforce Industry 360」の1サービスに分類される。

「Salesforce Industry 360」は、同社のCRMプラットフォーム「Salesforce Customer 360」上に構築された業種別ソリューション群だ

 同社 常務執行役員 インダストリーズ トランスフォーメーション 事業本部の今井早苗氏によると、日本では4年前に提供開始した金融向け「Financial Services Cloud」をはじめ、現在9種類のIndustry 360ソリューションを提供中。特徴は、その業界固有の機能を備え、業種別データモデルのインテグレーションが可能であること、さらにすぐに使えるプロセスも700以上用意していることだという。

 コア機能としてオムニチャネル、AI、アナリティクスなどを提供するため、「既存業務の再考を促し、大きなDX(デジタルトランスフォーメーション)をすることができる」(今井氏)。年3回のバージョンアップを通じて、その業界の最新トレンドに合わせた新機能をすぐに利用できる点もメリットに挙げる。

 「それまでは業務やビジネスに応じてSalesforceのインスタンスのカスタマイズが必要だったが、最近では多くの企業がIndustry Cloudを採用している」(今井氏)

従来はSales CloudやService Cloudの上に業種向け独自機能を追加する必要があった。Industry Cloudは各業界で必要なUI、ロジック、データモデルを標準機能として実装しており、迅速に利用が開始できる

Industry Cloudのラインナップ。今回、Loyalty Managementが追加されて合計10種となった。なお青字の「Communications Cloud」「Media Cloud」「Energy & Utilities Cloud」は2020年に買収したVlocityにより加わったもの

経済面と感情面の両方をサポートするLoyalty Management

 それでは、Loyalty Managementを利用することでどのようなことが可能になるのだろうか。

 同社 インダストリーズ トランスフォーメーション 事業本部 小売消費財 シニアマネージャーの国本久成氏はまず、ロイヤルティプログラムの現状について次のように課題を指摘する。

 「ロイヤルティプログラムでは『経済的で理性的な側面』と『感情的なつながりの側面』の両方を通じて消費者と接する必要がある。だが多くのプログラムが、ポイント、割引、クーポンといった経済的側面に、過度に依存する傾向がある」(国本氏)

現状のロイヤルティプログラムにおける課題

 つまり現在の顧客は、経済的側面では充足感を得られる一方で、大事な顧客として扱ってもらっているという感情面でのつながり」には不足を感じている。感情面でのつながりを強化するためには、「企業が発するメッセージ、コンタクトセンターでの応対、プログラムを通じた特別な体験など、すべての接点で一貫性のあるコミュニケーションが重要な要素になる」と、国本氏は説明する。

 さらに「ロイヤルティプログラムのパーソナライゼーションに満足している消費者は、わずか22%」というグローバル調査の結果も紹介した。顧客一人ひとりに適した対応のパーソナライズも必要な要素だ。

 ただし、そうしたプログラムを実践していくためには、顧客接点にまたがる全社的な取り組みの展開、キャンペーン予算などで必要な財務会計チームとの連動など、乗り越えなければならない課題がある。また、キャンペーン施策を実行するためには、バラバラに存在するデータソースの連携や、複数システムの調整といった作業も必要だ。

 こうしたさまざまな課題を踏まえて同社が開発したのが、今回のLoyalty Managementだ。

Loyalty Managementが提供する価値

 同サービスでは、企業が顧客のライフタイムバリュー(LTV)を改善していくために、ロイヤルティプログラムの運営機能に加えて効果分析のためのCRM、分析テンプレートも標準で備える。

 国本氏は、単にキャンペーンコストをかければよいわけではなく、販売促進費用として、その価値がきちんと企業側に還元されているかどうかを分析しなければならないと説明する。Loyalty Managementを使えば、たとえば「NPS(顧客満足度スコア)が本当に売上に貢献しているのか」「休眠会員向けキャンペーンが掘り起こしにつながっているか」「クーポンや割引が収益ロスにつながっていないか」など、実施したプログラムのパフォーマンスを多面的に分析できるという。

 また、一元化された会員情報に基づいて大規模なパーソナライズを行うこともできる。顧客の行動やポイントの消費/獲得にまつわるデータを処理する機能も搭載しており、たとえば購買時だけでなく、SNS上での行動の結果に対してリワードを付与したり、航空会社が飛行機の搭乗履歴に対して条件が異なる通貨を付与したりすることもできると説明した。

 なお、Loyalty Managementは、他のセールスフォースソリューション(Salesforce Marketing Cloud、Salesforce CDPなど)と連携することで、ロイヤルティプログラムをより一貫性のあるものにできるという。同一のSalesforceプラットフォームを基盤としていることから、システムの組み立ても容易だ。

Service Cloudとの連携によるユースケース例。ロイヤル顧客からのクレーム申し出に対して、コンタクトセンターのエージェントが会員階層に応じたポイントを付与できる

 説明会のデモでは、企業側の視点で、特定の会員階層でアクティブ状況が落ち込んでいることを受けてその階層向けにプロモーションを設定し、Salesforce CDPを使ってセグメントを作成、Maketing Cloudからキャンペーンを行う様子などが披露された。

デモ画面より。ロイヤルティプログラムの管理者はダッシュボードを使ってパフォーマンスを理解できる

ロイヤルティプログラムのプロモーション設定画面

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