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インフラ運用管理サービスの独立新会社設立、その狙いをホワイトハースト社長らが語る

IBMが分社化を説明、「真のオープンなインテグレーターに」

2020年10月23日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本IBMは2020年10月22日、同月9日に発表したマネージド・インフラストラクチャー・サービス部門の分社化と新会社設立に関する記者説明会を開催した。IBMコーポレーション 社長のジム・ホワイトハースト氏、日本IBM 代表取締役社長の山口明夫氏が出席し、この分社化の狙いや、今後のIBMと新会社との役割、関係などを説明した。

IBMコーポレーション 社長のジム・ホワイトハースト(Jim Whitehurst)氏、日本IBM 代表取締役社長の山口明夫氏

顧客データセンターインフラ運用を担う、年商2兆円規模の独立新会社

 10月9日の発表は、IBMのグローバル・テクノロジー・サービス(GTS)事業のうち、マネージド・インフラストラクチャー・サービス部門を新しい公開会社として分社化するというもの。新会社はIBMの連結対象から外れた独立会社となる。分社化は2021年末までに完了予定で、会社名は未定。

 新会社について、ホワイトハースト氏は「設立初日から(マネージドインフラサービス)市場のリーダーになる」と語った。分社化対象となる部門は115カ国に9万人規模のスタッフを展開しており、「Fortune 100」企業の75%以上を含む4600社超の顧客企業を持ち、年商はおよそ190億ドル(約2兆円)。受注残高も600億ドル(約6兆円)あり、「市場第2位の競合会社と比較して2倍」の規模だと述べる。

 「新会社は、主に顧客オンプレミス、データセンターインフラの運用サービスにフォーカスする。複雑化しているデータセンターの運用管理を、できるだけシンプルなものにすることが目的だ」(ホワイトハースト氏)

 ホワイトハースト氏は、今回の分社化は「2つの顧客トレンドに応えるもの」だと説明した。2つのトレンドとは、IBMが持つ「ノウハウ」に対するニーズの高まり、もう1つがインフラを選ばないアプリケーションや、オンプレミスインフラのモダナイズへのニーズの高まりだという。これに対応するために、新会社がマネージドサービスを担い、IBM側はさらなるイノベーションへの投資に注力するという決断をしたという。

 「IBMは、100年以上にわたる歴史の中で常に顧客の声を聞きながら変化を続けてきた。たとえばx86サーバー事業を売却したこともあれば、最近でも数多くのテクノロジー企業を買収している。顧客の課題を聞きながらIBM自身が変化し、常にテクノロジーソリューションと最高のケーパビリティを提供し続ける会社であり続けている」(ホワイトハースト氏)

データセンターだけでなく社会全体の安定稼働を支援する「水平方向」への展開

 IBMの製品/サービス事業は、大きく4領域で構成されている。メインフレームなどのハードウェアを扱うシステムズ事業、クラウドサービスおよびソフトウェアを扱うクラウド&コグニティブ・ソフトウェア(C&CS)事業、顧客事業の観点でコンサルティングやBPO、システム開発/保守サービスなどを手がけるグローバル・ビジネス・サービス(GBS)事業、そして、製品保守とインフラのマネージドサービスを行うGTS事業である。

 前述したとおり、今回分社化されるのはGTS事業の一部(TSS:テクニカル・サポート・サービスを除くGTS事業)だ。たとえばパブリッククラウドサービスの「IBM Cloud」や「IBM Watson」、「Red Hat OpenShift」と「IBM Cloud Pak」をベースとしたハイブリッドクラウドプラットフォームの構築サービス、ビジネスコンサルティングやITコンサルティングといったビジネスはIBM側に残る。

 その一方で、新会社は中立的、ベンダーニュートラルの立場で、顧客インフラの運用管理を手がけることになる。つまり、IBMの製品/サービスに限らずサポートしていくことになる。

 「IBMの外から見ると、独立したマネージドサービスの新会社が1つできるという形。ほかのパートナーからすれば、中立性のあるマネージドの会社ができるということであり、協業しやすくなるのではないか」(山口氏)

 分社化の狙いを説明するために、山口氏は、これからの世界にテクノロジーがどう組み込まれ、そこにIBM製品がどう適用されるのかを示す図を見せた。

5GやAIが組み込まれていくこれからの社会と、IBMのテクノロジーが果たす役割

 これまでは企業のオフィスやデータセンター、工場などに配置されていたアプリケーションやデータ、AIなどが、これからは広く社会の中にも浸透していく。そしてその動きは、5Gサービスのスタートやコロナ禍を背景にますます加速している。その結果、顧客企業から「この『全体』をマネージする支援をしてほしいという要望が、非常に多くなっている」と山口氏は語る。

 「従来のIBMでは、企業内のITインフラとアプリケーションを『垂直方向で』インテグレーションする、システムインテグレーターとしてのモデルをとってきた。しかし、これからはそれ以上に『水平方向の』プラットフォームを管理して、より安定な企業基盤や社会基盤を提供することが重要になる。これからの顧客や社会からの要望に応えられるモデルだと考えて、2社分割という結論に至った」(山口氏)

 大まかに要約すれば、「垂直方向」のインテグレーションについてはIBMがOpenShiftやコンテナ化されたアプリケーションで担い、それが社会の中へ「水平方向」に広がる際の安定稼働を支える運用管理を新会社が担う、ということになる。もちろん「水平方向」=社会全体に拡大するプラットフォームは1社だけではカバーできないため、新会社では各領域のパートナーとも手を組んで顧客の要望に応じていくと、山口氏は説明した。2社は互いに独立しつつ、積極的な協業も図っていくという。

 「IBMと新会社の2社は、顧客視点に立って顧客の変革を支援する、『真のオープンなインテグレーター』になるとご理解いただければよいかと思う。これまでIBMが推進してきた従来型のインテグレーターとは異なる、5Gやテクノロジーが加速するなかで新たに必要となる、真のオープンなインテグレーターを目指す」(山口氏)

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