“HCI+バックアップ”の製品統合で「データ量増大」や「IT環境の複雑化」といった課題に対応
変化するBCP/DR要件に対応、新ソリューション「Nutanix Mine with Veeam」とは
2020年10月15日 11時00分更新
近年多発する自然災害やコロナ禍などを受け、ITの事業継続計画(IT-BCP)の策定や見直しが企業の重要検討事項となっている。現在の企業が事業を継続するためには、ITの存在が不可欠だからだ。しかしその一方で、企業IT環境の複雑化と保有データ量の増大、管理者の作業負荷増大などを背景に、ITーBCPに対する要件はより厳しいものになっている。
2020年7月にオンライン開催されたNutanixのイベント「Nutanix Xperience Japan」では、Veeam Softwareの斉藤乾氏がIT-BCPやDR(災害復旧)対策をテーマとしたセッションに登壇した。斉藤氏は、旧来のバックアップ製品では現在のBCP要件に対応できないことを指摘したうえで、NutanixとVeeamが手を組んで提供する新世代のセカンダリストレージソリューション「Nutanix Mine with Veeam」のメリットを紹介した。
今回は、現在のIT-BCP要件がどう変化しているのか、そしてNutanix Mine with Veeamがその実現にどう貢献するのかを見ていこう。
企業における「IT-BCPの要件」はどう変化しているのか
斉藤氏はまず、企業ITをめぐるさまざまな環境変化のデータを示しながら、IT-BCPの要件がどう変わっているのかを説明した。
IT専門調査会社のIDCによる予測では、世界のデータ量は2018年の33ZBから、2025年には175ZBへと急増する。ZB(ゼタバイト)はPB(ペタバイト)の100万倍を示す単位であり、つまり「2025年には1億7500万PBものデータが、世界中に点在することになります」(斉藤氏)。
その大部分を占めるのが「企業が保有するデータ」だ。現在のビジネストレンドである「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の実現、そしてIoT、AI、ロボティクスといった取り組みには、膨大な量のデータを徹底的に活用する必要がある。データこそがDX時代の価値や優位性の源泉であり、そのために保有データは急増し続ける。
他方で、現在のビジネスの根幹はITが支えているため、企業が許容できる業務アプリケーションのダウンタイムはごく短いものになっている。Veeamが発表した調査レポートによると、通常のアプリケーションで許容できるダウンタイムとしては「2時間以内」が59%、さらに優先順位が高い(より重要な)アプリケーションになると「1時間以内」が52%、「2時間以内」ならば72%という回答だった。
しかし、データ量が増大する現状を考えると、この「ダウンタイムの短縮」は実現が難しい要件になる。斉藤氏は「データの増大する“ZB時代”のシステム復旧には時間がかかります」と述べ、次のような例を挙げて説明した。
「たとえば遠隔バックアップをしている環境下で、1Gbpsの帯域を使ってアプリケーションを復旧させるとすると、1TBのシステムでも単純計算で2.5時間かかります。これが10TBのシステムになるとその10倍、つまり丸一日かかってしまいます」(斉藤氏)
先ほどの調査結果から考えると、たとえ通常の業務アプリケーションであっても2時間半のダウンタイムは許容されないケースが多く、24時間のダウンタイムともなると許容される可能性はほとんどゼロだろう。
さらに、ダウンタイム(RTO:目標復旧時間)の短縮だけでなく、できるだけ直近の状態に回復できること(RPO:目標復旧時点の短縮)も重要な要件だ。アプリケーションの利用目的によっては、12時間前、24時間前の状態に戻せても意味がないものもあるからだ。
もうひとつ、ハイブリッド/マルチクラウド化というIT環境の変化も、IT-BCPに新たな要件をもたらしている。Nutanixの2019年調査によると、今後3~5年のうちに51.7%の企業はハイブリッドクラウドを、20.5%はマルチクラウドを利用する見込みだという。だが、このようにシステムの分散化が進むと、データもまた分散化してしまうことになる。
「1つのクラウドプラットフォームに依存するリスクを回避し、それぞれを適材適所で使いこなす――という発想は良いのですが、データという観点から見ると、それぞれのクラウドに重要なデータが散在してしまいます。いわば“ちぎれ雲”ですね」(斉藤氏)
そうなると、アプリケーションごとに独立、サイロ化した旧来のバックアップシステムでは仕組みが複雑化してしまい、運用管理負荷の増大につながる。その負荷を軽減するため、現在のIT-BCPには「シンプル化」や「集中管理/オーケストレーション」「自動化」といった要件も加わることになる。
新しい時代のBCP要件を満たす「Nutanix Mine with Veeam」とは
こうした新しい時代のIT-BCP要件に対応するソリューションが、Nutanix Mine with Veeamだ。まずはこのソリューションの概要を見てみよう。
Nutanix Mine with Veeamは、NutanixのHCI/クラウドOSである「Nutanix Enterprise Cloud Platform」に、Veeamのバックアップソフトウェア「Veeam Backup & Replication」を統合した製品である。両社の深いパートナーシップに基づいて開発が進められ、2020年3月から国内提供を開始している。
斉藤氏はNutanix Mine with Veeamの特徴として、「非常にシンプルで、箱から出して2時間もあればセットアップが完了すること」「複数拠点の一元管理ツールを備えていること」「クラウドライクなスケールアウトができること」の3点を挙げた。
特に柔軟なスケーラビリティは、HCIベースのソリューションならではの特徴と言えるだろう。旧来のバックアップストレージのように、「3年後にどのくらいの容量が必要になるか」といった面倒なキャパシティプランニングをする必要がなく、容量追加が必要になった段階でノード(アプライアンス)を追加すればよい。
また、Webベースの管理ツール「Nutanix Prism」のダッシュボードからNutanix Mine with Veeamのステータスが一目で確認できるよう、管理画面が統合されている。これにより、Nutanixクラスタとバックアップ状況の管理をシンプルに一元化できる。
こうしたNutanixのHCIがもたらす特徴は、新時代のソリューションとして大きなメリットである。ただし、これだけでは「RTOやRPOの短縮」「ハイブリッド/マルチクラウドへの対応」といった現在のIT-BCP要件すべてを満たすことはできない。
ここで、もうひとつの構成要素であるVeeam Backup & Replication(以下、VBR)が強みを発揮する。VBRは、オンプレミスの物理サーバーと仮想サーバー、クラウドサービスのデータを包括的にバックアップ/保護することができる、マルチプラットフォーム対応のバックアップ/データ保護ソフトウェアだ。
IT-BCP要件を満たすVBRの特徴はこのあと詳しく説明するが、Nutanix Mine with VeeamをIT環境の中心に据えることで、ハイブリッド/マルチクラウド時代の幅広いプラットフォームに対応した、柔軟かつ統合的なデータ保護/バックアップ環境を実現することができる。
IT-BCPにおける特徴1:高速かつ安全なシステムの復旧
斉藤氏は、Nutanix Mine with Veeamに組み込まれたVBRの特徴から、とくにIT-BCP要件に関わる3つを取り上げ、それを実現している代表的な機能を紹介した。
まず1つめの特徴は「高速かつ安全な復旧」だ。
前述したとおり、現在ではアプリケーションの容量規模が増大する一方で、RTO(ダウンタイム)やRPOはできるだけ短くすることが求められている。その課題を解決するVBRの機能が「インスタントVMリカバリ」だ。
これは、バックアップファイルから仮想マシン(VM)を直接起動(復旧)できる機能で、RTOを数十秒~数分レベルまで短縮できる。これにより、管理者はすばやくトラブルシューティング作業に取りかかることができ、ダウンタイム発生による業務への悪影響も最低限に抑えることができる。
またリストアの“安全”については、「Secure Restore」機能を備えている。これは、 ウイルススキャンを実行しながらリストア処理を行うという機能だ。バックアップしたシステムには、その時点では未知の脅威だったマルウェアが感染している可能性もある。最新のシグネチャでウイルススキャンを実行しながらリストアすることで、感染したシステムがオンラインになってしまうリスクを回避する。
IT-BCPにおける特徴2:クラウドの利活用をシンプルな操作で支援
2つめの特徴は「クラウドの利活用」である。
Veeamではバックアップデータの確実な保管のために「3-2-1ルール」を提唱しているが、IT-BCPやDR対策のうえでは1カ所の外部保管(オフサイト保管)が欠かせない。その保管先としてパブリッククラウドを活用することで、設備/回線/運用などのコストを大幅に軽減できる。ただし、ここで面倒な設定や運用が必要ならば、クラウド活用は進まないだろう。
VBRでは「Veeam Cloud Tier」機能を備えており、シンプルな設定を行うだけで階層化ストレージが自動運用できる仕組みとなっている。新しいバックアップデータはローカルに保持しつつ、古くなったものをクラウドに順次移行させて、全体コストを抑えることができる。長期保存の必要なアーカイブデータの保存にも適する。
ちなみに、Veeamのソフトウェアは「バックアップ対象」のVM/物理サーバー単位で課金する仕組みのため、ラウドティア(クラウドストレージ層)を追加しても、追加のソフトウェアコストはかからない。クラウドストレージの利用料金だけで利用できる点もポイントだ。
斉藤氏はもうひとつ、VBRによってマルチクラウド環境におけるモビリティも実現することを強調した。本連載でも取り上げたが、Veeamのバックアップデータ(.vbkファイル)はリストア先のプラットフォームを選ばないため、オンプレミスからクラウドへの移行、あるいはマルチクラウド間の移行にも柔軟に対応できる。「たとえば開発はAzureで行い、AWSで本番展開するといったことも簡単にできる。これからのマルチクラウド戦略に適している」(斉藤氏)。
IT-BCPにおける特徴3:有事への「備え」を支援するために
最後の特徴として挙げたのが、「有事への『備え』」を大切にしている点だ。
IT-BCPは非常時に備える“保険”のような対策だが、その導入と運用には多額のコストがかかりがちだ。そのため、IT担当者がいくら必要性を訴えても、経営層がなかなか理解を示さないことがある。また、ひんぱんに実行されるものではないため、有事の際に計画どおり実行できるかどうかのテストや訓練の実施が必要だが、業務として優先順位が低いために工数捻出や業務調整が難しい。そうした理由から、斉藤氏は「本格的なBCP対策は非常に障壁が高い」と語る。
こうした課題を解決するために、斉藤氏はIT-BCP以外の用途でもNutanix Mine with Veeamを広く活用することを提案する。利用頻度を高めれば投資に対するハードルも下がり、なおかつBCPのためだけに新たな操作を学ぶ必要もなくなる。
ここでは特に、増分ブロックだけを転送するVBRの効率的なレプリケーション機能を紹介した。VBRは、本番環境に影響を与えないバックアップデータからのリモートレプリカ、データキャッシュと重複排除によるWAN高速化といった機能も備えており、追加のライセンスコストなしで容易に運用できる。“RPOの短縮”というIT-BCP要件にもかなうはずだ。
もちろん、レプリケーションはIT-BCP以外の用途でも活用できる。たとえば新しいデータセンターへのワークロード移設において、新旧双方のデータセンターにNutanix Mine with Veeamを設置することで、低リスクかつシンプル、ダウンタイムの少ない移行が可能になる。
さらに、サイト間のフェイルオーバーだけでなくその取り消し(アンドゥ)、フェイルバック/アンドゥといったシナリオを、GUIから簡単に実行できることも紹介した。BCP/DRのテストや検証のための機能も備えており、有事に備えるためのIT-BCP訓練を、工数をかけずに実施できる。
* * *
斉藤氏はセッションのまとめとして、「今回はBCP対策にテーマを絞って紹介したが、Nutanix Mine with Veeamには、ほかにもさまざまなユースケースが考えられる」と語った。Veeamでは、単なるバックアップ/リカバリにとどまらない「クラウド・データ・マネジメント」のメッセージを掲げ、顧客企業に対してデータの有効活用に取り組むよう提案している。そのコンセプトはNutanix Mine with Veeamにおいても同じだ。
Nutanix Mine with Veeamは、単なるバックアップ/リカバリやBCP対策にとどまらない、データ活用における付加価値を提供するソリューションと言えるだろう。
(提供:Veeam Software)
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