「VISION-S」は、長い道のりの第一歩にすぎない
川西 お見せしたのが完成形ではありません。少なくとも、まだ公道を走っていませんから。これから実証実験を繰り返さないといけないと思っていて、おそらく終わりはないと思います。ですから、「VISION-S」は第一弾の実験車両という位置づけです。走らせないと、センシングの追求もできませんしね。
───最初の一歩ということですね。では、次の二歩目は、どんなものになりそうですか?
川西 あまり詳しい話はできませんが(笑)。今は、安全基準を満たすための部品で足りないところがありますから、それをきちんとつけて公道を走れるようにしようと。
───公道を走れるとなれば、自動運転の開発もするのですか?
川西 開発の一つとしてはやっていきたいですね。でも、自動運転と言ってもそんなに簡単ではないので、やはりレベル2やレベル2プラスぐらいのところで足固めをして、その先によりリッチなセンサーを付けて可能性を広げたい。エンターテインメント系も、ソニーの中にはたくさんの知見がありますし。コンテンツも含めて5Gもネットワークもやるので、新しい何かをお見せできるのではないかと思っています。
───それは楽しみですね。
川西 たまたま、今回の「VISION-S」はスタイリッシュなデザインになりましたが、このシャシーを使うと、上物が違うものもできます。そういう設計にしているので。つまり、EVプラットフォームとしての可能性もあるかと思います。
───これをベースにEVバスをソニーが作るという可能性もあるんですね。
川西 土台としては、そういうように作っています。
───なるほど、引き合いがあれば、マグナ・シュタイヤー社なら量産もできますよね。うまくいけば、ものすごく大きなビジネスになるかもしれませんね。
川西 かもしれません(笑)。
最終的にはサスティナビリティーの面で
社会に貢献したい
───最後に、このクルマに関して何か伝えたいことはありますか?
川西 これを見てのフィードバックが欲しいですね。これまでクルマを作ったことのないソニーのような会社が、EVや新しいモビリティーに何を込めたらいいのか? 未開拓なところがたくさんあるので、そういったご意見がいただけると非常にうれしいです。そのための実験車両だと思っています。
───CESでは、ソニーの社長さんも、「これからはモビリティーだ」と強くおっしゃっていましたね。
川西 ひとつのトレンドですね。でも、最終的に社会貢献に行きつくと思うんです。大きな意味で言うとサスティナビリティーです。クルマが電動化することによって、エネルギーの使い道が変わっていきます。クルマの進化だけでなく、社会の環境に対する貢献にもなるのではないかなと。最終的に貢献できるものにしたいという考えがあります。
ただ、クルマは短期的なアジェンダではないと思います。クルマには100年以上の歴史がありますから。人を載せる移動体として安心・安全を担保するのは、どこまで行っても終わりがなくて。そういう意味で、長いお付き合いになるのではないかと思います。
───ソニー製のクルマを楽しみにしています! ありがとうございました。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
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