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松村太郎の「"it"トレンド」 第279回

伝説的なキーボード、HHKB新モデルが乾電池駆動である理由

2019年12月11日 16時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

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HHKBという製品をどの時間軸で見るか?

 電池については記者からも質問が出ていました。なぜ容量が大きく充電も手軽なリチウムイオン電池を採用しなかったのか? その答えには考えさせられました。

 PFUによると、乾電池を採用したことには意図がありました。

 前述の通り、HHKBは高い耐久性で長く自分の道具として使ってもらう、というコンセプトがあります。実際、筆者が2011年頃から使っているHHKB Professional 2 Type-Sは、毎月30万文字ぐらいはタイピングして8年がたちますが、不具合が出そうにありません。

 白いプラスティックの外装に黄ばみが若干目立ち始めてしまったのですが、キータイプに支障はありませんし、刻印がこすれている箇所もありません。おそらく、まだまだ当面は問題なく使い続けることができるでしょう。

 しかし、もしこのキーボードにリチウムイオン電池が入っていたとしたら、はたしてその電池は今もきちんと動作するでしょうか。この点には大いに疑問です。へたってしまって極端に持続時間が短くなっているかもしれません。

 つまり、もしリチウムイオンバッテリーを内蔵してしまっていたら、キーボードよりも早く電池の寿命が訪れてしまい、HHKBのキーボードとしての本質を邪魔する結果となってしまいます。それよりは、世界中どこでも手に入れることができる単3乾電池を用いた方が、HHKBらしい長く使い続けられる道具たり得る、ということです。

 確かにテクノロジー的にはリチウムイオンバッテリーが進んでいます。しかし例えば10年、15年、20年という時間軸で見れば、むしろ製品をダメにする要因でしかなくなります。ちょうど旭化成名誉フェローの吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞した年に言うのも申し訳ない気がなりませんが……。

ちなみに、個人的には両方キープ

 最後に、キーボードの要の打鍵感について。

 冒頭でも述べたとおり、筆者は割とキーボードの好き嫌いが少ない方で、むしろいろいろな種類のキーを使いこなせることが楽しい、と思うタイプです。今回HYBRID Type-Sは打鍵感についても変化がありました。

 これまでのType-Sは通常モデルに比べて若干浅く静かながら、しっかりとしたタイピングを実現していました。今度のHYBRID Type-Sはよりシットリと軽くより静かな打鍵感で、慣れてくると少ない力とストロークでスピーディーにキーを叩いていくことができるようになります。

 タイピングを歩き方に例えると、以前のモデルが軽やかな行進だとすれば、新モデルは忍者の忍び足でより静かに素早く文字を入力していく感覚でした。そして、どちらも好みで、古い方も新しい方も両方手元に置いて、気分で使い分けたいと思ってしまいました。

 今回からはオンライン販売のみとなりましたが、東京・名古屋・大阪では触れる事ができる店舗もあります。ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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