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松村太郎の「"it"トレンド」第277回

Adobe MAXで感じたAdobe Senseiの変化

2019年11月21日 17時30分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

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 クリエイティブアプリの最大手であるAdobeは、2019年11月4日からの3日間、ロサンゼルスで世界最大のクリエイティブイベント、Adobe MAXを開催しました。1万5000人の来場者が集まり、Adobeの最新製品を試したり、デザインやクリエイティブのプロセスを紹介するセッションに参加し、また世界中のクリエイターとの交流を楽しみました。

 Adobeは2013年以降、数十万円を超える値札が付いたクリエイティブパッケージソフトウェアのビジネスから、サブスクリプションサービスへと完全に移行を図り、今もなお売上高を伸ばし続けている、数少ないビジネスモデル転換の成功事例となりました。

 クリエイターがどのようにアプリを使っているのか、どんな作業をしているのか、といったデータを細かく収集し、問題を見つけて素早く解決する新機能を投入する、サブスクリプションに合わせた開発体制への転換も実現しました。

 そうした中で集まってきた膨大なデータから構築しているのが、人工知能Adobe Senseiです。2019年のAdobe MAXは、Adobe Senseiがこれまで以上に至るところで活躍し、その役割を変化させていく、そんな印象を持ちました。

 ちなみにAdobe Senseiは、Adobeのコンテンツ理解、ドキュメント理解、マーケティング理解などの専門的な分野に特化した人工知能の概念で、語源は日本語の教えながら自らも学び続ける(かなり美化された)「先生」像から来ています。

 AdobeはAIによって、クリエイターを機械に置き換えるのではない、と強調します。基調講演では、「Creative Cloud vs 時間」というスライドを掲げ、時間がかかっていた作業をAIが引き取り、クリエイターはより創造的なプロセスに時間を割けるようにする、という基本的なAI活用の方針を改めて主張しました。

Adobeの未来はSneaksで先取りできる

 Adobeは年に2回、大規模なイベントを開催します。1つは3月に行われるデジタルマーケティングを主体としたイベント「Adobe SUMMIT」。そしてもう一つがクリエイティブの祭典「Adobe MAX」です。いずれも2日目の夕方に、開発中の機能を披露する「SNEAKS」があります。

 ここで披露される技術の数々は、以前はAdobeマジック、現在はAI技術の総称であるAdobe Senseiに関連しています。アドビ リサーチ ヘッドのGavin Miller氏に、Adobe Researchでの研究開発の裏側を聞きました。

 Adobe Researchの研究分野は11にわたり、コンテンツ理解だけでなく、データ処理、ユーザー体験の処理などにも及びます。また大学からのインターンを受け入れ、AI技術の実装を完成させ、それを持って大学に戻り論文を通して学位を取るそうです。インターンだからといって誰かのアシスタントになったり、お茶汲みをすることなく、技術を磨く。そして再びAdobeに戻ってきて研究を続けてくれればなお良い、というサイクルが生まれていました。

 Adobe Researchの研究発表の場こそ、毎年2回行われるSneaksです。もちろんすべての発表技術を実装するとは限りませんが、最近を見ているとほとんど翌年には実装されているような印象を受けます。

 たとえば、ビデオ編集アプリのAfter Effectsに今年、ビデオの中で対象のオブジェクトを消して背景を自動的に補完する、いわゆる「コンテンツに応じて削除」が実装されました。また最近スマートフォン向けに需要が高まる縦長動画向けに、横長動画で撮影された被写体・主題をフレームが自動追尾する機能も盛り込まれました。これらは以前Sneaksのデモで見た機能で、筆者も発表された会場で「おーすごい!」と声を上げた記憶があります。

また今年Adobe Frescoとして製品化された描画アプリには、油絵の重なりや水彩絵具と水の滲む様子の再現など、物理的な計算を伴うブラシが実装されており、いずれもSneaksで見た技術から製品化されています。

今年のAdobe MAXのSneaksでは、

・インタビュー録音から「あー」を削除して聞きやすくする「Sound Seek」
・どんな画像にも口の動きをつけて喋らせられる「Seet Talk」
・iPadでAR空間を動き回りながらコンテンツをデザインできる「Project Pront」
・複数枚のスケッチや写真の特徴を認識して写真をその場で作り出す「Image Tango」
・フォントを自由自在にコントロールできるiPadアプリ「Fantastic Font」
・スマートフォンで撮影したビデオでモーショントラッキングを実現する「Go Figure」
・写真が画像編集されているかどうかを検出し、編集を元に戻すことができる「Project About Face」

が披露されました。

公開当初から、ご紹介させていただいた方の肩書きを修正しています。(12/5 19:45)

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