創業時の業種をすべて捨て
コンピューターメーカーになる
さて、HPの方向性を“Information Utility”と“Information Appliance”だ、と宣言したものの、Platt氏が思い描く製品やサービスのすべてを当時のHP社内で提供できたわけではなかった。そこでここから氏はYoung氏時代にもまして企業買収を進めていく。1998年までの範囲で主要なものを並べても、以下の24社にもおよぶ。
Platt氏が1998年までに買収した24の企業 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
企業 | 業種 | |||||
米Four Pi Systems Corp | 自動テスト装置 | |||||
米Metrix Network Systems | ネットワーキング | |||||
米BT&D Technologies | PC向け各種周辺機器 | |||||
米EEsof Inc. | コンピューターソフトウェア | |||||
米Versatest | 自動テスト装置 | |||||
加Canstar Systems | アルカテルカナダの子会社のFiber Channel Switch部門 | |||||
米CaLan Inc. | 自動テスト装置 | |||||
米Convex Computer | サーバー | |||||
米ElseWare Corp. | ソフトウェア開発環境 | |||||
米SecureWare Internet security division | セキュリティソフトウェア | |||||
米Graphics technology | Parametric Technology Corporationのグラフィックハードウェア部門 | |||||
米Division Inc. | ソフトウェア開発環境 | |||||
米DP-Tek Development | 画像処理 | |||||
米Trellis Software & Controls | モーションコントロール | |||||
米VeriFone | 電子決済 | |||||
蘭PROLIN | 情報システム | |||||
米Internet printing technology | ForeFront Groupのインターネット印刷部門 | |||||
米Nuview ManageX | Nuview Inc.からBPM(ビジネスプロセスマネジメントソフト | |||||
米Optimazation systems | ソフトウェア | |||||
南アフリカSiltek | 情報システム | |||||
米Heartstream | 医療機器 | |||||
イスラエルComputing & Measurement Systems | コンピューターシステム | |||||
米Scope Communications Inc. | ケーブルテスター | |||||
米Open Skies, Inc. | ソフトウェア |
このうちConvexに関しては連載345回で説明した通りだ。当時HPはHP 9000シリーズこそ抱えていたものの、その上位にリーチする方法がなく、HPC市場は指を咥えているしかなかったが、Convexの買収で(実績はともかくとして)一応リーチするための手段を手に入れたことになる。
それはともかくこうして並べてみると、かつては大黒柱であった計測器部門に関わる買収が非常に少なく、ほとんどがコンピューターシステム向けであったことがわかる。
この流れをさらに加速したのが1999年におけるAgilent Technologiesの分社化と、翌2000年の株式売却にともなう独立である。
1999年、HP(というか、Platt氏)はHPの将来をコンピューターにあると見定めた上で、コンピューターおよびプリンター部門のみをHPに残し、残りの計測機器や化学分析機器、医療機器、電子部品といった全部門をAgilent Technologyという新会社に移管して独立させ、2000年にはそのAgilent Technologyの株をすべて売却した。
この売却にともなう新規公開株式の総額は21億ドルになったそうで、当時としては記録的な金額である。これにより、HPは創業の業種を捨て、完全にコンピューターメーカーになったことになる。

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