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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第56回

外交政策にゆれるアップル:

「サムスンに出し抜かれる」アップルCEOトランプ大統領にささやく

2019年08月23日 16時00分更新

文● 松村太郎 @taromatsumura

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●ウェアラブルはまもなく関税の対象に

 9月1日から適用される関税について、ウェアラブル製品は除外されました。2019年第3四半期に売上高が1.5倍近くに膨らむ急成長を遂げ、iPhone 12%減の穴を埋めて全体の売上高を1%のプラスにまで持ってきた原動力ともいえるウェアラブル製品には、9月1日から10%の関税がかかってしまうことになったのです。

 実はアクセサリ類にはすでに10%の関税がかかっています。しかしアップルはこれを販売価格に転嫁せず、吸収する判断を下しています。もっともケーブル1本2000円からという価格にマージンが大きくないはずもなく、消費者への負担を強いるには強気すぎるとも思います。

 消費者に転嫁できないということは、アップルの売上高を10%毀損することに他なりません。

 ウェアラブルデバイスについて、アップルがどんな判断を下すのかはまだわかりません。しかしアクセサリと同じなら、10%の関税をアップルが負担することになるのかもしれません。

 そうなれば、今回のようにiPhoneの売上高の下落分をウェアラブルが穴埋めすることもより難しくなりますし、投資家にとっての心象も悪くなります。主要テクノロジー株であるアップルの下落は、市場環境全体を悪くして、良好な景気を背景に正当性を示してきたトランプ大統領の再選に影響が出るでしょう。

 一方、もしもアップルが消費者に関税分を転嫁したら消費者のトランプ政権への批判は不可避といえるでしょう。これもまた、選挙を控えるトランプ大統領にとってはネガティブな要因の拡大となってしまうでしょう。

 繰り返しになりますが、米国の中国に対する牽制や、安全保障上の脅威との認識は、トランプ政権に始まったことではありません。ファーウェイなど中国の通信機器大手に対する制裁は、オバマ政権時代から粛々と進められてきたことでした。

 しかしトランプ政権になって、通商問題と紐付き、逆に安全保障上の問題であるとの認識が不明瞭になっている側面もあります。

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