クラウドから「エッジ」への動きが加速:Build/de:code 2019レポート 第8回
「de:code 2019」基調講演レポート(前編):Windows 365がLinux開発者向けに機能強化
WindowsにLinuxカーネルが入るとWeb開発が変わる――de:code 2019基調講演で「WSL2」をデモ
2019年05月29日 15時00分更新
日本マイクロソフトは2019年5月29日~30日の2日間、都内で技術者向け年次イベント「de:code 2019」を開催している。29日朝に行われたキーノートには、日本マイクロソフト 代表取締役 社長の平野拓也氏と、米マイクロソフトからMicrosoft 365担当バイスプレジデント ジャレット・スパタロウ氏、Azure担当バイスプレジデントのジュリア・ホワイト氏、テクニカルフェローのアレックス・キップマン氏が登壇した。
本稿ではキーノートレポートの前編として、ジャレット・スパタロウ氏の講演内容を紹介する。中編ではジュリア・ホワイト氏によるAzure関連の講演、後編ではアレックス・キップマン氏と平野拓也社長の登場シーンをダイジェストで紹介する。
Microsoft Graphが生産性を上げる
de:code 2019のキーノートに登壇した米マイクロソフト Microsoft 365担当バイスプレジデント ジャレット・スパタロウ氏は、Microsoft GraphをコアにしてWindows、Office、Edge、Teamsがアプリケーション間の壁を越えて連携する様子と、Build 2019で発表された各アプリケーションの新機能を紹介した。
Microsoft Graphは、Windows、Office、Edge、Teamsを含む様々なアプリケーションのデータをグラフ形式で扱うことができるエンドポイント。Microsoft Graph上で各アプリケーションのデータが関連付けされているので、例えば、スマートフォンのOutlookアプリでスケジュールに“フォーカスタイム”を設定すると、その時間は集中を妨げないようにPCのWindows画面にポップアップが出さないといったように連携する。
「Microsoft 365は、デバイスやアプリケーションの都合を中心に考えるのではなく、デバイスやアプリケーションを使う“人”を中心におき、生産性を高めるように設計されている。Microsoft Graphでこれを実現している」(スパタロウ氏)。
WindowsにLinuxカーネルを搭載
続いて、Build 2019で発表されたMicrosoft 365関連の開発者向けの新機能のうち、「React Native for Windows」、「Microsoft Windows Terminal」、「Microsoft Windows Subsystem for Linux 2」のデモを披露した。
React Native for Windowsは、JavaScriptフレームワーク「React Native」を使うWeb系開発者がWindows向けの開発を行うためのオープンソースプロジェクト。スパタロウ氏は、React Native for Windowを使って、JavaScriptのコードがそのままUWPアプリケーションにインポートできる様子をデモで披露した。
Microsoft Windows Terminalは、PowerShell、コマンドプロンプト、Linux向けの各種シェルをタブでいくつでも開くことができる開発者ツール。オープンソースプロジェクトとしてGitHubに公開されている。「日本向けに、Unicodeをフルサポートした。日本語、絵文字を使うことができる」(スパタロウ氏)。
Microsoft Windows Subsystem for Linux 2(WSL2)は、Windows 10上でLinuxカーネルがそのまま利用できるサブシステム。フルのLinux 4.19カーネルが搭載されており、Dockerをネイティブサポートする。「LinuxカーネルがWindows上にあるのでデュアルブートは不要。Windows上で複数のLinuxディストリビューションを同時に起動することも可能になる」(スパタロウ氏)。
WSL2を使って、Windowsの中だけでエンドツーエンドのWeb開発ができるようになる、とスパタロウ氏は説明する。デモではVisual Studio Codeを使って、Linuxで実行されているJavaScriptのバックエンドの作業をみながら、フロントエンドの表示をEdgeブラウザで確認する開発作業が、1つのWindows環境内で同時にできる様子を披露した。
* * *
Microsoft 365のWindows関連では、Linux開発者向けの機能強化が目立った。Office関連では、Microsoft Graphを使ったOfficeアプリケーション間のデータ連携や、Excelの機能コンポーネントをWordで実行できるようにするといった機能連携、OfficeアプリケーションへのAI機能実装などのアップデートがあった。
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