2019年3月14・15日、名刺管理ソリューション「Sansan」や「Eight」を手がけるSansanは、「Sansan Innovation Project 2019」を開催した。60以上の基調講演やセッションが行なわれ、100名以上が登壇。2日間で約5000名が参加し、大いに盛り上がった。今回は、その中から3つのセッションの様子を紹介する。
Sansan・Eightと連携して働き方改革に効くドキュメントスキャナー
まずは、スポンサーランチセッションで「ScanSnap ix1500 働き方改革の最強ツール 最新スキャナーScanSnap iX1500の活用方法」から。個人向けのドキュメントスキャナー「ScanSnap」は世界シェアNo1なのだが、実はPFUには業務用のドキュメントスキャナーの「fiシリーズ」という製品もある。1分間に135枚をスキャンする高速スキャナーやネットワーク対応モデル、国内3台通信キャリアの窓口でも採用されていたA6サイズのスキャナーなどをラインナップしている。そして、この業務用でも世界トップシェアを誇るという。
「車の世界で言うと、F1カーを作っている会社が、軽自動車を作っている風に考えていただければと。PFUが持っている技術をぎゅーっと凝縮されているのがScanSnapです」(山口氏)
Sansanがスタートアップの時から13年に渡り、名刺の入力デバイスとしてScanSnapを採用している。ScanSnapとしても、Sansanは最大のパートナー企業となっており、「Sansan」と「Eight」の両プロダクトと連携している。
ScanSnapは2001年、USBのPC周辺機器として発売。AdobeのAcrobatを添付したことで、ビジネスシーンで好評を得た。2009年にはiPadが発売され、“自炊ブーム”が起きたためScanSnapも躍進する。ここまでが1stステージ。2012年には2ndステージに突入し、「iX500」でWi-Fi接続を実現した。そして3rdステージには、さまざまなクラウドサービスとつながる「ScanSnap Cloud」を投入。現在は14社とエコシステムを構築しているという。
「ix1500」で設定したボタンをタッチすると、紙をスキャンしたデータが、名刺管理アプリ「Eight」に登録されたり、クラウドストレージ「Box」に保存されたり、会計システムの「freee」に記録されたりするのだ。
「ScanSnap iX1500を活用することで業務を効率化や働き方改革が促進されることは間違いありません。この効率化で生み出した時間を、新たなイノベーションを想像する時間に当てられるということが大きなポイントだと思います」(山口氏)
エンゲージメントはデータの利活用とパーソナライズがキモ
「エンゲージメント向上の鍵は“高品質なビジネスデータ”と“パーソナライズ”」という興味深いタイトルのSansanセッションには、Dialpad Japanの安達天資氏とセールスフォース・ドットコムの飯山真生氏が登壇した。モデレーターはSansan 執行役員CTOの藤倉成太氏が務めた。
Dialpadは次世代の企業向けコミュニケーションプラットフォームを提供しており、電話機なしでPCやモバイル端末で音声コミュニケーションできるのが特徴。その会話はリアルタイムでテキスト化され、感情分析や通話状況を可視化できるようになる。ビジネスのコミュニケーションではフェイスツーフェイスが多く、次にオンラインミーティングや電話、その先はメールやテキストになる。そして、そのコミュニケーション手段の中で、ボイスのシェアは7割もあるという。
「今までは声のやりとりはブラックボックスで、まったく利活用されていなませんでした。それをキャプチャして、いろんなツールとつないで有効活用しています」(安達氏)
セールスフォース・ドットコムは、言わずと知れた世界No1のCRMサービスを提供している大手IT企業。飯山氏はその中で、既存顧客のセールスフォース活用を支援したり、エンゲージメントの各施策の立案・運営に携わっている。
まずは、藤倉氏からエンゲージメントについて「プロダクトを使ってもらい続けること、というのは大変ですよね」とお題が出された。
「エンゲージメントが高いお客さまは解約率が低いというのは、明らかにデータとして出ていますので、会社としても重要視しています。私が所属している部門のKPIのひとつになっていて、ボーナスはエンゲージメントによって決まります(笑)」(飯山氏)
エンゲージメントは感覚的に扱っていると、なんとなくいいとか悪いといった状態になり、ある日突然解約したいと言われたりするようになる。そのため、定量的に計るための仕組みが重要になる。
「活用できないデータはあまり意味がありません。ビジネスにとって価値のあるデータとは、何かしらの目的があって活用できるものです。例えば、営業のマネージャーの場合、まずメンバーの訪問数を見ます。次に見たいのが、活動の質になります。その場合、訪問の件数だけでは不十分です。活動の種別、という項目が必要になるのです。目的があって、アウトプットできているかどうかがデータの価値を決めると思います」(飯山氏)
「営業マネージャーが、お客さまとどういう会話をしているのかを知れるといろいろできます。Dialpadはどういったことを話しているかが文字化されます。この営業マンは今月500分話したが、そのうち何分間お客さんがポジティブだったのか、ということも気付けるのです。マネージャーが500分聞いてアドバイスするのは不可能ですが、われわれはテクノロジーで可視化できます」(安達氏)
続いて、顧客に対してどのようにエンゲージメントを向上しているのか、という本題が振られ、飯山氏は以下のようにコメントした。
「セールスフォースでお客さまのエンゲージメントを高めるためには、チャネルを増やすというのが大きな施策になります。大多数向けから説明すると、まずヘルプやナレッジを公開しています。本来であれば、サポートページを用意してその中で公開するのですが、われわれはGoogleなどで検索して出てくるようにしています。検索性を高めることでわれわれのリソースにタッチしやすくしています。
次に、既存のお客さま同士がつながるコミュニティを用意しています。その中で、引っ張っていただく人を任命して、その人が経験した知見を他のお客さまに共有してもらっています。ウェブセミナーは無料で学べる学習ツールですが、ゲーミフィケーションという要素を入れています。
実は、以上の3つはお客さまを大きくセグメントしている施策ですが、なかなかエンゲージメントが上がってきません。そこで私たちはパーソナライズに着目し、カスタマージャーニーにその要素を取り入れています。たとえば、契約している年数や役職、設定の進み具合などのデータを見つけ出し、その方に合ったコンテンツを自動的に配信するツールを用意しています」