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すれ違いで非効率になっている商談を効率化する新サービス

名刺管理アプリ「Eight」のユーザーをリアルで引き合わせる「Meets」

2019年04月22日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

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 2019年4月17日、Sansanは名刺管理アプリ「Eight」の新サービスとしてビジネスイベント「Meets(ミーツ)」を発表した。会場は、結婚式場としても使われるザ ストリングス 表参道で、同日にイベントも開催されている。今回は、Eightが手がけるリアルイベントについて紹介する。

結婚式場にも使われている会場でマッチングイベントの発表が行なわれた

人脈情報を活用して売り手と買い手のニーズをマッチングさせる新サービスを開発

 「Meets」はその名の通りサービスを導入する人と提供する人をマッチングさせるイベントだ。なぜ、名刺管理アプリ「Eight」がリアルマッチングのイベント事業を始めるのだろうか。

「Eightは単なる名刺管理ツールではなく、我々はビジネスプラットフォームとして位置づけています。名刺を入り口として、Eightの上でさまざまな人や企業、情報を繋げることが最大の特徴です。このEightのテクノロジーを活用したのが『Meets』になります」と語るのはSansan Eight事業部長の塩見賢治氏だ。

Sansanの共同創業者で取締役、そしてEightの事業部長でもある塩見賢治氏

 Sansanは創業12年を迎え、名刺管理サービスという市場を切り開いてきた。2012年、無料の名刺管理アプリとしてスタートした「Eight」はすでに、累計ダウンロード数500万以上、ユーザー数が230万人を超える。Eightには、ユーザーとユーザーが交換した名刺の情報だけでなく、仕事の内容やこれまでの経歴を登録でき、名刺交換した相手に名刺以上の情報を伝えることができる。名刺交換した相手と、その後もコミュニケーションを続けられるのが最大のメリットだ。

 Eightのタイムラインには、「Eight Ads」としてBtoB商材の広告が流れて来るので、自社に必要な商品やビジネスの情報を入手できる。また、2019年2月に導入したばかりの機能として、Eight上でダイレクトスカウトを受けられるようになっている。Eightを使っていれば、自身の次のキャリアの可能性に気が付けるかもしれないのだ。この2ヶ月間、多くの企業に利用され、実際にスカウトされ、転職した人もいるそうだ。

同社は企業向けSansanと個人向けEightを軸に、出会いのイノベーション創出にチャレンジしている

 「Meets」はそんなEightが持つ人のつながりという強みを活かした新サービス。たとえば、ある企業が人材管理のサービスを新しく導入したい場合、まずは検索してみることだろう。しかし、ネット上には情報があふれており、求めている情報を見つけるのは難しく、時間や労力もかかる。見つけたとしても、そこから資料請求し、稟議を通すために類似サービスを探して相見積もりを取る。商談の場に誰が参加するのかという社内調整にも苦労する。

 売り手である営業担当も、課題を抱えている。サービスの導入を考えている見込み顧客に簡単にたどり着くことができないのだ。

「サービスを導入したい、提供したい、という双方にニーズがあるのにすれ違いが起きています。ここにビジネスシーンの大きな非効率が発生していると考えています。Meetsを通して企業同士のよい出会いが創出され、ビジネスが促進されていくお手伝いをしたいと考えています」(塩見氏)

半数以上が毎週商談を受けているが65%は最初から導入するつもりがない

 新サービスの詳細な内容は、Eight事業部 Meetsチーム プロジェクトリーダー 安藤琢哉氏が紹介。まずは営業と購買のプロセスについての調査結果を報告した。

Eight事業部 Meetsチーム プロジェクトリーダー 安藤琢哉氏

「57%の方が週に1回以上の商談を受けているのですが、その65%の方が最初から導入するつもりがないのに商談を受けていました。理由は、押しの強い営業や上司からの紹介で断り切れなかったなどでした。約8割の方がこういった購買プロセスにはムダがあると回答しました」(安藤氏)

 売り手側も課題を抱えている。主な営業手段はテレアポで、訪問営業も多い。しかし、営業を受ける側の声としては、テレアポが57%、飛び込み営業には55%の人が悪印象を持っていることがわかった。しかも、営業活動に対してではなく、その商材であるサービスに対して悪印象を持ったという。テレアポも飛び込み営業もパワーのかかる営業活動だが、逆にブランディングを毀損しているのなら目も当てられない。

 ようやくこぎ着けた商談でも、驚愕の結果が出た。商談を受けている間に内職をしたことがある人は57%にのぼった。もちろん、これは営業側もわかっており、営業にムダがあると感じている人は74%もいる。

「多大な時間と労力をかけて行なわれている商談活動ですが、買い手と売り手の両者にとってあまり幸せなことになっていません。しかし、実際に調査したところ、商談を受けたくないというわけではないようです。8割の方が、興味のあるサービスであれば商談を受けたいと答えています。これは、出会い方に問題があると考えています」(安藤氏)

79%の人が、現状の商談には無駄があると感じている
Eightユーザーの課題を抽出し、課題に適した企業とのマッチングを行なう

 そこで、Eightのテクノロジーを利用して、最適な出会い方を提供できると考えた。まず「Meets」では、毎回テーマを設定する。Eight側で仮でテーマを決めて、ユーザーにアンケートを採ったり、識者にヒアリングを行なって決めているそう。アンケートを求めるユーザーは全員ではなく、仮決めのテーマ感に対して、ターゲットとなりそうなユーザーに絞っているとのこと。

 次に、決定したテーマのターゲット層に対して、招待をかける。この際、単に名刺の肩書で絞り込むだけでなく、Eightならではのテクノロジーでターゲットを区切っている。Eightのフィードで発信されている情報や、広告事業からの反応データといった興味関心データを分析したり、Meetsのランディングページに訪問したデータなどを利用して、アプローチをかけている。ここには機械学習を適用し、マッチング精度の向上を実現しているという、ちなみに、機械学習の教師データに使っているのは、ユーザーが登録した名刺のみ。つながり情報も活用するが、登録した交換名刺は利用していないという。

「Eightはスマホの端末にひもづいているので、広告識別子が取れます。そこで、さまざまな広告プラットフォームと連携しながら、Eight以外の面でもEightユーザーにリーチしています」と安藤氏。参加者の8割がEightユーザーで、残りはEightユーザーの紹介、および一般公開している情報からの応募だそう。

 1つのテーマで登壇するのは、6~9社。登壇企業は、現状Eightの営業が精査して決めているという。発表している文献や露出している記事の内容や量、出展している展示会などの情報を集めている。

「ここが一番重要だと考えています。毎回、市場調査やユーザーへのアンケートを行ってからテーマ設定をしています。たとえば、本日のMeetsでは、業務プロセスの改善をテーマにしています。4月1日から働き方改革法案が施行されましたが、こちらの時流を切り取ってテーマを設定しました」(安藤氏)

Meets参加者の導入意欲は、参加前を比較すると3倍に向上した
参加者は130名。登壇企業の費用は250万円となる

セールスピッチ、商談会、フォローアップの3つを用意

 「Meets」は3つのコンテンツを用意している。まずは、「セールスピッチ」。登壇企業が各社6分間の持ち時間で自社サービスの魅力を語るプレゼンを行なうのだ。通常の商談であれば、1時間くらい打ち合わせてやっと内容を理解できるというところだが、短時間のピッチをまとめて行なうことで、一気に複数のサービス内容を把握できるというわけだ。

 次は「商談会」。セールスピッチの中で気になるサービスがあれば、商談会の時間で、その場で商談できる。ビジネスでは「鉄は熱いうちに打て」が鉄則だが、それを最速で行えるのだ。参加者の記憶が新しいうちに商談すると、検討速度も向上する。

 商談会の裏では「フォローアップタイム」というコンテンツを用意している。セールスピッチを聞いた後、商談はまだ早いけど、もうちょっと話を聞いてみたいというユーザーがターゲット。カジュアルにプレゼンターやユーザー同士で交流する場として活用できる。

セールスピッチの様子。1時間で複数企業のサービスをまとめて理解できる
商談会の様子。もとから課題のある企業がプレゼンを聞いて検討度が上がった状態で、即商談できるというのがメリット

 来場者には事前にアンケートを採っており、テーマに対して実際に抱えているリアルな課題をヒアリングしている。この課題はあらかじめ登壇企業と共有しており、フォローアップタイムで、自社のサービスを使ってどのような課題に、どのようにアプローチできるのか、を過去の事例を交えて提案してもらうそう。商談まで乗り気でなかったユーザーも、自社の課題を解決する形でサービスの理解が深まることが期待できる。

 セールスピッチが始まってから、商談会の最後まででだいたい3時間ほど。この時間設定も絶妙だ。人の集中力が続くのは最大90分くらいと言われており、休憩をはさんでそれを2コマ使うというイメージだそう。参加者も全員忙しいビジネスパーソンなので、この時間感覚はありがたいところだろう。

 すでに「Meets」では数回のテスト開催を行なっており、「自社の課題が明確になった」「短時間で複数のサービスを比較できたので、効率的に検討できた」という声が寄せられているそう。アンケートによると、イベントの前後で、サービスの導入意欲が9.3%から29.9%と3.2倍になっている。たとえば、ベルフェイスが登壇したところ、翌日に受注が決まったという。通常のリードタイムは20日くらいとのことなので、大幅な短縮になっている。しかも、これはラッキーパンチではなく、5日後にも1件受注したそう。

「来場者は、どのサービスを使えば自分の課題が解決できるのか、ということがわかります。登壇企業は、自社のサービスに興味があって、かつMeetsを通して検討度がぐっと上がっている見込み顧客との接点を持てる。まさに狙ったとおりの価値が返せているかなと思います」(安藤氏)

 プレゼンターの登壇費用は、スタンダードプランが250万円、特別枠としてスタートアッププランが100万円となる。参加者は無料で参加できる。このコストに関しては、テスト開催でヒアリングした商談件数や見込み客数を参考に決めたそうで、リードタイムが短くなるスピード感というところで、優位性が出せると考えているという。

 「Meets」は今後定期的に開催される。場所は、今回と同じザ ストリングス 表参道で、1回の来場者は130名。次回は5月16日で、年内は計16回の開催を予定しており、累計3000名の人に最適なビジネスマッチングを行なうとのこと。さらに、冬には規模を大きくした大型のMeetsも企画検討しているそうだ。

「Meetsのコンテンツを蓄積して、オンライン上で活用するプランも計画しています。オフライン、オンライン双方から活用すべく進化させていきます。ビジネスの課題は常に変化しています。その課題に応え続けていくためにも、ユーザーにとっての価値を高めていくというのはもちろん、世の中のビジネスパーソンの課題を解決していくビジネスプラットフォームとして形にとらわれず、よい出会いを生み出せるようにどんどん発信していきたいと考えています。今後のEightについても、ぜひご期待ください」と塩見氏は締めた。

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