まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第64回
プロデューサー 柳川あかり氏インタビュー
原点に立ち返りつつ多様性を描く――スター☆トゥインクルプリキュアが届けたいもの
2019年05月11日 16時00分更新
星座モチーフの新プリキュアがスタート!
アニメ「プリキュア」シリーズは2019年1月に最終回を迎えた『HUGっと!プリキュア』で放送開始から15周年となり、2月3日からは新シリーズ『スター☆トゥインクルプリキュア』がスタートした。ネット上でも話題となることが多かった前作と何が変わり、何が変わらないのか? 物語の見どころや、少子化が進むなかでどのような展開を目指すのかを、柳川あかりプロデューサーに聞いた。
〈プロフィール〉柳川あかりプロデューサー
東映アニメーション株式会社 営業企画本部 第一映像企画部 第一映像企画室 プロデューサー。過去の担当作品に『おしりたんてい』(プロデューサー)、『デジモンユニバース アプリモンスターズ』(アシスタントプロデューサー) など。
〈ストーリー〉スター☆トゥインクルプリキュア
わたし、《星奈(ほしな)ひかる》! 宇宙と星座がだ~いすきな中学2年生。星空を観察しながらノートに星座を描いていたらとつぜん謎の生物《フワ》がワープしてきたのっ! それから、空からロケットが落ちてきて、宇宙人の《ララ》と《プルンス》までやってきた! …あなたたち、ホンモノの宇宙人!? キラやば~っ☆
地球から遠くとおく離れた《星空界(ほしぞらかい)》の中心部にある聖域《スターパレス》では《12星座のスタープリンセスたち》が全宇宙の均衡を保っていたらしいのだけど…あるとき何者かに襲われて、プリンセスたちは《12本のプリンセススターカラーペン》になって宇宙に散らばってしまったの! このままじゃ星が消えて、地球も宇宙も、闇に飲み込まれちゃう…!
『星々の輝きが失われし時、トゥインクルブックと共に現る戦士プリキュアが再びの輝きを取り戻す』ララ達は宇宙に古くから伝わる伝説を頼りにプリンセスが最後に生み出した希望・フワと一緒に《伝説の戦士・プリキュア》を探していたんだって。
そこへ宇宙の支配を目論むノットレイダーがフワを狙って襲いかかってきて…「フワを助けたい!」そう強く思った瞬間、《トゥインクルブック》から《スターカラーペンダント》と《変身スターカラーペン》が現れて、わたし、プリキュアに変身しちゃった!?
宇宙に散らばったプリンセススターカラーペンを集めて、スタープリンセス復活の鍵となるフワを育てなきゃ! よーしっ、地球を飛び出して宇宙へ出発だーっ☆
メインスタッフ
シリーズディレクター:宮元宏彰 シリーズ構成:村山功 音楽:林ゆうき/橘麻美 キャラクターデザイン:高橋晃 美術:増田竜太郎/いいだりえ 製作担当:澤守洸/堀越圭文 色彩設計:佐久間ヨシ子 プロデューサー:佐藤有(ABCテレビ)/田中昂(ABCアニメーション)/矢﨑史(ADKエモーションズ)/柳川あかり
キャスト
キュアスター (星奈ひかる):成瀬瑛美 キュアミルキー (羽衣ララ):小原好美 キュアソレイユ (天宮えれな):安野希世乃 キュアセレーネ (香久矢まどか):小松未可子 フワ:木野日菜 プルンス:吉野裕行
ハグプリからスタプリへ
特別な話題作の次は、原点を見つめ直す
―― 放送が始まった『スター☆トゥインクルプリキュア』(以下スタプリ)ですが、前作との相違点について教えてください。
柳川 前作『HUGっと!プリキュア』(以下ハグプリ)は、お子さんに見てもらいつつ、彼らが大人になったときにも心に響くものがあるようにというようなメッセージ性があり、繊細な問題にも切り込んでいったところを感じます。そのメッセージ性の強さで、新聞やTwitterなどでも取り上げていただけるまでに至り、後番組のスタプリは15周年を受けて、今はプリキュアを見ていない方々からも再度注目していただいたおかげでその話題性の恩恵を受けているのかなと思います。
ハグプリは15周年という冠がついた作品で、チャレンジしたという面が強く、かつてプリキュアを見て育った人や親御さんに対しても、プリキュアに再注目してもらおうという流れがあったと思います。過去のプリキュアが一斉に登場する話数があったりと、一種のお祭りと言いますか、特別な作品でした。
したがって、新番組のスタプリに対しては、お子さん――特に3歳から新入学の女の子という年齢層――を外さず、その子たちが楽しんでくれるということを一番に考えていこうと思っています。
―― なるほど、15周年企画ということで想定視聴者がかなり広がっていたということなんですね。たしかに子どもにはちょっと難しいテーマもあったように思います。
柳川 そもそもスケジュール的に、前作の反応や結果を受けてから、企画を立てるということはなかなか難しいのです。プリキュアはその年々のシリーズディレクター、プロデューサー、そしてシリーズ構成の方針で全体のトーン・方向性が決まります。そして、スタプリはまず子どもたちが楽しめることを中心に置こうと考えました。
―― アクションシーンを毎回楽しみにしている子どもたちも多いですからね。
柳川 そうですね、3歳から新入学くらいのお子さんの発達は個人差も大きく、1歳違うだけで認知能力も劇的に変わるので、視覚的・直感的にも楽しめる作りを意識しました。1話については企画段階から、遊園地のアトラクションに乗っているような昂揚感ある映像にしたいという想いがあり、ロケットで地球を飛び出したり、無重力空間でバトルしたりとアクションも畳み掛けるようなテンポ感も拘ったポイントです。
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