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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第27回

サービス企業へ転換の姿勢を見せている:

iPhone不振でもアップル株が上がるワケ

2019年02月01日 16時00分更新

文● 松村太郎 @taromatsumura

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●中国市場の急減速が鮮明になった

 iPhoneの減速とともにより大きなインパクトを与えたのが中国市場の急減速でした。2019年第1四半期の中国市場での売上高は131億6900万ドルで、前年同期比で26.7%減少となりました。

 前年比の減少幅は実に47億8700万ドル。アップルが失った売上高よりも多くなっています。なお、米州市場は5%増、欧州3.3%減、日本4.5%減、アジア太平洋地域は1.1%増。他の地域の状況から見ても、中国市場が飛び抜けて悪いことが分かります。

 アップルは中国市場について、為替の問題だけでなく中国の景気減速について指摘してきました。2018年の中国のGDPは28年ぶりの低さとなる6.6%増。政府の目標である6.5%は達成されましたが、2018年は4〜6月期6.7%増、7〜9月期6.5%増、10〜12月期6.4%増と、成長の鈍化傾向が続いています。

 ティム・クックCEOはこれまで、米中貿易戦争については楽観的な見方を示してきました。アップルはこれまでに築き上げてきたサプライチェーンと中国での製造集約の体制を維持していきたいはずで、製造地として、また欧州に次ぐ市場としても成長してきた中国を、従来通り重視したい考えが透けてみえます。

 しかし米中摩擦は5GやAI、自動運転など次世代技術の覇権争いに発展しており、すぐ収束することはなく、米国の優位が確定するまで続くでしょう。

 アップルも決算発表で米国製造業への投資や積極的な部品などの採用の成果を強調し、またインドでのiPhone製造拡大への動きを見せました。製造拠点としての中国への依存度を下げる方向に転じかねない動きを見せるかもしれません。

 マクロ経済、地政学、そして中国当局の反応によっては、米国企業のアップルは中国市場でより多くの売上高を失ったり、体制の変更によるコストを支払わなければならなくなります。アップル「脱中国」の難しさを物語る一面でもあります。

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