教育は貧困と極端な思考をなくす
ユスフザイさんがテクノロジーイベントに参加するのは、今回のVMworld 2018が、生まれて初めてだったという。
一方のVMwareにとっても、VMworldの基調講演にこうした形でテクノロジー関係者以外の人物が登壇するのは初めてのこと。1998年に設立したVMwareは、今年ちょうど20周年の節目を迎えており、VMworldも今年で15回目の開催を迎える節目だ。その節目にあわせた特別な試みだったといっていいだろう。
ユスフザイさんは「テクノロジーの世界は、あまりにも三文字略語が多い」と指摘。対してプーネンCOOは「わからない三文字略語が出てきたら『vMotionは最高だ』と返せばいい」などとジョークを交えて返答。会場内には大きな笑いが起こった。
ユスフザイさんは、1億3000万人の女の子がなんらかの制約を受けて、学校に行けない状況にあることに触れながら「これを解決することは、彼女たちを助けることだけでなく、社会に貢献することにつながる。教育は貧困をなくし、健康を取り戻し、極端な思考をなくすことにつながる。教育が平等の基礎になる」と語る。
そして「教育をしなければ自ずと格差が生まれる。教育をしないということは、次世代のテクノロジーを使うことができない女性が増えることにもつながる。大切なのは、教育によって新たな世代が、新たなツールを利用できるための準備をしなくてはならないということ。テクノロジーを使って、すべての女性が情報にアクセスできるようになること、女性が必要なときに、必要な人に連絡が取れるようにするための支援が必要である」と語り、「教育を受けた女性たちが、新たなテクノロジーを使い、社会の発展や人類の発展に貢献してもらいたい」と期待を述べた。
基調講演の会場には、ラスベガスの地元高校から約100人の高校生が参加した。高校生からの公開質問を受けたユスフザイさんは「大切なのは自分たちの言葉の力を信じることである。いまは、テクノロジーを使って多くのものにアクセスできる。そうした環境にいることはとても恵まれている。テクノロジーをもっと活用してほしい」と呼びかけたほか、「変化を起こすのに、大人になるのを待つ必要はない。社会の批判やステレオタイプなイメージに負けずに、大きな変化に向けて、いまから声をあげてほしい」などと語った。
この場では、VMwareの親会社であるデル・テクノロジーズが、ラスベガスの高校にコンピューターを寄贈し、学生がテクノロジーにアクセスできる環境の実現を支援することも発表された。
テクノロジーの進化は目覚ましいが、そのテクノロジーを使うことができない環境にする人がまだまだ多いことも認識しなくてはならない。そして、それが格差を生む温床になる可能性もある。テクノロジーを使う環境を整備するためには、まずは教育環境を整える必要がある。
この連載の記事
-
第606回
ビジネス
テプラは販売減、でもチャンスはピンチの中にこそある、キングジム新社長 -
第605回
ビジネス
10周年を迎えたVAIO、この数年に直面した「負のスパイラル」とは? -
第604回
ビジネス
秋葉原の専門店からBTO業界の雄に、サードウェーブこの先の伸びしろは? -
第603回
ビジネス
日本マイクロソフトが掲げた3大目標、そして隠されたもう一つの目標とは? -
第602回
ビジネス
ボッシュに全株式売却後の日立「白くまくん」 -
第601回
ビジネス
シャープらしい経営とは何か、そしてそれは成果につながるものなのか -
第600回
ビジネス
個人主義/利益偏重の時代だから問う「正直者の人生」、日立創業者・小平浪平氏のことば -
第599回
ビジネス
リコーと東芝テックによる合弁会社“エトリア”始動、複合機市場の将来は? -
第598回
ビジネス
GPT-4超え性能を実現した国内スタートアップELYZA、投資額の多寡ではなくチャレンジする姿勢こそ大事 -
第597回
ビジネス
危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか? -
第596回
ビジネス
孫正義が“超AI”に言及、NVIDIAやOpen AIは逃した魚、しかし「準備運動は整った」 - この連載の一覧へ