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クラウドネイティブ時代を告げる「AWS Summit 2018」第6回

座学から初期設定、クラウドへのvMotion検証まで満漢全席

富士ソフトのプロが語るVMware Cloud on AWSの気になる中身

2018年06月12日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 AWS Summit 2018の最終日となった2018年6月1日、富士ソフトがVMware Cloud on AWSに関するセッションを行なった。エンタープライズユーザーにとって使い慣れたVMware環境をAWSインフラ上で利用できるVMware Cloud on AWSをプロフェッショナルが語ると言うことで、立ち見が出るほどの多くの聴衆が詰めかけた。

富士ソフト ソリューション事業本部 R&D部部長 山本祥正氏

VMwareユーザーにとって現実的なハイブリッドクラウドの選択肢

 富士ソフトはクラウド黎明期の2011年からAWSのパートナーとして数多くの企業のクラウド導入・運用を推進してきた。日本のみならず、中国リージョンの取り扱いも可能なほか、マイクロソフト製品を数多く扱ってきた経緯から、先日は国内2社となるAmazon EC2 for WindowsのSDP認定も受けている。

 一方、同社はVMwareについても早くから取り組んでおり、今回講演した富士ソフトの山本祥正氏もvExpert称号を獲得し、世界トップ100のスペシャリストにも選ばれている。そんなVMwareの専門家という立場から、年内にも国内で提供予定となっているVMware Cloud on AWSが解説されるということで、会場は立ち見もあふれた。

VMwareの実績も高い富士ソフト

 なぜVMware Cloud on AWSが注目されるのか? 山本氏は、「VMwareユーザーにとって現実的なハイブリッドクラウドソリューションだから」と指摘する。オンプレミスのvCenterと連携でき、仮想マシンの互換性が高いため、マイグレーションが容易。さらにAWSのサービスと緊密に連携できるという点がポイントになるという。

VMware Cloud on AWSのスタック、料金、サポート

 VMware Cloud on AWSはまさに名前の通り、AWSのインフラにVMwareのソフトウェアを載せたもの。36コアのCPU、512GBメモリを搭載したAmazon EC2 I3ベアメタルインスタンスをベースに動作し、最少4台から最大32台のクラスターを作成可能になっている。また、サーバー仮想化のESXi、仮想ストレージのvSAN、ネットワーク仮想化のNSXを載せることで、1つのSDDC(Software-Defined DataCenter)スタックを構成している。SDDCはオンプレミスやAWS VPCとの接続も可能で、最近はAZをまたいでVMware Cloud on AWSを利用できるストレージクラスターの機能もプレビュー版として提供されている。

重量級のリソースを持つベアメタル4台で1つのSDDCが構成される

 利用料はホスト単位で1時間ごとに課金される従量課金のほか、1年・3年の年間契約も選択できる。当然、従量課金よりも年間契約の方が料金は安く、「3年契約だと、従量課金に比べて約半分くらいになる」(山本氏)という。また、既存でVMwareライセンスを保有しているユーザーが年間契約を結ぶことで、よりディスカウントが効くようになっている。

 VMware Cloud on AWSはマネージドサービスとして提供され、プロビジョニングやユーザーのVMwareアカウントとAWSアカウントの紐付けも自動で行なわれる。ハイパーバイザと管理コンポーネントの管理はVMwareが実施し、AWSのインフラはエンドユーザーへのサポートをVMwareが提供し、メンテナンスはAWSが担当している。

VMwareによってエンドユーザーに提供される

オンプレミスからクラウドへのvMotionを検証

 概論を説明した山本氏は、次に画面を見ながら初期設定の様子を披露した。VMware Cloud on AWSでは、「VMCコンソール」でSDDCと呼ばれる最小4台のホストで構成されるVMware環境を作成することができる。VMCコンソールに表示される通り、おおむね2時間程度で1つのSDDCが立ち上がるとのこと。その後、VMCコンソールからファイアウォールなどの設定を行ない、VMware Cloud on AWS上のvCenterにアクセスするという流れになる。

VMCコンソールから見たVMware Cloud on AWSとオンプレミス、AWS VPC

 VMware Cloud on AWSでは、「ハイブリッドリンクモード」を用いることでオンプレミスとのvCenterサーバーともリンクできる。いったんリンクすれば、VMware Cloud on AWS上のvCenterにオンプレミス環境のIDでログインできるほか、オンプレミスとクラウド上のvCenterを1つのvSphere Clientから操作できる。披露されたデモでは、オンプレミスとクラウドのvCenterはIPsec-VPNで接続されており、マネージメントコンポーネントの通信が可能となっていた。また、オンプレミスとクラウド間の仮想マシンの接続はL2VPNを介して行なわれていた。このような接続を行なうことで、両側の仮想マシンをマイグレーションでき、まさにハイブリッドなクラウド環境を実現する。

オンプレミスとVMware Cloud on AWSの仮想マシン移行

 とはいえ、ハイブリッドリンクモードを利用するには、vCenterのバージョンやネットワーク遅延、ユーザーアクセス権限、時刻同期、名前解決などさまざまな要件が存在するという。さらにvMotionによるホットマイグレーションを実現するためには帯域幅や分散スイッチの利用に加え、AWS Direct Connectが必要になり、検証の敷居が高かったという。

 そのため、同社はAWS Direct Connectを使わない「Hybrid Cloud Extension(HCX)」というサービスを利用して、vMotionを検証した。HCXには複数のvSphere環境を連携する複数のコンポーネントが含まれており、VMware Cloud on AWSを契約したユーザーは追加費用なく利用することができる。 HCXを利用することでオンプレミス・クラウドでの双方向マイグレーションや、オンプレミス環境とのL2延伸やWAN最適化の機能も提供される。

 特筆に値するのはオンプレミスとクラウドのvSphereバージョンが異なっていても高い互換性を提供する点で、ハイブリットクラウド環境を構築し仮想マシンをマイグレーションする現実的なソリューションと言える。パワーオン状態の仮想マシンをマイグレーションするには、ホスト間でレプリケーションを行なうことで仮想マシンをマイグレーションする「HCX Bulk Migration」とvMotionプロトコルを用いて無停止でマイグレーションする「HCX Cross Cloud vMotion」の2つの方法が用意されているという。山本氏は、画面を見ながら日本のオンプレ環境からオレゴンリージョンに対してのHCX Cross Cloud vMotionを披露した。

DirectConectを用いず、vMotionを実現できるHybrid Cloud Extension

 セッションの最後、山本氏はAWSとの連携を紹介する。VMware Cloud on AWSはSDDCを作成する際に、AWSのアカウントを指定するため、AWSのサービスと緊密に連携する。たとえば、VMware Cloud on AWSで仮想ネットワークを追加すると、接続されたVPC側でも自動的に認識され、ルーティングテーブルも更新される。また、ALB(Application Load Balancer)を用いることで、VMware Cloud on AWS上の仮想マシンに対して負荷分散を行なうことも可能だという。

 山本氏は、「VMware Cloud on AWSに関して、さまざまな検証をしているため、興味があれば問い合わせて欲しい」とアピールし、エンタープライズユーザーやSIerに響くセッションを終えた。注目を集めながら、実際の検証結果を聞くことができる数少ない機会になっており、VMware Cloud on AWSの中身を理解できた興味深いセッションだった。

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