BigQueryにSQL文で使える機械学習機能を追加:2日目キーノートまとめ
エッジ向け深層学習チップ「Edge TPU」を10月外販へ、Google Cloud Next’18
2018年08月03日 08時00分更新
Googleは2018年7月24日~26日(米国時間)、サンフランシスコでGoogle Cloud Platform(GCP)のイベント「Google Cloud Next 2018」を開催した。オンプレミス版のGoogle Kubernetes Engine(GKE)などが発表された1日目に続き(関連記事)、2日目には、GCPのDWHサービスBigQueryに機械学習の機能を追加した「BigQuery ML」、エッジデバイス向けの深層学習専用チップ「Edge TPU」などが発表された。
DWH内で簡単なSQL使い機械学習を実行
BigQuery MLは、GCPのDWHサービスBigQueryに、カスタムの機械学習モデルの開発や、DWH内のデータに対する推論を実行する機械学習機能を追加したサービス。DWH内の構造化または半構造化されたデータセットを対象に、SQL文を使って、売上予測や顧客セグメント作成などの予測分析を行うことができる。
2日目キーノートでBigQuery MLをアナウンスしたGoogle Cloud Director of Product ManagementのRajen Sheth氏は、「DWHの中で機械学習が実行できるので、機械学習のためにデータを他のフレームワークへ移動させる必要がない」と説明した。また、BigQuery MLは単純なSQL文で機械学習モデルを構築、デプロイできるのが特徴だ。「データサイエンティストは少ないがSQL文を扱えるデベロッパーは多い。世界に2000万人いるデベロッパーが深層学習や機械学習を活用できるようになる」(Sheth氏)。
BigQuery MLの先行導入事例として、米国映画会社の20th Century Foxが紹介された。Foxでは、SQLで線形回帰モデルを作成して、BigQuery内のオーディエンスのデータから番組ごとの視聴予測を行っている。推論計算がBigQuery内で完結するため、数分で結果が得られるという。
BigQuery MLは、同日ベータ版が利用可能になった。さらに、BigQueryのアップデートとして、クラスタ化されたテーブルを作成する「BigQuery clustering」(ベータ)、Google Earthの地理空間データとBigQueryを機能統合した「BigQuery GIS」(パブリックアルファ)が発表されている。
Google独自開発の深層学習チップTPUがエッジに
2日目キーノートではまた、エッジデバイス向けの深層学習専用チップ「Edge TPU」が発表された。Edge TPUは、Googleがこれまで自社データセンターのサーバーに実装していた自社開発の深層学習用カスタムチップTPU(Tensor Processing Unit)を、エッジデバイス向けに小型化、省電力化したもの。深層学習フレームワークTensorFlowの軽量版「TensorFlow Lite」を利用して、エッジデバイス上で深層学習の推論を実行する(推論に特化し学習には対応しない)。
キーノートでEdge TPUを披露したGoogle Cloud IoT VPのInjong Rhee氏は、開発背景について「コンプライアンスやプライバシーの観点で、データをクラウドに送らずに収集した場所で処理したケースがある。ネットワークがなくデータがクラウドに送れないときもある」と説明。「Edge TPUは、1W当たり、1ドル当たりの処理性能を高めることに取り組んだ。エッジコンピューティングのゲームチェンジャーになるもの」(Rhee氏)と述べた。
Edge TPUのサイズは、1セント硬貨の4つ乗るほど小さく、2Wの消費電力で4TOPSの演算性能を発揮する。オランダNXP製のArm CPU、Wi-Fiモジュール、I/Oポートなどを搭載した開発キットに組み込んだ形で、2018年10月に一般に発売される予定だ。
併せてRhee氏は、Edge TPU向けのソフトウェアスタック「Cloud IoT Edge」を発表した。OSとしてAndroid ThingsとLinuxに対応し、TensorFlow Liteのランタイム「Edge ML」、ゲートウェイ機能の「Edge IoT Core」の2つのコンポーネントで構成される。Edge IoT CoreはEdge TPU搭載デバイスをGCPに接続する機能で、GCP側で学習した機械学習モデルをEdge TPUへエクスポートする。また、Edge TPU搭載デバイスをGCPに接続して、ソフトウェアやファームウェアの更新ができる。