その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第23回は、デジタルマーケティング支援を手がけるメンバーズ。女性管理職比率30%を達成した女性活躍推進について全社プロジェクトを率いる早川智子氏、時短勤務の管理職である木村茉夢氏に聞いた。
女性比率の高い若手の抜擢で、管理職の女性比率も増加
働き方改革やダイバシティ経営の1つの指標として用いられることの多い「女性管理職比率」。就業者の女性比が欧米並みなのにもかかわらず、管理職比率は8~13%程度とアジア諸国でも最低水準にとどまっている。政府も2020年までに30%に引き上げようとしているが、制度や文化の課題から実現まで立ち往生している企業も多い。
今回、取材したメンバーズは全社的な働き方改革を2016年度から開始しており、3年間で年収20%UPを実現するとともに、残業時間の半減・生産性向上を進め、さらに育児や介護などのライフイベントにも柔軟に対応できるようにする。こうした取り組みの中、従来15%程度だった女性管理職比率を「3年間で30%以上に引き上げる」という目標を早々に達成したという。
とはいえ、女性を不自然に優遇したり、条件を変えたりといった施策はやっていない。メンバーズはグループの社員の約半分が30歳未満と圧倒的に若手比率が高く、しかも女性社員の増加で男女比も近年1対1に近づいているという特殊事情がある。メンバーズの早川智子氏は、「管理職を増やすには、その候補生にあたるリーダー職を多く登用する必要がありました。そこで男女が均等な若手をリーダーとして抜擢したところ、自然と女性の管理職比率も高まりました」と分析する。
一方で、子育てと仕事の両立支援制度を男性社員がどれだけ利用しているかもベンチマークしており、こちらも12%から50%にまで引き上げる見込み。「女性社員の活躍は、男性社員の意識や受け入れ方、考え方が色濃く反映されます。だから、育児休業や時短勤務、在宅勤務などの制度を、まず男性が使ってほしいという意図があります」(早川氏)とのことで、ママをサポートする各種制度を男性が積極的に使うよう推進しているという。
育休明けて復帰するたびに制度がよくなっていった
続いて育休を取得後、時短の管理職として働いているメンバーズの木村茉夢氏にも話を伺った。木村氏は、2人目の育休から復活した後、1年半のユニットリーダーの期間を経て、昨年ユニットプロデューサーとして管理職に昇格。現在はユニットの業務管理や社員の教育、予算管理などを担当している。
木村氏自身が育休を取得していた時期は、女性比率が高まってきたメンバーズが制度や働き方を変えていこうという過渡期だった。「ある意味、私がロールモデルになっているんですが、育休明けて復帰するたびに制度がよくなっていました。私が復帰したときには時短勤務制度が利用できましたし、同時期に復帰できない人がいたら、育休期間が延びるといった制度の整備が進みました」と木村氏は語る。
現在、木村氏は朝と夕方で1時間ずつ短い10~17時の時短勤務だが、過不足は感じていない。「確かにお客様と差し向かいの場合は同席したいシーンは多々ありますが、チームメンバーで業務を分散していますし、時短勤務での生産性の高い働き方がチームの標準になっています。だから、他のメンバーの生産性も高まり、残業も自ずと減っているはず。そういう業務の進め方自体も、私の上司が理解してくれています」と木村氏は語る。制度面だけではなく、時短への理解や生産性の向上についての意識がきちんと企業文化として根付いているわけだ。
移り変わりの激しいWeb業界で、20年以上に渡ってビジネスを成長させてきたメンバーズにとって、会社の制度は社内の状況や市場によって刻々と変化していくもののようだ。「今ある制度がベストだとは思っていません。数年後には、人数的に多い若手が結婚や出産の適齢期になるので、状況もずいぶん変わってくるはず。適性や意欲のある女性スタッフには、早めに管理職にチャレンジしてもらう機会を作らなければならないと思っています」(早川氏)と、すでに次を見据えている。
会社概要
経営理念に「“MEMBERSHIP”でマーケティングを変え、心豊かな社会を創る」を掲げ、国内大手企業を中心とした顧客企業に対し、デジタルマーケティング分野における戦略立案から企 業Webサイトの構築・運用、ソーシャルメディア活用等の支援サービスを総合的に提供しています。1995年創業。東証一部上場。
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