Adrenalin Editionの一番の見どころは、ゲーム中にホットキー[Alt+R」を押すことで展開される「Radeon Overlay」だ。従来のReLiveのホットキー[Alt+Z]を置き換える形になったものだが、単なるReLiveの制御だけでなく、スクリーンショットやパフォーマンス監視機能の呼び出し、さらにはFrame Target ControlやRadeon Chillといった省電力系の機能にアクセスすることができる。これまで設定を変えようと思ったらデスクトップに戻ってRadeon設定を……という無駄な操作が、ゲーム画面上で完結するようになったのだ。
このRadeon Overlayを展開している最中はマウスの操作は完全に奪われてしまうが、キー操作はゲームに残っている。FPS系ゲームならRadeon Overlayを開いたら棒立ちになって撃たれ放題という訳ではなく、物陰に移動して隠れる程度のことができるのは評価すべきところだろう。
Radeon Overlayは標準で有効になっている。ホットキーを変更したい場合は「Radeon設定」内の「環境設定」で変更する
ゲーム中に[Alt+R」を押すと、画面右側からRadeon Overlayのコンソールが出現する。ゲームがウインドウまたはボーダーレスウインドウモード(左)とフルスクリーンモード(右)と、モードによってメニューが違うことに注意。この辺りは少々ツメが甘いと感じた。使用したゲームは「Assassin's Creed: Origins」
この中で一番使うであろうと思われるのが録画機能「ReLive」関連のメニューだ。録画やストリーミングの開始・停止からインスタントリプレイの保存、スクリーンショットの保存といった機能にアクセスできる。画質を変更する機能がないのが残念だが、これまでのReLiveのコンソールよりもずっとわかりやすい。
ReLiveのページを開けば「インスタントリプレイの保存」を筆頭に、録画やスクリーンショットの保存などといったメニューが出てくる。録画やストリーミングはこのボタンを押しただけで起動する。停止するのも同じ手順で行なう
「設定」ページではマイクの音量やオーバーレイするWebカメラ画像(後述)の調整が可能。画質の調整ができないのは残念
今回ReLiveにはライブ配信するゲーマーにとって便利な機能がいくつか搭載された。まずひとつめはWebカメラの画像をオーバーレイ表示する機能にクロマキー合成が加わったこと。これまでもWebカメラの映像をオーバーレイ表示はできたが、映像が四角く表示されるだけだった。
今回はバックの色を指定することで、大抵のクロマキー用スクリーンに対応できる。この機能はCPU負荷も低めなので結構使い勝手もよい。ただ綺麗に切り抜かせるためには、若干の試行錯誤が必要となるだろう。
「Radeon設定」内の「ReLive」→「オーバーレイ」を開くと、Webカメラのクロマキー合成に関する項目にアクセスできる。「クロマキーの色」欄に示されている16進のカラーコードを変更すれば、抜き色の微妙な調整も可能だ
ちなみに「Radeon設定」→「ReLive」→「録画」で「別個のマイクトラック」を有効にしておくと、PCのマイクで拾った音が別のファイルとなって保存される。変なことを口走った時、あるいは編集で自分の声は後から付け加えたい時に役立つだろう
「ETS2」でReLiveのクロマキー機能を試したところ。クロマキーの強度を少し下げないと、こんな感じで顔の影の部分も切り抜かれてしまうようだ(筆者の背景に青バックを置いて検証)
もうひとつはプレイ動画をストリーミングする際、チャット欄の内容を画面上に直接表示する機能だ。こうした機能は「OBS」などの配信ツールの機能として実装されていることが多かったが、Radeonユーザーなら標準ドライバーで利用できるというのがありがたい。ただし日本語のフォントが荒いなど、高品質とは言いがたい部分も残されている。
ReLiveで直接ストリーミング配信をするには、「Radeon設定」→「ReLive」→「ストリーミング」を開き、アカウント情報や画質などを予め設定しておく
「Assassin's Creed: Origins」でTwitch配信を試したところ。画面左上にチャット欄が表示されているのが分かるだろうか? テスト時の画質がフルHDだったせいか、フォントの輪郭にジャギーが出ており、あまり美しくないのが残念
また、新規に追加された「パフォーマンスメトリクスの表示」機能を有効にすると、GPU温度やクロックといったRadeonの状態をゲーム画面に表示させておくことができる。これまでは、このようにPCの情報を表示するには「Afterburner」や「CAM」といった専用ツールが必要だったが、Adrenalin Editionではこれも不要になる。
さらにこの機能を利用してフレームレートやGPU温度のログを保存する機能も備わっている。Radeonをパワーアップしたがフレームレートはどう変化したか、GPUの温度推移はどうなっているのか……といったデータを残せるのは非常にありがたい。
パフォーマンスメトリクス上に表示させたい項目やログの保存先、機能を有効化するホットキーの設定は「Radeon設定」→「ゲーム」→「パフォーマンス監視」で細かく指定できる
Radeon Overlayで「メトリックを表示」をオンにしよう。デフォルトでは画面右上にデータの一覧が表示される。記録を残す場合は「パフォーマンスロギングを開始」をオンにする
Radeon Overlayからでもパフォーマンスメトリクス内に表示する項目の取捨選択は可能だが、ログの保存先やホットキー変更といった細かい設定はできない
ログはCSV形式なのでExcel等の表計算アプリを利用すれば閲覧や分析が可能だ
その他、Radeon Overlayからは画面の色味の変更やフレームレートターゲットコントロール、あるいはRadeon Chillの設定変更が実行できる。
軽いゲームなどでフレームレートが出すぎて電力を無駄に食うことがないようリミッターをかけるのが「FRTC」ことフレームレートターゲットコントロール。30~300fpsの間で好きな値を指定しよう。ちなみにRadeon Chillとは排他利用となる
ゲーム画面の色温度などを変更できる機能も搭載。映像を出力する寸前で変更しているので、スクリーンショットを撮影しても色味が変わることはない
ゲームを操作していない時にCPUやGPUを休ませる「Radeon Chill」もRadeon Overlayから直接オン・オフしたりターゲットとなるフレームレートを変更することができる