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柳谷智宣のkintoneマスターへの道 第29回

医療現場にいる開発者が語るkintoneがもたらしたもの

2017年11月17日 11時00分更新

文● 柳谷智宣

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kintone導入により生じたメリット

 「そこで、kintoneという話になります。kintoneはシステムの要件定義から設計、開発までの全部を自分たちでできます。ダメだったら、自分たちですぐ立ち戻ればいいんです。トライアンドエラーのコストがすごく安い。そして、自分たちが作れないと困ったら、SEさんに頼めばいいんです。その時は、困っているので要件がしっかり定まった状態で依頼できるのがいいところです」(前田さん)

kintoneなら、トライ&エラーのコストが安い

 現在は、訪問治療したらノートPCを開いてkintoneに入力し、PDFを作成するというボタンをクリックする。続けて、FAXボタンをクリックすれば、書類を送らなければならな人たちに、その場でネット経由のFAXが送信される。kintoneだけでは作れない機能は、外部のプライグインを活用。そして、訪問診療部は帰ってきてからの事務作業から解放されたそう。昼間に事務員に連絡が来ても、kintoneにすべてが入力されているので、その場で返答ができる。そのため、折り返しの連絡作業からも解放された。結果、全員が毎日2時間の時短を達成し、大幅な業務効率改善ができたのだ。

 「効率化したのはすごいんですが、もう1個大事な視点があります。書類作成という医療者本来の仕事ではないところを削ることによって、医療者が患者さんの横にいる時間が増えるんです。本質的な業務の時間を増やせたというのが素晴らしい成果なのかな、と思います」(前田さん)

すべての職種の人がデータをkintoneに集約

業務効率が改善し、さまざまなメリットが生まれた

質疑応答タイム

 最後に、質疑応答タイム。まずは、このkintone裏AWORDを企画したアスキーの大谷さんから「kintoneに行きついた経緯は?」という質問。

 「私の入職前に、当院の医院長がサイボウズの事例動画にも出ている企業に見学に伺っていたんです。そこで、kintoneを導入すべきだ、という流れはすでにあり、私の入職に合わせてkintoneをはじめました」(前田さん)

質疑応答タイムの最初は、このkintone裏AWORDを企画したアスキーの大谷さん

 「システムを作るにあたって外部のSEに頼んでいたことを自分でできるとおっしゃったが、裏を返せばすべて自分がやらなければいけないのか? ということに対しての抵抗感はなかったですか?」(大谷さん)

 「もともと医療システムを作ると、現場に即していないものができるというのは有名な話です。手間が増えるというよりは、むしろそれができるというのが、私にとっては希望でした。100%のものはできないんですが、70%でいいんです。100%が欲しいという発想が悪で、現場は刻々と変わるし、スタッフも変わります。だから70%をキープするシステムの方が大切で、だからこそkintoneは医療の現場と親和性が高いと感じています」(前田さん)

 「実際に使っているエンドユーザーさんの反応はどうでしたか? ITリテラシーもデバイスもまちまちだと思いますが」(大谷さん)

 「まず残業に困ってる現状があったので、導入はぱっとできました。「私は家に帰って、家族とご飯食べられるのね」って感動していました。正直に言うと、操作方法の問い合わせはたくさんきました。ただ、きちんと説明すると、今度はその人がほかの人に教えてくれるティーチャーになってくれます。また、現場が言ってくれるニーズは、おおむね的を射ています。我々が面倒くさがらずに対応して、一緒に楽しくkintoneを作っていくっていうのが重要だと思います」(前田さん)

 「今後、どのようにシステムを展開していきますか?」(大谷さん)

 「実は、まだkintoneにつながっていないシステムがいくつかあるので、それを飲み込んでさらに事業の効率化を図っていきたいです」(前田さん)

 別の質問者は、800人くらいが働く医療機関に勤めている男性。質問は、「厚生労働省が医療情報に対してのセキュリティー制限をかけようとしていますが、kintoneの個人情報の扱いはどうなっていますか?」というもの。

 「電子カルテだと、セキュリティー要件などが定められているのですが、今回kintoneで作ったシステムは電子カルテとしては扱っていません。そのため、ガイドラインはないんですが、私もそこは気になっているところでした。いろいろ調べたのですが、おおむね問題はありません。

 ただ、携帯を紛失して、ロックを解除されたらそのままkintoneにも入られてしまいます。今、私たちもセキュアアクセスを導入して、携帯を紛失したら、すぐに遠隔操作でアクセスできないようにする仕組みを作ろうとしています」(前田さん)

 前田さんの医療への想い、kintoneの積極的な活用、実現した大きな業務改善の成果、など確かに裏kintone AWORDを企画したくなるのも納得のプレゼンだった。今後も、前田さんは医療の現場でkintoneを駆使して活躍してくれることだろう。

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