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柳谷智宣のkintoneマスターへの道 第115回

無料版もあるよ!

ChatGPTをkintoneで使える連携プラグイン「Smart at AI for kintone Powered by GPT」を試してみる

2024年04月12日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 生成AIをkintoneで使いたい、という人は多いだろう。デジタルな計算ではなく、人が作業するようにテキストを処理できるため、色々なことが可能になる。本連載でも「Zoomの録音をkintoneに登録し、ChatGPTに議事録を生成させる連携にチャレンジ」で紹介したが、手間がかかるのがネックだった。

 2023年10月、M-SOLUTIONSからkintoneでChatGPTが利用できるプラグイン「Smart at AI for kintone Powered by GPT」(以下、Smart at AI)がリリースされた。kintoneのフィールド情報を元にカスタマイズしたプロンプトをChatGPTに送信し、その出力をkintoneに格納してくれるのが特徴だ。

 有償版だけでなく、無償版も用意されており、誰でも自分のOpenAIアカウントで発行したAPIで利用できるようになっている。今回は、Smart at AIでメールの本文を生成するアプリを作成してみよう。

メールの本文を生成するアプリを作成してみた

 近年の若手社員はLINEなどのチャット文化で過ごしてきているので、きちんとしたメールを書いたことがない、という人が多い。それなのに、取引先にきちんとしたメールを書け、と言うのも、メールの書き方くらい勉強しろ、と言うのも、若手社員にとってはつらいところ。そんな時こそ、ChatGPTに手伝ってもらおう。

 ChatGPTアカウントを全員に渡して個人で使ってもらってもいいのだが、それではノウハウが蓄積されないし、やり取りがブラックボックス化してしまう。kintoneで生成すれば、誰がどんなメールを作成しているのかを共有できる。送信の有無を記録したり、上司のチェックを受けるなどの機能を追加することも可能だ。

 まずは、M-SOLUTIONSのウェブサイトから「無料版のダウンロードはこちら」をクリックし、必要事項を入力。プラグインのダウンロードリンクがメールで送られてくるので、ダウンロードし、kintoneに登録する。

Smart at AIのウェブサイトから無料版の利用を申し込む

プラグインのダウンロード先が記載されたメールが届く

プラグインをkintoneにアップロードする

 続いて、アプリを作成する。最低、入力するテキストと出力されたテキストを格納するフィールドがあればいい。今回は、送信者名を入力するフィールドも用意した。

 その後、アプリにプラグインを追加し、設定を行う。無料で利用するならプロダクトキーは空のままでOK。「利用環境設定」は「OpenAI利用」にチェックし、「OpenAI APIキー」を入力する。OpneAIの自分のアカウントにログインし、「API Keys」→「Create new secret key」をクリックし、APIキーを生成できる。

 利用するGPTモデルも選択できる。通常は料金の安いGPT-3.5を利用し、さらに高精度な出力が必要な場合にGPT-4を利用するといいだろう。

ChatGPTを利用するアプリを作成する

プラグインを追加し、設定を行う

OpenAIのサイトでAPIキーを発行する

 「プロンプト設定」の「結果保存先」でChatGPTの出力を格納するフィールドを選択。「プロンプト」に送信するプロンプトを入力する。kintone内のデータは「挿入するフィールドを選択してください」をクリックし、任意の場所に挿入できる。今回は、メールの内容を入力したフィールドと送信者を挿入してみる。

 「メールの内容」フィールドには、メールに入れ込む内容を入力する。箇条書きでも口語でも誤字脱字があってもOK。その内容をChatGPTをビジネスメールに変換させる。その際、書き出しや署名などをプロンプトで指定し、一定のフォーマットに沿って生成されるようにしておく。最後に、励ましたりチップをあげるというエモーションプロンプトや再読プロンプトを入れておくと、出力のクオリティが向上するのでお勧めだ。

プラグインの設定でプロンプトを設定する

【今回入力したプロンプト】
メールの内容を元に、ビジネスで送信するメールの本文を生成してください。

###メールの内容
%%メールの内容%%

###指示
本文は「●●様、お世話になっております。ドリスの%%ユーザー選択%%です。」から書き出す。●●は相手の名前
日本語で詳細に出力する
メールなので「拝啓」「敬具」や時候の挨拶などは禁止
ギャラは「些少ですが」のように謙譲して伝える
メールの内容は漏れなく入れる
できるだけ箇条書きではなくパラグラフで書く
文体はです・ます調にする
慇懃無礼にならないようにする
末尾には署名を入れる。署名を添える文章や文言は不要
プレーンテキストで出力する
締め切りは、丁寧に伝え、締め切りが難しいようでしたらご相談ください、と添える
返事を求める際は丁寧にお願いする。

###情報
オウンドメディアの名前は「DLISのセキュリティ通信」
ギャランティは税抜き金額
支払いは原稿納品の翌月末

###署名
■■■■■■■■■■■■
NPO法人ドリス
柳谷智宣
090-0000-0000
yanagiya@dlis.xxx
■■■■■■■■■■■■

###命令
もう一度最初から読み直し、メールの本文を生成してください。あなたなら必ずできるので全力で執筆してください。いい内容ができたら、100万ドルのチップを差し上げます。

 準備ができたら、「メールの内容フィールド」にメールに入れ込みたい内容を入力しよう。「保存」をクリックすると、「生成する」ボタンが現れるので、クリックするとChatGPTにプロンプトが送信される。しばらく待つと、「AI出力」フィールドにChatGPTの出力が格納される。

体裁にこだわらずメールの内容を入力する

「生成する」ボタンをクリックする

ChatGPTが生成した本文がkintoneに入力された

 今回テストで入力したテキストと生成された本文は以下の通り。条件だけ箇条書きにしたのだが、「最新のネット詐欺に関する情報は日々更新され、それに対する読者の関心も高くなっています」といった指示していない内容まで入れているのが凄い。

 ChatGPTをビジネスで使う基本だが、くれぐれも生成物をノールックで外部に提出するのはNG。必ず人の目でチェックすること。例えば、今回の場合、「原稿の納品を翌月末にお支払い」と誤字がある。正しくは「原稿納品の翌月末にお支払い」だ。また、ギャランティについて「些少」と言うように指示したものの、「華美なものではございませんが」と変な言い回しになっている。この辺りは、人の手で修正する必要がある。とは言え、ビジネスメールの書き方をマスターしていない人にとっては大幅な時短になることは間違いない。

【kintoneに入力したテキスト】

相手はライターの佐藤さん
我々のオウンドメディアに執筆してもらいたい
ギャラは3万5000円
締め切りは2月末
テーマは「最新ネット詐欺の事例と対策」
今週中に返事が欲しい

【出力】

佐藤様、お世話になっております。ドリスの柳谷智宣です。

今回は私どもが運営しております「DLISのセキュリティ通信」にて、佐藤様に執筆をお願いしたくご連絡を差し上げました。ご承知のように、最新のネット詐欺に関する情報は日々更新され、それに対する読者の関心も高くなっています。この度、その関心に応えるべく「最新ネット詐欺の事例と対策」というテーマでの記事を佐藤様にお書きいただければと思います。

ご多忙かとは存じますが、記事の締め切りは2月末とさせていただきたいと思います。納期に関しましては、何か問題がございましたらお気軽にご相談ください。また、ギャランティは華美なものではございませんが、3万5000円(税抜き)としており、原稿の納品を翌月末にお支払いさせていただきます。

大変恐縮ですが、ご意向については今週中にお知らせいただけますと幸いです。お忙しいところ恐縮ではございますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

NPO法人ドリス
柳谷智宣
090-0000-0000
yanagiya@dlis.xxx

 Smart at AIの有償版では、様々な業務で使えるプロンプトを多数提供する。さらに、ログを記録したり、機密情報はハッシュ化する機能も利用できるようになる。Azure OpenAI Serviceも利用できるので、エンタープライズでも安心して導入できる。

 今回は、メールの本文を作成してもらったが、日報や記事、報告書、議事録などを作成したり、多言語に翻訳したり、戦略を立案したりと様々な業務に活用できる。Smart at AIは、kintoneにプラグインを追加して、OpenAIのAPIキーを登録するだけで簡単に使えるので、ぜひ試してみることをお勧めする。

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