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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第424回

業界に痕跡を残して消えたメーカー 最先端PDAに時代がついてこなかった不運のGeneral Magic

2017年09月11日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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ソニーから最初の製品が登場
携帯通信端末の夜明け

 1994年9月28日に、Magic Capを搭載した最初の製品としてソニーからMagic Link PIC-1000が発表された。

ソニーの「Magic Link PIC-1000」。オプションも全部込みの写真。キーボードが129ドル、Pager Card(右上)が249.95ドル、ヘッドセット(左のイヤホン風のもの)が79.95ドルとなっている

 プロセッサーはPalmと同じ、MotorolaのMC68349、通称Dragon 1の16MHz駆動で、1MB DRAM/4MB ROMを搭載する。液晶はモノクロ4階調の480×320ピクセルで、感圧式のタッチスクリーンになっており、スタイラスを使って入力できた。他に2400bpsのモデムを内蔵、電源は単三乾電池×6という構成で、価格は950ドルである。

 発売の少し後に、SONY Americaで当時VP Sales & MarketingのポジションにいたBrian Sroub氏がTVショーに出てPIC-1000を紹介している録画がYouTubeに上がっているが、これを見ればどんなことができたか、だいたいおわかりかと思う。

 ちなみに、前述のとおりPIC-1000の発売に合わせてAT&TはPersonalLinkというTelescriptサービスの提供を開始しており、ユーザーはこれを契約して使う形になっていた。今で言えば、Androidを使うために回線契約をするようなものだと思えばいい。

45日を過ぎると正常に動作しない「Envoy」
データを勝手に消してしまうバグまで!

 ソニーのMagic Linkに続き、Motorolaが1995年1月にEnvoyをリリースする。

Motorolaの「Envoy」。このアングルだと見えにくいが、右上にはアンテナも内蔵されていた

 この頃はまだ市場もMagic Capデバイスにまだいろいろ希望を持っていた。それもあってGeneral Magicが1995年2月に新規株式公開を行なった際には、株価14ドルでスタートしたところ、最高値で32ドル、初日の終値で26.625ドルが付いた。

 当初は13ドルで400万株を公開予定だったのが、証券会社のアドバイスもあって14ドルで550万株に増やし、最終的には680万株が取引されたという。これがある意味、同社の絶頂の瞬間である。

 このあとGeneral Magicへの関心は急速に低下していく。理由の1つは安定しないソフトウェアである。Envoyに搭載されたカレンダーは、起動後に45日を過ぎると正常に動作しなくなる。またEnvoyには、データを勝手に消してしまうバグがあることも発見された。いずれもEnvoyの発売後の話である。

 さらに、1994年頃から一般ユーザーにも利用可能になったインターネットへのアクセス手段がない(AT&T Personal Link経由でアクセスできたが、それはどちらかといえば苦痛に近い作業だった)ことも問題視された。

 Palmと異なり単独では大した作業ができず、だからといってAT&TのPersonal Linkを使えばなんでもできるわけではないあたり、明らかにPalmよりも使い勝手が悪く、大きく、しかも高価だったというあたりが最後にトドメをさした格好か。

 結局1995年後半に入ると、PIC-1000は399ドルあたりまで値下がりしており、それでも売れ行きは悪かった。

 こうなると卵と鶏ではないが、AT&TのPersonal Linkを利用するユーザーも減っていき、AT&Tとしてもサービスを提供する意味が薄れてくる。けっきょくAT&Tは1996年6月にサービスを終了し、その瞬間にMagic Capデバイスは存在意義をなくすことになってしまった。

 ちなみに日本では1994年に日本向けMagic Capデバイスの開発がNTT/ソニー/General Magicで行なわれ、米国向けのPIC-2000を日本向けにしたPIC-2100Jというモデルが完成する。一方NTTはTelescriptサービスを提供するPaseoというサービスを用意した。このPaseoとPIC-2100Jは1996年に250人ほどに提供され、1年間のテスト期間を経てPaseoそのものも終了して終わっている。

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