VOXは新型真空管「Nutube」を搭載した初の製品として、超小型ギター用ヘッドアンプ「MV50」を3月25日に発売した。
NutubeはVFD(蛍光表示管)で有名なノリタケ伊勢電子とコルグの共同開発によるもので、従来の真空管より低電力で動き、発熱も少なく、小さな筐体に収められる。MV50はそうしたNutubeのメリットをわかりやすく形にした製品だ。
MV50の外形寸法は標準的なストンプボックスサイズのエフェクターと大差なく、重量はわずか540gに過ぎない。ACアダプターと合わせても、ギターのギグバッグに難なく収められる。
にも関わらず、Nutubeを使ったプリ段と、クラスDのパワー段によるハイブリッド構成で、MV50は最大50Wの出力を発揮する。一般的なギター用スピーカーキャビネットと組み合われば、リハーサルスタジオからライブハウスまで対応できるパワーだ。
また、ヘッドホン/ラインアウト端子にはキャビネットシミュレーターも搭載されており、自宅練習やDTMのような用途にも使える。こうした応用範囲の幅広さもMV50のウリのひとつ。
MV50はサウンドキャラクター別に「ROCK」「AC」「CLEAN」の3種が用意され、店頭価格はそれぞれ2万1600円。同時に発売された小型8インチスピーカーキャビネット「BC108」は1万800円。MV50とBC108のセット販売もあり、こちらはROCK、AC、CLEANともに2万8080円。そして4月末には本格的な12インチスピーカーキャビネット「BC112」の発売も控えている。
そのMV50開発陣へのインタビュー3回目は、実際にスピーカーキャビネットに接続して、どれくらいの音量が出るのか。バンドの大音量の中で使いものになるのか。そして小型キャビネットの「BC108」でどこまでイケるのか。以上を確かめてみた。
音でかい! バンドで普通に使える!
―― MV50で気になるのは音量です。見た目も小さいし「クラスDの50Wなんて大したことない」という見方もあってですね……。
李 じゃ、キャビネットにつないでみましょうか。四本さんはギター弾いてください。
―― えっ。
江戸 バンドでやってみましょう。
―― ええっ。
李 やっぱり音量の確認はバンドでやらないと。
というわけで、気がついたら李さんはスティックを握りドラムセットを前にしており、江戸さんはベースを構えてブリブリ弾き始めていた。ここから先は3人で楽器を鳴らしながらの取材となったが、お二方とも楽器はめちゃくちゃお上手なので、下手な私はまさに羞恥プレイのような状態。それでも音量だけはなんとか確認できた。
ここでMV50のパワーをおさらいすると、接続するスピーカーが16Ωなら12.5W、8Ωなら25W、4Ωで最大の50W。今回用意されていたキャビネットは、VOXがMV50用に開発した 8インチユニット1発のBC108と、12インチユニット1発のBC112、そして4発の12インチユニットを搭載するマーシャルの「1960A」である。
実用的観点で言えば、まずマーシャルのキャビネットで使えるかどうか。これは大抵のスタジオやライブハウスに置いてある標準的な機材で、もしこれで使える音量が出れば、MV50をギグバッグに入れて出かけるだけで、日本全国大抵のところでバンド活動ができることになる。
で、結論としてはもう全然問題ない。マーシャルの1960Aは4発のユニットを並列接続する4Ω、そして直列接続する16Ωが選べる。が、16Ωでも余裕。ボリュームノブ半分くらいでドラム・ベースとのバランスはイーブンになり、音量を調整するマージンすらある。これなら普通にバンドで使える。素晴らしい。
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