2017年3月1日、NVIDIAはPascal世代のゲーマー向けハイエンドGPU「GeForce GTX 1080Ti」の存在を正式に明らかにした。
“GTX x80”という型番には、その後“GTX x80Ti”という製品もリリースされてきた経緯から、GTX 1080にもGTX 1080Tiが出るのは時間の問題と考えられてきたが、焦らしに焦らされた後の発表だっただけに期待も大きい。昨年リリースされたGP102ベースの「TITAN X」 がベースであることだろう、という予測はあったものの、具体的なスペックについては謎が多かった。
筆者はNVIDIAがサンフランシスコで開催した「NVIDIA Editors Day」に参加し、GTX 1080Tiの実機を目にする機会に恵まれた。現時点でベンチマークをとることはできないが、公開できる限りの情報をお伝えしたい。
TITAN XとCUDAコア数は同じ!
おおかたの予想通り、GTX 1080Tiは先行したTITAN Xを下敷きにしたものとなった。しかしスケールダウンがほとんど入っていないというのが、GTX 1080Tiにおける最大の注目ポイントだ。
以下の表は筆者の予想を含めてスペックをまとめたものだ。原稿執筆時では全ての情報が明らかにされていないため、一部筆者の予想が入っている。一番気になるのがメモリーまわりだが、11Gbps(11GHz相当)のGDDR5Xを11GB搭載するのでは推測される。
まずメモリークロックについては、GTX 1080でGDDR5Xを初めて採用して以来改良に改良を重ねた結果のようだ。具体的にどことは示されなかったが、従来よりも波形がキレイになった(より安定している)ようだ。 この結果として、GTX 1080のメモリーだけを11GHz相当にOCしたモデルも発売されるとのこと。このモデルがGTX 1080Tiに搭載されると考えるのが自然だ。もしくは10GHz動作のままだが、11GHzへOCするのが容易になっているのではないかと推測する。
そしてなんとも中途半端な11GBという容量だが、これはスペック表のROPユニットの項目を見れば不自然でも何でもない。TITAN Xの96基から88基に減っている。PascalではROP数とメモリー搭載量が8:1の整数比になるため、ROPが96基のTITAN Xは12GBとなる。つまり88基のGTX 1080Tiは11GBという計算になるのだ。
さらにコアクロックは定格のブーストクロックは1.6GHz、OCで2GHzと謳っている。ブーストで1.5GHzそこそこのTITAN Xに比べると大幅なジャンプアップだ。微妙にVRAM搭載量とROPが少ないというハンデはあるものの、状況次第ではTITAN Xを超える可能性は大だ。今回もGTX 1080と同様にFounders Editionが先行し、後からサードパーティー製の独自設計モデルが続く。値段は明らかにされていないが、TITAN Xが完全に霞むような製品になりそうだ。
GTX 1080Ti FEの設計では、GTX1080 FEよりも静音・冷却効率の向上もテーマとなった。まずNVIDIAが手をつけたのが、電源回路部分の高効率化だ。すでにGTX 1080の段階でMOSFETをDual FETにして高効率化したばかりだが、1080TiではDual FETを2倍に増やして低発熱&高効率化を達成した。
そしてもうひとつ、GTX 1080Ti FEではDVI出力を廃止し、その部分を全て排気口とすることで排気効率を上げている。NVIDIAは「2x Cooling Area」と呼んでいるが、ちょっと大げさな気もする。ただサードパーティー製の大型クーラー搭載モデルだと、FEのように外排気にこだわる必要もないため、DVIを載せてくる製品もそれなりにあるだろうと予想される。
残念ながらGTX 1080Tiのベンチマーク環境がなかったため3DMarkのスコアーなどは計測できなかったが、実機を手に入れ次第詳しい情報をお伝えしたい。
そのほかのトピックは?
今回のNVIDIA Editors DayではGTX 1080Tiの扱いは比較的小さい。むしろゲーム開発における同社の取り組みの表明といった色彩が強かった。その中でも目を引いたいくつかの話題を紹介しよう。