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マイクロソフト・トゥディ 第207回

起死回生の製品になるか? 「Microsoft Dynamics 365」

2016年09月13日 10時00分更新

文● 大河原克行、編集●ハイサイ比嘉

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ふたつの異なる憶測

 この組織変更をめぐってはふたつの異なる憶測が流れた。

 ひとつは、独自していた組織を統合することで、Dynamicsの事業を縮小させるのではないかとの見方だ。

 独立した組織では、Dynamicsは存在感を持って事業を進められたが、AzureやWindows Serverのほか、管理ソフトウェア、開発ツールビジネスなどと同じ組織で事業が運営されることになり、自然とDynamicsに対するフォーカスが薄れていくと見られていたからだ。

 もうひとつはこれとは真逆の見方だ。

 マイクロソフトクラウド&エンタープライズグループの中に統合されることにより、Azureとの連携が強化され、Dynamicsのビジネスそのものを加速できるという捉え方だ。

 だが、約1年前の組織統合の答えは、Dynamics 365の登場という結果を見れば、後者であったといえそうだ。

 Dynamics 365は、従来のCRMあるいはERPという枠を超え、「クラウドで利用できるエンド・トゥ・エンドなインテリジェントなビジネスアプリケーションへと生まれ変わった」(米マイクロソフトのアルソフエグゼクティブバイスプレジデント)というように、まさに組織の統合によってDynamicsは生まれ変わったともいえる。

 特にクラウドサービスをベースとしたことは、単にAzureとの連携という成果だけでなく、昨年の組織統合がこれからのビジネススタイルの変革を促すものになるとの見方もできる。ライセンス型のビジネスでは、ひとつの独立した組織で事業を運営できるが、クラウドサービスとなり、さらに様々な製品、サービスとの連携が中心になると、独立した組織でいる意味はない。むしろ、他のクラウドサービスと統合しやすい組織の中で事業を推進したほうがプラスになる。今振り返れば、そうした意味でも約1年前のDynamicsの担当部門の組織統合は重要な判断のひとつであったといえる。

日本でも始まっている体制づくり

 今後、生まれ変わったDynamicsに力を注いでいく姿勢は、日本でも同じだ。その体制づくりはすでに始まっている。

 2016年8月1日付けで、日本マイクロソフトでは、Dynamicsの組織を平野拓也社長直轄に位置づけており、Dynamicsの日本での普及に力を注いでいくことになる。

 Dynamics 365は、中堅・中小企業向けの「ビジネス」と、大手企業向けの「エンタープライズ」が用意され、大手企業に対してはエンタープライズビジネス部門が受け持ち、中堅・中小企業向けはスモール&ミディアム・ソリューション・パートナーズ(SMS&P)を担当するゼネラルビジネス部門が担当。特に中核となる中堅・中小企業ユーザーがターゲットとなるパートナー向けの展開では、これまで推進してきた「マイクロソフト クラウドソリューション プロバイダー」(CSP)プログラムの中で、様々な支援策が実行されることになりそうだ。

 つまり、これまでDynamicsを取り扱っていたパートナーがCSPに参加することに加えて、従来Dynamicsを取り扱ったことがないパートナーも、CSPプログラムを通じてDynamicsを扱うチャンスが増えることにもなる。Dynamics 365の登場によって、日本におけるビジネス拡大の土壌が作られようとしているわけだ。

 日本マイクロソフトでは、2017年度(2016年7月~2017年6月)にクラウドの売上高を50%にする計画を掲げている。またそれを実現するため、2017年度中に、現在約600社のCSP参加パートナーを2倍以上に拡大する計画を打ち出している。

日本マイクロソフトでは、2017年度(2016年7月~2017年6月)にクラウドの売上高を50%にする計画を掲げている

 こうした意欲的な計画を達成するためにも、Dynamics 365の存在は、まさに隠れた「切り札」になるといえそうだ。


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