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IFA 2016レポート

先端技術がてんこ盛り! パナソニックのビジュアルコンセプト

2016年09月06日 16時30分更新

文● 天野 透 編集● ASCII編集部

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 ベルリンで開催中のIFA2016、パナソニックブースでは映像技術に関する幅広いコンセプト展示を行っている。今回は筆者が特に関心をした新世代有機EL(OLED)テレビの実力と、透過ディスプレーのコンセプトスタディを中心に、映像系機器のリポートをお届けする。

有機EL(OLED)テレビのデザインコンセプト。薄さとイーゼルの様なスタイルが印象的。

春に出てくるOLEDが凄い!

 まずは2017年の春に市場投入を目指しているOLEDテレビのコンセプトデモから。欧米市場では「CZ950」として既にOLEDテレビを投入している同社だが、ホームグラウンドであるはずの日本市場には未だにOLEDがラインアップに入っていないという事をお嘆きの映像ファンは多いことだろう。ご安心いただきたい、パナソニックの車内では来春シーズンのOLED国内市場投入を検討中との事だ。しかも次のOLEDは現在欧米で展開しているCZ950とは異なり、新世代の設計モデルになる予定だという。

別のデザインコンセプト。下部にプロジェクターを仕組んでおり、テレビの背面に柔らかい光を投影することで映像が浮き上がる様に感じる。

 その新世代OLEDだが、試作段階の展示で、既に圧倒的な画質の進化を遂げている。使用されるパネルはLGディスプレーのものだが、実際のところLG本体から出てくるOLEDテレビよりも高画質だ。その発展度合を、現行モデルのCZ950と来年春に出る開発中のパネルをサイドバイサイドで比較するデモが展示されているが、一見して違いが判るレベルで暗部の色が潰れることなくしっかりと出ている。特に暗いシーンでの差は顕著で、暗部がしっかり沈んだ上で明るくなっているのが極めて印象的である。

新パネルの実力を示すため、暗室を用いたサイドバイサイドのデモを用意している。業務用マスターモニターを挟んで、右が現行のパネル、左が開発中の新パネル。暗いシーンでの色の出方に圧倒的な差が見られる。

 設計的には「黒」を改善したとしており、パネルと制御の組み合わせを煮詰めた上で黒に近い微弱信号の制御を追い込んだという。ピークは従来機の倍近くまで伸びているが、これもOLEDの特性に合わせ込んだ制御でピークを伸ばしている。こうした〈画作り〉の部分がパナソニックの大きな特長で、他社と同じLGパネルを使っていてもパナソニックの画質が頭一つ抜けている理由であり、プラズマ時代から「パナソニックの画」を追求してきた強みが顕著に現れている部分である。

こちらは液晶の新旧比較。ローカルディミングを巧みに用いており、暗部の沈み方は液晶でも顕著。デバイスの単なる世代間実力差に留まらない、総合的な画作りによる高画質を実現している事がよく解るデモだ。

パネル、画像処理、調整力という総合的な画作りの重要性はプレスカンファレンスでも強調された。登壇者はホームアプライアンス社副社長の楠見雄規氏。

通常のOLEDと比較して暗部の微弱信号制御を丁寧に追い込んだとしている。

ミライリビングには透過ディスプレー

 近未来のリビングダイニングをデザインした「Better Living Tomorrow」エリアでは透過型ディスプレーを用いた情報表示コンセプトを展示している。透過型ディスプレーは近くで目を凝らすと画素グリッドが判別できる程度の、見た目は若干暗い程度の普通のガラスだ。

リビングダイニングのコンセプトデザイン「Better Living Tomorrow」エリア。注目を集めている。

一見すると普通のダイニングキッチンだが……

テーブル端のガラスパネルには、実はディスプレーが仕込まれている。

 ラックにディスプレーを仕込んだコンセプトデザインでは、モニター部の下に基盤を積んだ構造となっており、現状では上がモニター、下が基盤の大きな一枚パネルをまるごとスライドさせているという。そのため現状はモニターの下部の棚スペースが潰れている。ただし基盤は小型化が可能としており、あるいはモニター部との境界を折り曲げるという構造も考えられるため、モニター下のスペースについては解決しそうだ。

こちらも一見すると通常のリビングラックだが……

ガラス戸にはやはり透過ディスプレーが搭載されている。現状はガラスの下に大きな基盤が付いたパネルだという。

 映像を映し出す際には黒を透過させるため、後ろを暗くして使用する。そのため後ろに白いものがあると透けて見える。この問題を解決するのに、例えばシャッター層としてモノクロ液晶との二層構造にする等の手段が考えられるが、複数の層を重ねると窓としての透過率が確保しにくいという問題が出てくる。あるいは物理的に可動式の黒フィルムを仕込むといった方法も考えられるが、現状はこの様にディスプレー不使用時の窓としての透明度と、使用時のディスプレーとしての精度をどう両立するかが課題としている。

ディスプレーとして使用する際は、背後のスクリーン処理が問題となる。現状では白い物(この場合は壺)があると映像に映り込む。

 透過型ディスプレーはテレビの大型化に伴ったインテリア性の欠如に対する解決案。サイネージなどのB2B分野では既に実用化済みで、これをコンシューマーモデルとしてどう落とし込むかというのが今回のコンセプトだという。コンセプト展示の例として、ワインセラーに仕込んで入っている酒の情報を表示するといった使い方を提示している。電子レンジの全面にタッチパネルと一緒に仕込むといった手段も考えているそうだが、高熱に対するデバイスの耐性は高くないため難しいらしい。担当者は「3年後位には何かしらのカタチを出したい」としている。

高品質4Kプレイヤーを多くのユーザーへ。DMP-UB700

 コンセプト展示が多い中で具体的な製品が出てきたのがUHD BDプレイヤー「DMP-UB700」だ。モノとしては日本で既に発売されている「DMP-UB90」ヨーロッパ版としており、ヨーロッパでの価格もこれに近いものになる予定だという。

今回のIFA発表されたUHD BDプレイヤー「DMP-UB700」。内容的には国内で販売されている「DMP-UB90」のヨーロッパ版と考えて、ほぼ問題無い。

 デジタル部は上級機のUB900と同じものを使っており、出力をデジタルに絞ってシャシーなどを簡素化したことでコストダウンを図った。例えばコモンノイズフィルターは厳選品であったり、無線がacではなくnであったり、あるいは電源を簡易化していたりするが、その分だけUB700はシンプルな構成なので、AV機器的な使いこなし次第で化ける可能性が高いとしている。

ケースの端をよく視てみると厚みが判る。デジタル的なスペックはほぼUB900と同じなので、こういった部分でコストダウンを実現している。

アナログ系統をバッサリと排した潔い端子群。構成がシンプルなため、制振や電源管理などといった使いこなしで差が出る可能性が高い。

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