アドビは6月22日、同社の提供するサブスクリプション型アプリケーション群「Creative Cloud」のアップデートを実施した。
Creative SuiteからCreative Cloudに移行してから、同社では従来のナンバリングによるアップデートを廃止し、各アプリケーションを独自のタイミングでアップデートしている。今回メジャーアップデートが実施されたのはストックフォトサービスの「Adobe Stock」。またPhotoshop CC、InDesign CC、Premire CC、Animate CC、Dreamweaverなどにも機能追加やインターフェース変更を中心とした改修が加えられた。
クリックひとつでライセンス購入
Adobe Stockは、PhotoshopやInDesignに設けられている「CC Libraries」のパレットから直接、素材のデータベースにアクセスしてカンバスに素材を読み込めるだけでなく、素材の端に設けられた小さなCCのロゴをクリックすることで、カンバスから素材のライセンスを購入する手続きを踏めるようになった。
ライセンス購入前は「Creative Cloud」のウォーターマークが入っているため、そのまま素材として利用することはできないが、たとえばPhotoshopで利用する場合、フォントを配置したり、画像を編集したりして、デザインを整えた上で購入の手続きを踏み、そのまま正式版のウォーターマークなしの素材に置き換えることが可能だ。
同社では、Adobe Stockのメジャーアップデートにあたって、フランスのコンサルティング企業The Pfeiffer Reportにベンチマークを依頼。Adobe Stockを使用していない場合と比べて、作業効率がおよそ10倍速くなるとの結果が得られたとアピールする。
またStock素材の追加要素として、「プレミアムコレクション」と呼ばれるトップアーティストによる画像ライブラリーも新設される。スタート時点での素材数がおよそ10万点。Adobe Stock累計での素材数は、およそ5500万点にものぼるという。
進化し続けるPhotoshop
Photoshopはマイナーアップデートにとどまったものの、新機能が多数追加されている。汎用性の高そうな機能は「コンテンツに応じた切り抜き」だ。画像を切り取った場合にできる隙間を自動的に埋めるというもので、元の画像が持っている要素を残したまま、必要な加工を加えることが可能になる。
たとえば、水平のとれていない山と川の写真を補正した場合、四隅は回転したぶんだけカンバス外にはみ出し、カンバスには空白ができてしまう。ここで「コンテンツに応じた切り抜き」を適用することで、自動的に、空白をオリジナルの画像が持っている要素で補完してくれる。ピクセル数の決まっているプロジェクトで、オリジナルの画像の要素を最大限に生かしたい場合などに重宝するだろう。
またフィルターメニュー内の「ゆがみ」には「顔ツール」を追加。人物の顔を加工するのに特化したツールで、目の大きさや顔の細さ、広角の角度などを自然に修正できるというものだ。従来もゆがみツールを使えば同様の作業は可能だったが、「顔ツール」ではより簡単な操作で不自然さのない加工が可能になった。
IllusttratorやInDesignのアップデートは?
Illustrator CCやInDesign CCといった主要アプリケーションのアップデート内容は、以下に抜粋して紹介する。
Illustrator CC
- アセットとアートボード書き出しの機能向上
- ライブシェイプの機能向上
- Adobe Stockとの連携強化
- 学習パネルの充実
InDesign CC
- GPUパフォーマンスの向上(Mac)
- ユーザーインターフェースの刷新(Photoshopなどですでに採用されているグレーを基調としたものがデフォルトに)
- スウォッチのソート機能
- インタラクティブPDFの書き出し強化
- 共有ネットワークの保護シャットダウン
- Gatekeeperの変更(Mac)
Animate CC
- パターンブラシとブラシのスムージング
- HTML5 Canvas書き出しの強化
- オーサリング昨日の強化
Muse CC
- レスポンシブデザイン機能の強化
- Comp CC連携
- ステートのトランシジョンとスクロースエフェクト
Dreamweaver CC 2017 Beta
- UIの刷新
- コードエディターの刷新(Bracketsと統合)
- Sass/LESS対応
Adobe Experience Design Preview 4
- 日本語UI
- オブジェクト間の距離の計測
- ぼかし効果
CCに完全移行したメリットがどんどん現れはじめた
このほか、フォントライブラリーサービス「TypeKit」との連携にも改修を加えた。Photoshopなどから呼び出せる点は従来と変わらないが、選択範囲内にあるフォントに類似したフォントを自動的にデータベースと照らし合わせて検出し、ユーザーに提示してくれる機能を設けている。たとえば、手書き風のフォントを選択すれば手書き風のフォントを、ゴシック体を選択すれば類似するゴシック体を検出してくれる。
Adobe StockのCCアプリケーションとの連携についても同じことが言えるが、CSからCCに切り替わって3年経ち、クラウドソリューションならではの強みを生かした機能が随分増えてきたと感じられるのではないだろうか。またモバイルアプリケーション群との連携も、クラウド上のフォルダーにデータを格納できるCCならではの利点だ。今後のアップデートにも期待したい。