6月10日、OpenFog Consortiumは日本支部である「OpenFog Japan Regional Committee」の発足に関する発表会を開催した。フォグコンピューティングのアーキテクチャ設計や啓蒙を進めると共に、データのガバナンスやセキュリティに関しても議論を深めていくという。
フォグコンピューティングの普及を目指す業界団体
フォグコンピューティングは、クラウドコンピューティングを階層化することで、IoTでの利用を前提にデバイスに近いエッジ側に構築するコンピューティングレイヤーの概念。クラウド(雲)よりデバイスに近いという意味づけで、フォグ(霧)という表現を採用しているという。発表会ではOpenFog Japan Regional Committeeの今井俊宏氏、OpenFog Consortiumチェアマンのヘルダー・アンチューンズ氏、そしてプレジデントのジェフ・フェダーズ氏が活動内容について説明した。
OpenFog Consortiumはフォグコンピューティングのアーキテクチャ定義や啓蒙を進める業界団体で、2015年11月にARM、シスコ、デル、インテル、マイクロソフト、プリンストン大学によって設立。2016年5月3日の時点で加盟しているのは、7カ国27メンバーにのぼっており、日本では東芝やさくらインターネット、富士通などが加入済み。同日、NTTコミュニケーションの参加も発表した。
OpenFog Consortiumは設立されて半年間でフォグコンピューティングのホワイトペーパー(日本語化済み)を発表したほか、IEEEやOPC Foundationなど他の団体との連携を進めている。また、7つワーキンググループを立ち上げたほか、2016年4月には初のリージョンとして「OpenFog Japan Regional Committee」を発足させている。こうしたリージョンの委員会では、国や地域ごとのレギュレーションにあわせた柔軟なアーキテクチャ策定を進めるほか、データのガバナンス、セキュリティに関しても討議していくという。
OpenFog Consortiumが対象とするのは、モバイルや技術、ソフトウェアのみならず、幅広いアーキテクチャの設計、テストベッドの開発を目的とする。また、標準化団体ではなく、IEEEやOPC Consortiumなど、他の標準化団体と研究機関、大学とパートナーシップを構築することで、業界を牽引していく。OpenFog Consortiumのプレジデントであるジェフ・フェダーズ氏は、「当初はエンタープライズを対象としているが、今後はすべてのIoT、そしてIoTを超えていくということもある」と幅広い拡がりを見込んでいる。
OpenFogへの期待を東芝、さくら、富士通が語る
発表会の後半には、東芝、さくらインターネット、富士通の3社の代表が登壇し、各社のIoT戦略を披露した後、パネルディスカッション形式で意見を交換。OpenFogが目指すオープン性の重要さをアピールするとともに、データのガバナンスとセキュリティについても合わせて議論する必要があるという方向性で一致した。
東芝 インダストリーICTソリューション 技師長の中村公弘氏は、「オープンなテクノロジーでつながっていくことはこれからのICTの分野で必ず求められる。一方、データの観点では企業のノウハウを詰まったようなデータはきちんと囲っておく必要がある。必要なものだけ外に出していくオープン/クローズドな環境を作っていきたいと思う」と、データのセキュリティ・ガバナンスを適切に行なえる環境として、フォグコンピューティングに期待を寄せた。
さくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏は、「各社のプラットフォームがサイロ化しては、つないでもレイテンシは下がらない。だから、それぞれ強みを活かしながらもフォグのレイヤーをオープン化していき、レイテンシを減らしたり、大量のデータを効率的にさばくということを実現していきたい」とのことで、フォグコンピューティング同士の相互接続性を推進するという。
富士通 データセンタプラットフォーム事業本部 プリンシパルアーキテクトの天満尚二氏は、「データセキュリティは必要になるのは当然だが、法的な整備がまだまだ。OpenFog Consortiumの日本支部ができたことで、そういった議論ができるのはとてもありがたいこと」と、データのオーナーシップに関する議論を進めたいと抱負を語る。